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208話 大改革 5

最近体調が優れません。主人公マコトの野望もだんだんと形を為しつつ有ります。どうにか最後までやり遂げたいです。

 王都ゲイボルグ 第1城壁内 工業区


 あまり豊かでは無い者達が住む第1城壁内であるが、人が住めば需要が生まれる。

簡素ながらも商業区や工業区といった場所が存在して需要を満たしていた。

 そんな工業区の一角にマコトは、護衛も付けずにフードで顔を隠して訪れていた。


 『研究所』


 そう書かれた看板の掛かったボロ屋の前に立つと、扉をノックすると扉はそのまま倒れてしまった。


 「お邪魔する」


 中に入ると意外と中は整理されており、壁には義手や義足が多く飾られていた。

 しかし、その造りは雑で足にはめて棒で地面を突くようなものや手にはめて使用する古い物語に登場する海賊がしているような鉤爪(かぎづめ)型のものが多かった。


 「これはハズレかな?」


 マコトは、あるモノのヒントをダークエルフの諜報部隊に長い間探させていた、その網に掛かったのが今回の店であった。

 更に建物の奥へと進むと、品揃えが変わって来た。金属や魔物素材を使用した複雑なものへ変化していった。そして、


 「こ、これは機械鎧(オートメイル)?イヤ、魔法金属を使った魔力を使用する特注品か?魔力を使える者ならば本物の腕と変わらないぞ!?」


 マコトのスキル、鑑定で品物を品定めして行く。


 「これは、期待できるか?」


 店の奥は、そんな魔法道具(アーティファクト)じみた品がゴロゴロしていた。


 「なんじゃ!また取り立てか?金ならないぞ!!帰れ!帰れ!」


 「ちょっと!お爺ちゃん!怒らせたら不味いよ。スミマセン、支払いはもう少し待って貰えませんか?」


 そんな声が店の奥のカウンターから聞こえて来る。


 「イヤ、自分は・・・・・」


 マコトが誤解を解こうとすると、


 「「おう!邪魔するぜ!!」」


 扉が壊れたままの入り口から、ゴロツキ風の男達がゾロゾロと入って来た。

 

 「オウオウ、アインの親父よお!約束の金1000万円は用意出来たのかよ?」


 男達は店内を荒らし出す。


 「止めんかい!!」


 カウンターの奥から、小柄な老人と少女が姿を現す。


 「それらは、先の戦で四肢を失った者達に必要なものじゃ、無下に足蹴にして良いものでは無い!!」


 老人が男達を叱り付ける。

 ゴロツキの頭らしき、スキンヘッドの男が喋り出す。


 「居るんじゃあねぇか、アインの親父!きっちりと借金1000万円払って貰おうじゃあねぇか!」


 老人が言い返す。


 「無いものはないわい!そもそもお主らに借りたのは200万円じゃろうが!どうしたら、1000万円になるんじゃ!!」


 「うるせえ!借金には利子ってもんが有るんだよ!払えねぇなら、シュタインの嬢ちゃんの身柄は頂いて行くぜぇ」


 マコトは、首を傾げると、老人に問いかけた。


 「ご老人、これらの作品は貴方による物ですか?」


 スキンヘッドの男が激昂する。


 「なんだ、テメエ、俺らが奴隷商のミケーレ商会の者って知ってんのかよ?」


 老人が、構わず言った。


 「儂と孫娘の作品じゃ、お主は?」


 マコトは頷くと、スキンヘッドの男に小袋を投げつけた。小袋は男の顔面に当たった。


 「ブベッ!?」


 男の取り巻き達が騒ぎ出す。


 「テメエ、兄貴に何しやがる!!」


 「ぶっ殺すぞ!コラッ!」


 マコトは言う。


 「2000万円有る。この店の権利はヒイラギ公爵が買い取った。そうザラに伝えておけ」


 「何故?会頭の名前を?」


 「イヤ、2000万円って!!」


 「ソレよりも、ヒイラギ公爵ってアノ?」


 「うるせえ!黙れお前ら」


 スキンヘッドの男が立ち直って、顔を擦る。


 「退くぞ、お前ら・・・」


 「「兄貴!!」」


 「聞こえなかったのか、退くぞ」


 スキンヘッドの男が、マコトに頭を下げて、金の入った小袋を拾って建物から出て行くと、取り巻き達も続いて出て行った。


 老人が話しかける。


 「お主は一体・・・?ヒイラギ公爵?」


 少女が老人に言う。


 「お爺ちゃん!ヒイラギ公爵って王都防衛戦で侵略者達を撃退した人だよ!」


 「や、やはり!?」


 マコトは、2人に話しかける。


 「アイン殿、シュタイン殿。我々はお二人の技術を必要です。どうか御力をお貸し下さい」


 「しかし、私共のような者が公爵様の力になれるとは思えませんが?」


 マコトは言う。


 「此処だけの話しにして貰いたい。自分は人が乗って操るゴーレムを作ろうとしています。その為に予算も物資も用意しています。必要なのは貴方達のような技術者なんです」


 「儂は老い先短い身ですじゃ、どうか孫娘を宜しくお願いしますじゃ」


 「そんな、お爺ちゃん!!」


 「シュタインや、王都の皆にも、この技術は必要じゃ。しかし、ヒイラギ公爵様にも返し切れない恩を受けた。お主が公爵様の力になるのじゃ!!」


 マコトは、もう1つの小袋を取り出して、カウンターの上に置いた。


 「500万円有ります。王都の民の為に使って下さい」


 アイン老人が言う。


 「シュタインや、荷物をまとめておいで」


 「お爺ちゃん!!」


 「行っておいでシュタイン?儂等の技術を試しておいで?」


 「お爺ちゃん・・・・」


 マコトは言う。


 「それでは、王都の郊外に陣を敷いております。明朝、おいで下さい」


 そう言って、マコトは『研究所』を後にした。

 第1城壁内を歩いていると、ダークエルフの諜報員が何処からともなく現れた。


 「司令、どうでしたか?」


 「予想以上だった。良くやった」


 「ありがとうございます」


 「他の案件も頼んだぞ」


 「「御意!!」」


 そうして、複数の気配は消え去った。


 「後、少し、後、少しだ」


 そう言って、マコトの姿は人混みに消えた。






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