221話 魔王 5
コロナはおさまる気配が見えないですね。政府は自粛しろ自粛しろだけでなく給付金のような飴も欲しいところです。そしたら仕事増えるんですけどね。
空中駆逐艦白 医務室
医務室のスペースは大量の患者が発生した時の為に広く取られおり、3つの寝台と2つの手術台がある2部屋から構成されていた。救出された少女は寝台の有る部屋の一番奥の寝台に横たわっており、1人の衛生兵が付き添っていた。部屋の入口には、念のためか武装した団員が2人、少女から見えないように立っていた。
警護している団員に無言でねぎらうと、寝台室へとマコトは入って行った。
「失礼するよ?」
マコトは、衛生兵と少女に聞こえるように声をかけた。
「し、司令!」
衛生兵の女性はまだ若く、慣れていないのか慌ててぎこちない敬礼をして来る。
「嗚呼、良いから、良いから。こちらのお嬢さんが救出対象かね?」
マコトは衛生兵をねぎらいながら質問する。
「はい、15分程前に目が覚めたのですが、こちらの問い掛けに応えようとしません」
マコトは頷くと、
「君は隣室で待機して居てくれるかな?私が話して見よう」
「分かりました」
マコトは衛生兵を寝台室から出すと、寝台の横に立て掛けてあったパイプ椅子を広げて座る。
「まずは、はじめましてかな?自分の言っている言葉は分かるんだろう?入室した際に慌ててこちらを向いたね?」
少女はうつ向いていた顔を上げてマコトの方を見た。
服装は救出時のままでセーラー服姿で、寝台横の机には革鞄が置いて有る。危険物チェックはしたのだろうか?と思いつつ、話しを続けた。
「自分の名前は、柊誠。20歳、日本人で○○県出身だ。君の名は?」
マコトは、静かに問い掛ける。
「わ、私は神宮寺桜。16歳で、○○県△△市私立紅陵高校1年生です。あのここは何処でしょうか?父と母が心配していると思いますので、貴方は自衛隊の方ですか?あの白い光に包まれた後に現れた白い服の人達は一体!?」
少女は緊張の糸が切れたのか、聞かれた以上の事を言って来た。それをマコトはウンウンと頷きながら聞いていた。
「神宮寺さん、いくつかの質問に応えよう。自分は自衛官ではない。所属していた時はあるがね。そしてここは何処かというと、厳密にはイージス聖教国領上空3000mを航行中だ。簡単に言えば、異世界だよ」
「・・・・・・え?」
マコトは、パイプ椅子に座りながら、姿勢を正すと、
「長い話しになる。一旦落ち着いてから話しを聞くかい?それとも、このまま話しを聞くかい?」
少女はうつ向いて、寝台のシーツを握りしめて何かを考えているようだった。
マコトは辛抱強く待った。
「聞かせて下さい。全てを!私には判断すべき情報が少なすぎます!!」
マコトは頷き、語り出した日本で死に、この世界へとやって来たことから話し出して、そして今日、彼女を狂信者達の道具とさせない為に強行作戦を実施したことまで全てを。マコトが語り終えた後に少女は泣いていた。マコトは隣室の衛生兵からタオルを受け取り、少女に渡した。
「柊さんや、ジークハルトさん、長門さんが可哀想過ぎます。家族と引き離されて異世界に送り込まれて、そこで一生を過ごさなければならないなんて!!」
マコトは、困ったように顎を掻きながら、
「神宮寺さん、我々の境遇を悲しんでくれるのはありがたいけど、君も同じ境遇なんだよ?しかも、君を召喚した者達は我々が殺してしまった。帰れるかも分からないのだよ?」
「大丈夫です。私の家族ならば分かってくれます。それに、柊さんもこのままでいるつもりは無いんでしょう?」
「どうして、そう思うんだい?」
「だって、柊さんのスキルなら、こんな軍隊や、国を持たないでも悠々自適に生活出来た筈ですもの。現状に満足していないなら、きっと目指すモノがある筈です!!」
「・・・・!!これは驚いたよ。会話から、そこまで情報を得るとは素晴らしいよ。尊敬に値する。嗚呼、会話が弾んでいたので忘れていたが、服装がだいぶ汚れているようだ。風呂にでも入って来たらどうだろう?」
「お風呂があるんですか?私、部活の帰りに召喚?されてしまってお風呂に入りたかったんですよ!!」
「ああ、準備させよう。その間に神宮寺さんの事を鑑定させてもらって良いかな?」
「鑑定ですか?良いですよ」
「では」
スキル、鑑定を使用して神宮寺桜を鑑定すると、弓術(狙撃術)と魔法全般に高い適性があることが分かった。他にも礼儀作法や、調理など珍しいスキルもあった。
「どうでした?あ、スリーサイズとかは見ないで下さいね。個人情報です」
実は着痩せするタイプなんだな、と思っていたマコトは慌てて、
「だ、大丈夫だよ。それよりも神宮寺さんは弓術をやっていたのかな?高いスキル適性があるよ。それと魔法も使えるようになりそうだ。あと、生活スキル系統の適性が高かったかな?」
「はい、精神鍛練の為に弓術の部活を続けています。魔法は楽しみです!生活スキルというのは恐らくですけど、花嫁修業の成果かと思います」
そう言って、少女は恥ずかしそうにうつ向いてしまった。
「あぁ、そうだ!お風呂だったね!今、人を呼ぶから、その人に付いて行って、衛生兵、衛生兵!!」
すぐに待機していた女性の衛生兵が神宮寺桜を案内して行った。
すると手術室に待機していた数人の幹部が姿を現した。
「司令、彼女は信用できるのですか?イージス聖教国のスパイということは?」
「聞いた限りでは召喚直後に救出できたようだった。それは有るまい」
「これから彼女をどのようにするおつもりで?」
「彼女の意志次第さ。我々と行動を共にするも良し、自立するも良しだ」
「分かりました。しかし、しばらく彼女には付き添い人を付けるべきです」
「彼女は頭が回る。すぐに監視員とバレるぞ」
「それでも宜しいかと思います」
「分かった。人選は任せる」
「「了解!!」」
「さて、話した感じでは、良家のお嬢さんという感じだったが、どうなることやら・・・・・」
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