226話 魔王 10
感想沢山ありがとうございました。今回の作品が感想のお返事と思って下さい。剣と魔法の世界なのに魔法を軽視した失態ですね。おっと、詳しくは作中で。コロナのワクチン接種が始まったみたいですが、早速副作用?という事例が報告されているみたいですね。大丈夫かワクチン?
公都ノースガルド ヤマト公国軍司令部 医務室
「・・・・・・ここは?」
マコトは医務室のベッドの上で目を覚ました。天井を見て左右を見渡してここが医務室であることを認識して漸く今までの事を思い出した。
「不味い!このままではあの兵士が私刑にあって死んでしまう!」
マコトがまず心配したのは自分を刺した女性兵士の安否であった。身体を起こそうとするが動かない。目線を下げて自分の身体を見ると右腕に太いチューブが刺さっており、そこからは透明な液体がマコトの身体へと注入されているようだった。チューブの先を目線で追うとその先にはタンクが有り、そこには「世界樹の雫貯蔵用」の文字が記載されていた。
「失った血液の変わりに世界樹の雫を注入しているのか・・・」
なんとも贅沢な使い方であった。一般市場に世界樹の雫が出回る際には同じ重さの金貨と取引されるというのに。そういえば生理食塩水が代用血液になるという噂を前世で耳にしたことがあるが反対の意見をいう医師のネット情報もあったな。アレ?今の状況て大丈夫なのか?
「誰か、誰か居ないか?」
するとカーテンの仕切りの向こう側で人が動く気配がしてカーテンが開かれる。そこには薄緑色の看護服を着た衛生兵と黒い戦闘服を来て18式短機関銃を装備した兵士が居た。兵士の腕章は白地に黒い死神が紋様、葬送曲憲兵隊だ。
「司令、意識が戻られましたか!貴方、先生を呼んで来て下さい」
衛生兵が憲兵に指示する。
「自分にはこの部屋に関係者以外立ち入らせないという任務がある」
憲兵が答えるが衛生兵は、
「じゃあ、廊下に立っているお仲間に伝言でもいいから伝えて来て下さい!司令の容態が急変したらどうするの?責任取れる?」
女性の衛生兵が男性の憲兵に口撃する。憲兵がうろたえる。
「そんなに彼を責めないでやってくれ。任務に忠実たろうとしているんだ。憲兵軍曹すまんが、同僚が居るならばその者に軍医を呼んで来るように伝言を頼めるか?これは最高司令官の命令と取って良い」
マコトは憲兵をかばう。
憲兵は敬礼すると病室内の為に無線機が使えないのか病室の扉の鍵を開けて廊下に顔を出すと誰かを呼び、一言二言会話を交わして扉を閉めた。
その間衛生兵はマコトの左腕を取り脈拍や血圧を測っていた。そういえば心電図等の機械類は無いのだろうか?医務室を設置する際に異世界マーケットのスキルを使い医療機器は説明書付きで必要数用意した筈だが?そんなことを考えていると廊下を走る音がする。軽装な者が3人、銃器を持った者が2人か。マコトは音で判断する。
病室の扉が叩かれる。憲兵が扉に近より何かを確認すると鍵を開けると2人の軍医と1人の衛生兵が入って来る。
衛生兵は何らかの測定機器をカートで押して来ていた。
「司令、意識が戻られて何よりですがいくつか質問と検査をします。宜しいですか?」
「ああ、君達に任せるよ軍医」
すると、彼らはてきぱきと測定機器をマコトに取り付けて1人は数値を確認して1人はマコトに質問をしてきた。5分程の質疑応答を終えると2人の軍医はひそひそと会話を交わした。そして、会話を終えると、
「司令、結論から申し上げますと体調は以前と変わらない状態にまで回復しております。世界樹の雫を大量に使用した影響も見られません。しかし、覚醒までに3日かかったことを考慮して後2日は安静にしていただきたいです。食事も今日の昼から軽いものであれば召し上がって結構です。普段でしたら、点滴や流動食からなのですが世界樹の雫が体内環境を維持していたのか胃腸にも問題は有りません。では」
そう言って2人の軍医と衛生兵は病室を後にする。最初から居た衛生兵は引き続き病室内で待機するようだ。
軍医達と入れ代わりに2人の足音がする武装していた2人だ。憲兵軍曹は敬礼をして2人を招き入れる。入って来たのは憲兵中佐と軍団、葬送曲の現団長のアリシアだった。
「嗚呼、マコト生きてた。生きてたよ!」
アリシアはマコトの顔を見るなり泣き出した。衛生兵が椅子を用意すると座り込み泣き続ける。これはしばらくかかるなと感じたマコトはダークエルフの女性憲兵中佐に視線を移すと、
「憲兵中佐、現在の状況を大まかにでも理解しているか?」
憲兵中佐は敬礼すると、
「ハ、現在判明している事項はお伝えする用意が有ります!」
マコトは頷くと、
「結構だ。自分を刺した女性兵士はどうした」
「憲兵隊で身柄を拘束しております。事件直後は錯乱が見られましたが聴取は出来ました」
「彼女に報復の私刑が行われないようにしてあるか」
「建物一棟を憲兵隊が接収して常に1個分隊が警備、誰も近寄らせません。食事も自分達で持ち込んでおります。私物等は証拠資料として隊内官舎の部屋ごと押さえて常に2人が警備に当たっております」
「彼女はシロかクロか」
「尋問の過程で彼女の脳波に異常を検知、魔術を知る隊員に調査させた所不可解な点が浮上し脳が汚染されている可能性大とのことです」
「精神洗脳か!!」
「洗脳・・・。以後の報告ではそのように報告します」
「何処でやられた」
「不明です。現在彼女の過去の任務地の洗いだし、上官からの聴取等で絞り込んでいます」
「自分の婚約発表が引き金か」
「否定。恐らく今回の騒動で起きた混乱に乗じて術者が指示を出した遠隔操作型かと我々は見ています。術者は意外と近くに居るかもしれません」
「了解した。引き続き捜査を続行せよ。自分からの指示は3つ。事件当事者の彼女を自死も含めて死なせるな。魔導師級の隊員を長とした班を編成して別の視線からも捜査せよ。これ以上の被害を出させるな以上だ。後、特別予算を用意した財務会計官も知らない特別予算だ好きに使え」
マコトはスラスラと銀行の口座番号をメモに書くと憲兵中佐に渡した。
「後、この病棟に護衛は何人居る」
「信頼のおける部下15人が3交代制で警備しています」
「2倍に増やせ」
「了解」
憲兵中佐は敬礼をすると足早に病室を後にした。
「それで?君はどうするの?」
マコトはいつの間にか泣き止んでいたアリシアに尋ねる。
「マコトの側で警備したい!けど、私に出来ることはそれじゃない。他に洗脳された隊員が居ないか魔術を使って探し出す!!」
「出来るかい?」
「正直難しい。けど、やらなくちゃ!」
「頼んだよ」
「うん!!」
アリシアは頷くと、マコトに抱き付きそのまま病室を後にした。
マコトは病室の窓に目をやると、
「打てる手は全て打つべきか。衛生兵、すまんがペンと便箋をそれと近くの駐屯地の偵察隊からバイク兵を1人寄越してもらうように頼めるかな?行き先はゲシュタルト王国王都ゲイボルグ」
ハイ!ヤンデレの刃傷沙汰かと思いきや黒幕が居たという話でした。前書きにも書きましたけど、魔法をおざなりにした結果ですね。近代兵器と魔石のハイブリッドだけでなく魔法も登場回数を増やしたいと思っています。応援宜しくお願いします。




