231話 魔王 15
コロナ緊急事態宣言が解除されたのに減りませんね。本当にオリンピックは開催できるんでしょうか?今回は今後の物語に関する重要な情報が出てきます。お楽しみに。
アリシアとイージス聖教国の大司教の会談から1週間が過ぎた。
公都ノースガルド ヤマト公国軍司令本部 執務室
「それで報告とは?」
マコトが憲兵隊の憲兵に尋ねる。
「オールドフォレストに侵入しようとしたイージス聖教国の間者はこの2日間で6名、この半年分の間者が2日間で侵入しようとしたことになります。やはりアリシア団長が大司教に流した情報で聖教国の活動が活発化しております」
「それぐらいの数で世界樹をどうこうできるとも思えないが?」
「同時に可燃物を満載した馬車が3台押収されております。馬車の御者の1人はその場で射殺、2人は拘束された間者です。残りの3人は冒険者や商人に偽装して入り込もうとしていましたが、元々閉鎖的な都市ですからね。特定は容易でした」
「手に入らなければ、焼き払うか。モノの価値も分からん狂信者どもが!」
「では特にご指示がなければ、このまま警備を3倍に強化の状態を維持ということでやらせてもらいます」
「嗚呼、頼む」
憲兵隊の責任者はマコトに敬礼をすると執務室から退室した。代わりにマコトが良く着る黒い軍服に似た黒い制服を着たエルフが入って来た。
「親衛隊大佐シュトルムであります!」
「待っていたよ大佐、君も知っての通り我がヤマト公国軍には陸軍、海軍、空軍、海兵隊、憲兵隊、そして君ら親衛隊の6個の組織が存在する。公的にはね。その中でも親衛隊は自分の直轄部隊で任務次第では他の軍と対立もあり得る汚れ仕事専門の部隊だ。スマナイね」
「いえ!我々は司令の為ならばいかなる汚れ仕事でも喜んで引き受けます!!」
「ありがとう大佐。そんな君に極秘任務だ」
そう言ってマコトは書類の詰まったブリーフケースを取り出した。
「ここから北に100km程行ったところに無人の施設がある。そこでは1週間後からあるモノが製造されることになっている。施設は自分のスキルによって稼働しており作業員や技術者は1人も居ない。大佐、君の任務はその施設をしかるべき時が来るまで秘匿することだ。君の大隊ならばできると信じている」
親衛隊のシュトルム大佐は冷や汗をかきながら資料に目を通していく。資料には施設の構造や機密エリアのレベル区分等が記されていたが肝心の生産されるモノに関しては白い紙に赤字で「特機密事項」としか書かれていなかった。
「侵入者や近付いて来た人物に対してはどのような対応を?」
「君達には陸軍の制服で任務にあたってもらう。近付いて来た人物は軍の施設だからと言って追い払え、発砲も許可する。どうして帰らなかったならば拘束してこちらに送れ。軍刑務所に入ってもらう。侵入者は1人も生かして帰すな必ず射殺せよ」
「・・・・!!了解しました」
「君らもただ警備するだけでは士気は維持出来まい。そこで製造されるモノのコードネームを教えよう。回天だ」
「かいてん?」
「回天だ。天を回らし大局を変える。情報統制がとけた時には大佐、君はこの任務に胸を張れるだろう!!」
「ハッ!!」
「施設の稼働は1週間後だが3日後には施設に入って貰いたい。急な任務だが頼むよ?」
「この一命に賭けましても任務を遂行致します!!」
「糧食、装備品等に関しては必要と思える物は何でも持って行きたまえ。その為の命令書類も入っている」
「了解しました。失礼します!」
親衛隊の大佐も退室して行った。
「必要な物資、資材、予算、人材が全て揃った。ここまで秘匿して準備するのは骨が折れた。かっての日本軍は回天を悪化する戦局を変える特攻兵器とした。しかし、自分の回天はこの世を変える力となると信じている。良い力か悪い力かはまだ分からんがな」
トントン!
執務室の扉がノックされる。
「・・・・?入れ」
扉が開くと、需品科の兵士や民間の業者と思われる来訪者のパスカードを首から下げた女性の集団が入室して来た。
「な、何の騒ぎだ?」
「司令!!何の騒ぎだ?じゃあありませんよ!結婚披露宴まで後3週間しかないんですよ?衣装合わせや採寸をしておかないといけません!!」
「??式は軍服で参加すると先日の会議で決まった筈だが?」
「普段から着ている制服を使い回しするおつもりですか?勿論新調するに決まっているじゃあないですか!!しかも、式典用、披露宴用、パレード用の最低3着はお作りしますからね!!」
「そんな急な」
「スケジュールが空くのを待っていたらいつまで経っても時間がありません!そこで秘書官様に時間を作っていただきました!!」
「分かったよ。しかし、夕方からは冒険者ギルドマスターとの会食の予定が入っているんだ。資料も目を通しておかないといけないから早目に頼むよ?」
「分かりました!我々の総力を挙げて2時間で終わらせます。総員かかれ!」
マコトは、採寸をされながら贈答品や結納金等の金品は用意していたが服装までに気が回らなかったことを後悔した。ちなみに翌日にはゲシュタルト王国式の礼儀作法を教える集団まで現れて、披露宴までマコトの受難は続く。
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