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217話 魔王 1

皆様、お元気でお過ごしでしょうか?世間は第3波だとかでコロナ患者が急増しています。来年からワクチンが出回るみたいですけど大丈夫何ですかね?自分は実家の隣県に出稼ぎ(笑)に出ているので、年末年始帰れないと困ります。

 イージス聖教国 国境付近の寒村の森


 「ミラ、早く走って!追い付かれるよ!」


 「ラン、私もう駄目、走れない。貴方だけでも逃げて!」


 「君を置いて行ける訳ないだろう?さぁ、手を出して逃げるよ!」


 ギャギャギャギャギャ!!


 十代も半ばといった2人の少年、少女の願いもむなしく森に魔物の鳴き声が響きわたり、藪をかき分けてその姿を現す。


 「「ゴブリン!!」」


 少年は、少女を背中に隠すとナイフを抜き放ち、3匹のゴブリンに刃を向ける。


 「ドレントの魔王の手先め!来るなら来い!イージス神のご加護が僕達を御守り下さる・・・・・!!」


 1匹のゴブリンの振るった棍棒により、少年は腹部を強く打たれてナイフを取り落とし、(うずくま)る。


 「嗚呼、ラン!!」


 少女が少年に駆け寄る。


 ギャアギャアギャア!!


 ゴブリン達が嬉しそうに少女に群がる。


 「イヤァァァー!!」


 パシュ!パシュ!パシュ!


 3匹のゴブリンが頭から緑色の血と白っぽい何かを出して倒れ伏す。


 「何?何が起こったの?」


 ガサガサ、再び藪が揺れる音がする。


 「ヒィ!!」


 少女は思わず悲鳴を漏らす。


 「ゴブリン共何処行きやがった?村の制圧も終わってねぇってのに」


 現れたのは、ゴブリンでは無く、軽鎧を着た兵士だった。


 「これは・・・・!?」


 息の無いゴブリンと、服装が乱れた少女、踞る少年を見つけた兵士は戸惑いの声を出す。


 「これは、君達が殺ったのかい?」


 ゴブリンの頭を蹴りながら、兵士は問う。


 「イージス神のお怒りに触れたのよ!直に貴方達も、そうなるわドレントの魔王の(いぬ)!!」


 兵士は頭を掻きながら、


 「君達が殺った訳では無い・・・と。反抗勢力がまだ付近に居るのか?それよりも村に戻るよ?村民は村の広場に集まるように指示が出ていた筈なのに森に入ろうとするから怖い目に遭うんだぞ?」


 少女は少年を介抱しながら、叫んだ。


 「誰が魔王軍に占拠された村なんかに!!」


 「う~ん、我々も魔物を完全に支配している訳ではないし、野生の獣や魔物も出るだろう。村に帰った方が良いぞ?」


 少年が、声を出す。


 「ミラ、残念だけど村に帰ろう。どうやら肋骨が折れているみたいだ。君を庇いながら隣街まで逃げるのは無理そうだ、それに・・・」


 「オオ~イ!!逃げたゴブリンは見つかったか?」


 軽鎧の男と同じ格好をした、男達が3人現れた。少年と少女が逃げるのは絶望的だろう。少年は急造の担架に載せられて運ばれて行った。ゴブリンは少年が倒したものと思われたようだ。




 少し離れた樹木上


 「シュウ!何を考えているの!監視対象の援護射撃するなんて!」


 「サラ、あのまま放って置くと見たくもないモノを見ることになっただろう?」


 「あくまでも、私達の任務はイージス聖教国の動向と、ドレント王国の魔王なる人物の調査よ!存在が露見する危険は犯すべきではなかったわ」


 「分かったよ。相棒、もうしない。約束する。しかし、先程の兵士にこの近辺は怪しまれた筈だ。移動するついでに占拠されたっていう村の様子を調査してから離脱しないか?」


 「もう、貴方たらいつも最もらしいことを言って話を誤魔化すんだから!まぁ良いわよ。ドレント王国の魔王軍がどんな占領統治をしているかも、重要な情報だしね。その前に定時報告でドレント王国の兵士と魔物の関係が上手くいってなさそうな情報も報告もしておくわ」


 そう言って、サラという女性は樹木の幹に固定してあった、無線機を取る。


 『こちら、ドラゴンティル。スカイホーク聞こえますか?こちらドラゴンティル、スカイホーク応答して下さい』


 『こちらは空中管制機(スカイホーク)、ドラゴンティル感度良好です、どうぞ』


 『了解、現場判断で魔王軍のゴブリンを殺害しましたが、ドレント王国からの参加者の兵士との関係は悪い模様です。現在位置が察知される恐れがある為と、情報収集の為に魔王軍に占拠された村に近付き、偵察する予定、どうぞ』


 『空中管制機(スカイホーク)了解しました。気を付けて任務にあたって下さい』


 『ドラゴンティル、了解、アウト』


 エルフのサラは、無線機を担ぐと消音器(サイレンサー)付きの7・62mm狙撃銃で付近を警戒していた人族のシュウに声を掛けると木を降りて移動を開始した。目標は2km程離れた今日、魔王軍に占拠されたばかりの村だ。



 人口100人程の村は、住民のほとんどが広場に集められ、それを50人程の兵士と100匹近いゴブリンやオークといった魔物が取り囲んで居た。

 サラとシュウが、村を見渡すことの出来る高台に到着するとちょうど少年、少女が村人達の中に連れ戻されたところだった。何やら兵士が演説を始めそうだったので、サラは集音マイクを広場に向けた。


 『繰り返すが我々は、れっきとしたドレント王国兵である!反抗したり、逃げ出したりせねば何も危害は与え無い。要求は3つ、我々の駐屯と、衣食住の確保、イージス教の棄教である!イージス教は諸君から搾取する為に作り出された宗教である!他の何の神を新たに信仰するかは自由である』


 この兵士の言葉に、(ばち)当たりだとか神の神罰が下るといった声が村人達から上がったが、魔物達が唸り声を上げることで収まった。


 『今すぐに決断せよと言うのも無理があるだろう。取り敢えず家に帰りよく考えて欲しい。それと、村から逃げ出すことはお勧めしない。魔物達には村への侵入者と脱走者を襲うように命じてある。では解散!』


 集音マイクの電源を落とすとサラは、


 「シュウ、取り敢えずここでの情報収集は終了するわ。迎えのヘリを呼んで脱出しましょう」


 「了解。成果は?」


 「ドレント王国は取り敢えず、その国体を維持しているわ。彼らの言い分を信じればね。そして、魔物を末端の兵士が操れる程に魔王とやらの力が及んでいる事、そして、イージス聖教国を本気で無くして仕舞おうと考えている事かしら?」


 「ヒュー!!最大派閥とはいかなくても、大陸でも大きな影響を持つイージス教を潰そうとするなんて考えることが過激だね」


 「判断するのは、私達じゃあ無いわ。私達が持ち帰った情報を元に司令が考えられることよ」


 「了解。じゃあ、おさらばしますか」


 「ええ」


 そう言って、ギリースーツ姿の2人は森の奥深くへと消えた。








今回は幕話みたいな感じになりました。潜入任務って大変ですよね。遠くから監視するならともかく、敵陣地に侵入して情報を得るとか小心者の自分には無理です(笑)誤字脱字報告、感想、評価、ブックマーク大歓迎です。作品下の☆マークで評価をお願いします。年末年始の投稿は今の所未定です。

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