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218話 魔王 2

コロナは日を追うごとにひどくなっていますね。こんな強力なウィルスが何故今まで見つからなかったのでしょうか?陰謀論を信じそうになりますね。

 小都市国家連合領内 葬送曲(レクイエム)兼ヤマト公国軍野戦司令部


 マコト達は、5つの小都市国家の主要都市を陥落させ、2つの海洋都市を海上封鎖した。残るは、眼前の鉱山を利用して作られた城塞都市である。人口は40万と小都市国家連合国内でも多くの人口を有して、守備兵力も5万人程である。


 「砲撃で崩落させることは容易いが、一般市民も多く巻き込むことになる。どうにかして降伏させたいが・・・・」


 マコトは野戦司令部内で、歩兵部隊の指揮官や空中戦闘艦の艦長達を召集して作戦会議を行っていた。


 「失礼します!!」


 伝令の兵士が会議をしている天幕に入って来た。団員だけでなく、多くのヤマト公国軍の兵士がこの戦争に参加していた。


 「何事だ?」


 「ハッ!ドレント王国とイージス聖教国内を調査していた部隊からの報告書の第1便が届きましたので、お持ちしました!」


 マコトが、何か思い出したかのように、


 「嗚呼、両国に関する資料は届き次第に持って来るように命じていたんだ」


と言った。兵士から資料の束を受け取ると、椅子に腰を下ろして読み出す。

 しかし、その顔付きが段々と険しくなっていく。


 「司令、何か厄介事ですか?」


 空中戦艦の艦長が尋ねる。


 「・・・。ドレント王国の魔王の存在は未だに発見できていないが、前線ではドレント王国兵と魔物が共闘しているが、後方等一部では上手くいっていないようだ。だが、問題点はそこじゃあ無い。イージス聖教国が他国からの支援だけでは不服として勇者召喚の儀式を行おうと内密に準備をしているそうだ」


 「勇者召喚!!眉唾物と思っておりましたが、実在するのですか?」


 マコトはため息を付くと、


 「恐らく、この愚行は成功するだろう。何せ異世界人の自分がここに居るのだからなぁ・・・」


と言った。


 「・・・・!!失念しておりました。申し訳ありません!」


 「いいよ、いいよ。気にして無いから。しかし、この愚行は止めねばならない!勇者召喚などと言っても、要するに他所の土地から人物を誘拐して来るようなものだからな。当人としてはたまったもんじゃないだろう」


 「しかし、司令。今の我々に二正面作戦を行う余裕はありません。未だに小都市国家連合の完全制圧は終わっておりませんから」


 空中巡洋艦の艦長が発言する。その間にも資料は幹部達の間で回し読みされて行った。


 「皆に問おう。小都市国家連合を完全占領するのに、後何日かかる?」


 幹部達は顔を見合せる。1人の歩兵部隊指揮官が発言する。


 「相手側の市民の犠牲を考えなければ2日で、この城塞都市は陥落すると思われます。また残る海洋都市ですが、我が軍の海上封鎖により干上がり、攻勢を掛ければ1日と持たずにこれらもまた、陥落するでしょう。戦後処理を終えて、この国を発つ事が出来るのは1週間後かと・・・・」


 他の幹部が、引き継ぐ。


 「報告書によれば、勇者召喚の儀式が行われるのは約1週間後。ここからイージス聖教国の聖都カラバまでは空中戦艦を持ってしても3日、間に合いませぬ」


 天幕内の空気が重くなる。

 マコトは、膝の上で握り拳をしていた。


 「建国間もない我が公国に戦争を仕掛けた小都市国家連合を放置して置くこともできない、かと言って、勇者召喚による犠牲者を無視することもできない・・・」


 ある幹部が発言する。


 「部隊を2つに分けるのは、いかがでしょうか?小都市国家連合も既に死に体!多少の戦力を抽出してイージス聖教国に派遣しても構わないのでは?」


 他の幹部が反論する。


 「この戦争は小都市国家連合から仕掛けられたモノ!手を抜くなどあり得ない!しかも、この戦争の状況は他国も注視している。隙を見せれば他国の介入を招きますぞ!!」


 「では、どうすると言うのですか?異世界人を見捨てるのですか?」


 「そんな事は言っていない!」


 天幕の中は、暗い雰囲気こそなくなったが、激論の支配する場となった。


 「良し!!自分が行こう!」


 マコトが大声で言った。


 「・・・・・・・・・」


 場が静まりかえった。1人の幹部がおずおずと発言した。


 「司令、自ら敵地に乗り込まれるのですか?」


 「ウム!!指揮官は常に前線へ!士気向上の基本である!!空中駆逐艦1隻と歩兵部隊が多少居れば良い。後は何とかしてみせる!軍団(レギオン)の創設時は当たり前であったことだ。何、奴等も一国の主に、そうそうと危害は加えまい」


 「聖都カラバは狂信者の巣窟です!司令自ら行かれなくとも・・・」


 「決めたのだ!戦力の抽出を最小限にしつつ、最大の効果を得るにはこの方法が一番だ。残る貴君等も大変だぞ?指揮官の不在を隠して、敵国を占領せねばならないのだからなぁ!!勿論、小都市国家連合の占領が終わったら迎えに来てくれよ」


 全ての幹部が起立して、マコトに敬礼する。自分達の指揮官は自らの運命を自分等に託したのだ。これに応えねば兵士である資格は無い。


 「空中駆逐艦を1隻用意しろ!推進剤、武器、弾薬をありったけ詰め込め!!」


 「損耗の少ない歩兵1個中隊を至急編成せよ!」


 「親衛隊編成候補者リストが有ったな!アレを使え!」


 「3時間、3時間で準備を完了させろ」


 マコトは、椅子に座ったままに、司令部要員の女性兵士が淹れてくれたコーヒーを飲んで居た。慌ただしくなる司令部内をゆっくりと見渡し、彼らを目に焼き付けるように見ていた。女性兵士は、そんなマコトを見て指揮官が最後の見納めに部下を見ているように感じ、すぐにその思いを打ち消した。








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