207話 大改革 4
先日、弟の子供が産まれてまた、叔父さんになってしまいましたW コロナや職場で明るい話題が無い中に灯った大きな明かりです。
王都ゲイボルグ郊外 天幕内 2日目
天幕内での会談が再開されたのは、翌日の昼過ぎだった。
「それでは陛下、今回の交渉に際して我々が提示するのは以下の通りです」
そう言って、マコトは書類のコピーをハイマン国王と、その側近達に配っていった。今日の側近達は昨日の文官達が財務系とすれば、交渉事を担当する外務系の文官達であった。
マコトからの要求は、おおざっぱに纏めると以下の通りである。
○ヒイラギ公爵領を事実上の準独立国とすること(以降ヤマト公国とする)
○政治、経済、外交、軍事、司法の各種自治権を有すること
○ヤマト公国とゲシュタルト王国は軍事、経済同盟を結ぶこと
○友好の証として、ヤマト公国は3年に1回ゲシュタルト王国に対して
50億円を納めるものとする
○ヤマト公国とゲシュタルト王国は、関係改善の為に3年に1回同盟会議の場を
設けるものとする(緊急の際はこの限りではない)
○ヒイラギ公爵はゲシュタルト王国王位継承権第4位のミナサリア フォン ア
レグリアと婚約関係にあるが、婚姻と同時に王位継承権を破棄するものとする
といったものであった。
ゲシュタルト王国側の反応は、劇的であった。
ヒイラギ公爵は、ゲシュタルト王国から独立する気か!!臣下の立場に有りながら同等の権利は不敬である!!ヒイラギ公爵の経済状況から50億円では安過ぎるぞ!!といった否定的な意見が多数であった。
しかし、ハイマン国王の口から出たのは、
「了承した」
の一言であった。背後で騒ぐ文官達を尻目に、ハイマン国王が提示した条件は、いくらかの修正が入ったものの、次の通りであった。
○ヒイラギ公爵は、ゲシュタルト王家に対して、先の1000億円の他に150
0億円を無利子で貸し出すこと
○ヒイラギ公爵領とゲシュタルト王国との定例会議は2年に1回とすること
○ヒイラギ公爵は、ゲシュタルト王国の剣として変わらぬ忠誠を誓うこと
○ヒイラギ公爵はミナサリア フォン アレグリアの他に王家の分家筋から側室
を娶ること
といった内容であった。王国側、ヒイラギ公爵側、双方の文官達が頭を捻り、考えた結果双方の主張が概ね通る形となった。
その後の会議では、逃走したイスマル皇国、アシュラ王国、反乱貴族達の後処理に関して話し会われた。
王都並びに王城内で、葬送曲が捕虜とした者達は引き続き、マコトの預かりとなった。
王都郊外でMOABによる空爆で敗退した、イスマル皇国と反乱貴族軍の本隊は反乱貴族領まで近衛騎士団による追撃を振り切り、領地に立て籠る姿勢を取っている。これ等の反乱貴族に対してハイマン国王は踏み絵の意味合いも込めて、周辺貴族を集めて討伐軍を編成するつもりであった。
ヒイラギ公爵の兵力を使えば良いといった意見も有ったが、戦功を全てヒイラギ公爵に与える気か?と言うハイマン国王の一言で消え去った。
討伐軍の編成、荒れ果てた王都の再建の為にハイマン国王は2日目の会談を終えると、避難民への慰労金の配布を文官達に任せて王城へと帰還した。
マコトは独り、天幕を出ると半長靴で地面の土を掻いていた。
「どうした?公爵閣下が独りでこんな所に」
マコトに話し掛けたのは、鉱山都市ドリンドルでアリシアの元で新兵訓練に励んでいるはずの元ハリマ帝国親衛隊長でマコトと同じ転移者のジークフリートだった。
「貴方でしたか、何故このような場所に?」
ジークフリートは葉巻に火を着けて、一息大きく吸うと吐き出した。
「質問に質問で返すのは、無作法だぞ?まぁ、儂は新しい転移者が見つかったという噂を耳にして会いに来たんじゃが・・・・。会談の様子を聞いた。御主どこまでやる気だ?」
「どこまで・・・とは?」
ジークフリートは再び葉巻を吸うと、
「惚けるでない!この世界には儂のような年寄りの時代の兵器でさえ、オーバースペックだ。なのにお前さんは、それよりも進んだ時代の兵器を余多作り出して、更には魔術と科学の混合した兵器をも世に送り出しておる。ここに来るまでに乗艦した空中戦艦に乗って確信した!御主は何かとんでもないことを考えている。そこに、今回の建国じゃ!疑うなと言う方が無理だ。白状せい!」
マコトは、特別にあつらえた黒い軍服の胸ポケットから、酒の入った小瓶を取り出すと、中身を一気に飲み干した。驚くジークフリートに向かって、マコトは言う。
「これは、ただの酔っ払いの独り言でしかない。この世界に来ていろんな出来事や出会いが有った。嬉しいこと哀しいこと沢山有った。だけど、胸にぽっかりと穴が開いている。魂が渇きを訴えている。本当に此処は自分の居場所のなのか?と」
「御主、まさか!!」
「言ったでしょう?ただの酔っ払いの独り言ですよ。嗚呼、そうそうジークフリートさんのお目当ての転移者、長門楓は空中空母赤城で故郷の味を味わって食事をしているはずですよ?では、自分もこれで・・・・」
「主は、御主は本当にそれでも良いのか!下手をすれば世界を・・・」
ジークフリートは、言葉を失う。マコトが18式自動拳銃を抜き放っていた。
「話しは此処までだジーク。世界の何処に耳が有るか分からない。だから続けるようなら撃つよ?頼むから引き金を引かせないでくれ」
「・・・・・」
「それと、暫くしたら大量の新兵が基地に行く筈だから、訓練を頼むよ?死なせない為にも」
「マコト、何が御主をそこまで掻き立てる?」
「さてね、自分もソレを探している。だからの準備だ」
マコトをそう言って、拳銃をホルダーに納めると歩き出す。
背後で、ジークフリートが絶叫を上げた。
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計算間違いの指摘ありがとうございました。修正させて頂きました。今回は、これからの方針の大きなターニングポイントになると思います。どうか変わらぬ応援を重ねてお願いします。




