212話 大改革 9
コロナ渦が収まる気配が見えません。アメリカの製薬会社が新薬を発表しましたが、どうなることやら?
旧アマゾニア王国国境 現ヤマト公国国境 葬送曲野戦司令部
「しかし、ヤマト公国を名乗ってから国境を接する国で敵対的な国が増えたな?」
マコトが他人事のように言う。
「他人事のように言ってますけど、貴方の国ですからね?司令!」
「あ~、分かっているよ?」
「本当に分かっているのかな、この人は。国中の噂ですよ?新しい公爵が国を起こして、しかも、ゲシュタルト王国の王族から2人も奥様を迎え入れるって。ミナサリア・フォン・アレグリア嬢は皆、前から知ってましたけど、新たに鉱山都市ドリンドルの冒険者ギルドマスターにして王族のモーラス・フォン・ゲシュマイヤ侯爵の長女、アナスタシア・フォン・ゲシュマイヤ嬢の婚約も驚かれてますよ?」
「それを言うなよ。先の戦の直後の会議で、自分とゲシュタルト王国王族の関係を深める為に分家から1人、嫁さんをもらうことになったんだが他に年頃の女性が居ないんでギルドマスターのモーラスの娘さんをもらうことになったんだが、アイツ血涙流して、ドリンドルの基地に乗り込んで来たらしいからな・・・・っていうか結婚してたんだな?モーラスの奴」
「聞かれたら、本当に刺されますよ。男2人が続いて3人目の念願の娘さんだったらしいですからね。司令が26歳でミナサリア嬢が18歳、アナスタシア嬢が16歳でしょう?」
「嗚呼、それくらいらしいな」
「その若さで、広大な領地を持ち、経済的に豊かで、豊作の続く耕作地を持ち、実り豊かな大森林を有する、勝ち組じゃないですか?そりゃ、近隣諸国も羨みますよ」
「・・・・それで、この戦か?」
「はい、相手は小都市国家連合、平坦な土地にいくつか乱立する小国がいくつも寄り集まって連合を組んだ感じですね。今回の戦の理由としては、旧アマゾニア王国に奪われた鉄と銅の鉱山を、速やかに元々の持ち主に返還するようにと言って来ています。因みに該当する鉱山はここ100年小都市国家連合に属したことはありません。完全な言いがかりですね。我々には鉱山都市ドリンドルが有りますので、優先順位は低い鉱山ですが一応我が国の領地ですからタダでくれてやる気はありません」
「敵軍について報告せよ」
眼鏡をかけた黒髪のポニーテールの女性士官が立ち上がる。
「それについては、情報分析班の私が。敵は騎馬兵3000、重装歩兵6000、軽装歩兵12000、傭兵が4000の25000の軍勢です。未確認ですが魔物使いに使役された魔物が100程とか・・・・」
野戦司令部の有る天幕の外がざわめいている。
「何事か?」
司令部要員達も外に出る。
「あ、司令。アレを!!」
「うん?」
マコトは双眼鏡で、敵陣、小都市国家連合軍を確認する。
「アレは、サイクロプスにトロールか?図体ばかりデカイ人食い種じゃないか。ヤツ等はあんなモノを使役しているのか?」
「し、司令官殿どう致しましょう?サイクロプスにトロールと言えばAランクの魔物です!一体どうすれば?」
「君は初陣かね?」
「は、はい!初等訓練課程を終えて部隊にて、実地研修中です!」
「フム、覚えておきたまえ。アレ位の魔物は我々にとっては朝飯前だ。ご覧?」
周囲を見渡すと、古参の団員は落ち着いたもので、対戦車火器等を準備している。
「森の中などの遮蔽物が多い場所ならば、いざ知らず。このような開けた場所で巨体というのは、我々にとっては良い的でしかない。良く覚えておきたまえ」
「分かりました!!」
そう言うと新兵は部隊に戻って行った。
「初等訓練課程の座学では、教えていないのかね?」
「今回の募兵では、3万もの兵士をヤマト公国の兵士として採用しています。古参の葬送曲の団員との練度差は大きいかと」
「そういえば、今回動員した、こちらの兵力は?」
「はい、葬送曲の団員が約500名に新兵が3000名、戦車部隊からは20式重戦車が9輌参加しています」
「約10倍の敵か。作戦は?」
「使役された魔物は、戦車部隊が対応し、騎馬兵、歩兵については、重機関銃を基軸とした塹壕陣地で対応予定です!」
「大丈夫なの?新兵に実戦を経験させるのも大事だけど、死傷者が出たら士気が駄々下がりだよ?」
「予備兵力として、機関砲装備の歩兵戦闘車両が20輌待機しております。戦線の穴は十分に塞げるかと!!」
「分かっていると思うけど、ヤマト公国としての初の国同士の戦争だよ?失敗は許さないからね?」
「はい!肝に命じておきます!」
「参謀、わざわざ、こんな僻地に自分が来る必要があったのかね?」
「今回の戦は、圧倒的不利な状況で相手を殲滅して公国の名を広める意味合いが有ります。そこに王が居ないというのは、いささか体裁が悪いので」
「今は、各地で重要な作戦が進行中だ。国造りも重要だけど、そちらも忘れないように・・・」
「では、領都ノースガルドに帰還されますか?」
「イヤ、せっかく来たんだ。最後まで見届けるよ」
「了解!!」
野戦司令部のモニターには、突撃して来るサイクロプスやトロールが20式重戦車の120mm砲弾の直撃を受けて吹き飛ぶ様が映し出されていた。
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