225話 魔王 9
職場で嫌なことが有りまして、この1週間鬱状態でした。今回の投稿にも多少影を落としているかもしれません。変な箇所があれば感想等でご指摘下さい。
ヤマト公国公都ノースガルド
「戴冠式~!?」
マコトは公都となったノースガルドへと帰還し、事務処理や小都市国家連合との戦後処理を執務室で行って居たが1人の文官の持って来た書類に難色を示した。
「はい、ヒイラギ様はヤマト公国のトップで在られる公爵様であり、王に次ぐ存在であります。その上に自治権、戦争権、外交権を有しておられるのですからちょっとした小国の国王より実権を握られています。そこで!公王という地位を新たに制定して諸外国に対しての交渉を有利に運ぼうという訳です。建国後すぐに行いたかったのですが、国防という有事の際でしたから仕方ありませんが戦争も終わって龍も討伐したということで、この勢いで戴冠式を執り行いと思います!!」
一気にまくし立てた文官は最後の方は息が切れ切れだった。しかし、公王ねぇ?
「ゲシュタルト王国の他の公爵や貴族達が騒ぎ立てないかな?」
文官は、片眼鏡をきらめかせると、
「ゲシュタルト王国国王ハイマン陛下、並びにアレグリア公爵閣下には既に許可はいただいております。後の有象無象は戴冠式で黙らせれば良いかと?」
マコトはため息をついた。
「既に根回し済みという訳か・・・」
文官はふと思い出したかのように、
「嗚呼、後にアレグリア公爵令嬢ミナサリア様と王弟モーラス閣下のご令嬢との合同結婚式も有りますので式は1週間を予定しております」
マコトは固まった。
「・・・・・・ハァ!?」
文官は、くいっと片眼鏡に手をやると、
「公王制定の話しを持っていった際にそちらの話しが、お二方から提案が有りましてヒイラギ様も21歳、ミナサリア嬢も17歳、アナスタシア嬢が15歳お似合いの夫婦になるだろう・・・・と」
「貴様、上司を売ったな!!」
「ハッハッハッ!ヒイラギ公爵、貴方も結婚という人生の墓場を体験すると良い!結婚前はあんなに仲が良かったのに結婚式後に態度の変わる女性の恐ろしさと言ったら・・・・」
「それはお前のところの夫婦事情だろうが!他人を巻き込むな!!」
「良いじゃあ無いですか司令?一緒に地獄を見ましょうよ?」
遂には、文官はケッケッケッと笑い出した。いかん、ストレスハイと言うやつか。
「衛兵!衛兵!文官が乱心した、医務室に連行せよ」
マコトが叫ぶと執務室の扉を開けて2人の黒の制服を着た衛兵が現れて文官を連行して行った。
マコトは執務室の机に座り直すと文官の遺した結婚式に関する書類は精査していったが細かいところまで網羅されており穴等は見つけられなかったが、戦場を生き抜いて来た兵士の勘が警鐘を鳴らしていた。
「うん?」
マコトが気になったのは結婚式のことを部隊内新聞で取り上げるという箇所であった。その日付というのが今日の日付であった。この新聞はヤマト公国軍に所属する兵士の所へならば例え最前線であろうとも必ずにその日の内に届けられることを自慢としていた。
「あっ!!」
マコトはやっと国内でも敷設が進んで来た電話に飛びついた。
「葬送曲ドリンドル司令部副司令官室か?アリシア副司令は・・」
「司令が神宮寺とかいう新しい少女を連れて来たってやけ酒している時に、部隊内新聞を読んで古参の女性エルフ達を連れて酒場に繰り出しましたけど?私も行くので失礼します」
ガチャン!!
無情にも電話は切られてしまった。部隊内からすれば今のマコトは軍団創設からの女房役だったアリシアよりも若い(アリシアは20歳だった)少女達に鞍替えした男に見えることだろう。ヤマト公国軍を構成する半数の女性全てを敵に回してしまったようなものである。勿論、以前にアリシアにはプロポーズしているが今回の新聞発表はアリシアに相談もなく行われたことだった。そんな新聞の発表の日に書類を持って来た文官の悪意が垣間見れる。
「当直士官!!すぐにドリンドル司令部への航空便を手配せよ、当直士官?」
マコトは執務室の隣室で常時待機しているはずの将校を呼んだが返事がない。隣室への扉を開けると、当直士官の女性エルフがワインの酒瓶と部隊内新聞を手に飲み潰れて居た。
「ここもか・・・・」
マコトは知らなかった、嫌知ろうとしなかった。自分がどれだけ軍団内の女性兵士から好かれて居たのかを。奴隷という身分から解放され、新しい家族、新しい価値感を与えてくれたマコトは神にも近い崇拝を受けていた。それが軍団の強さの一端だった。
「衛兵!衛兵は居るか?」
最後の望みを託して衛兵を呼ぶ。
「ハッ!ただいま!!」
凛とした女性兵士の声だった。マコトは冷や汗がした今日の担当は男性兵士だったはずだ。執務室に戻ると1人の女性兵士が涙を流しながら立っておりマコトの姿を認めるや否や、
「司令、私と一緒に死んで下さい!!!」
ナイフを片手に向かって来た。この距離では腰の19式自動拳銃は使えない、イヤ使いたくない。
ザス!!
鈍い肉に刃物が刺さる音がした。マコトは左腕を楯にナイフを受け止めていた。
「嫌、イヤ、司令・・・!」
女性兵士はマコトの血を見るとナイフから手を離してハンカチを取り出して傷よりも心臓に近い側を締め付けて圧迫しようとした。
「司令、どうなさりましたか?と、貴様!!」
文官を連行し終えた衛兵達が執務室に入って来て、血だらけの2人を見て女性兵士を取り押さえようとする。
「良い!!止めろ。落ち着いて1人は軍医を呼んで来い、1人はドリンドル司令部への航空便の手配をせよ」
「しかし!!」
「命令だ!」
隣室で潰れて居た当直士官が騒ぎに起きて来る。
「どうなさりましたか?司令!負傷を!?」
慌てて救急セットを取りに戻る。
「大丈夫だ。火龍アラドームの息吹きを喰らった時の負傷に比べたらこの位・・」
救急セットを手に戻って来た当直士官は状況から女性兵士が犯人だと気付いたようだが、
「追及は後回しにします。今はこの御方を助けます」
と言い共に治療にあたる。
「治療は最低限で良い、世界樹の雫さえあれば大丈夫だ。それよりもドリンドルに向かわなければ・・・・」
マコトは出血により意識を失った。
女性達の好意を無視し続けたのが爆発させてみました。マコトはこうなる前に多少でも彼女達の気持ちに応えるべきだったのでしょうか?女性関係が不得手な自分を反映させてみました。誤字脱字報告、感想、評価、ブックマーク大歓迎です。下の☆マークで評価をお願いします。




