206話 大改革 3
市内で発生したコロナの情報は全く報道されなくなりました。感染者の情報保護の為なんでしょうが立ち寄り先等は公開しても良い気がしますけど。お店だったら風評被害が大変かな?
王都ゲイボルグ郊外の平野
以前、旧アマゾニア王国侵攻の際に諸侯の軍勢が終結していた跡の平野に、今は少数のゲシュタルト王国兵と多くの避難民が集まっていた。
マコトの乗艦する空中駆逐艦島風は、そんな彼らから1km程離れた場所に降下した。
上空には入れ替わるようにして、王都周辺に待機していた空中戦艦比叡が陣取り、避難民が暴徒化する最悪の事態に備えて睨みを効かせていた。
空中駆逐艦島風の格納庫のハッチが開き、地面と接触する。すると十数台もの3・5tトラックが50人程の武装した団員に囲まれて姿を現した。
荷台の幌は取り払われ、大きな木箱がいくつも載せられているのが見て取れた。
格納庫からは、トラックと団員の他に2台のフォークリフトも姿を現して車列に加わった。
最初から平野に居た群集に、車列が接近するのにさほど時間はかからなかった。
車列が近付くと1000人程のゲシュタルト王国兵の中から100人程の近衛騎士団に護衛されたゲシュタルト王国ハイマン国王が姿を現した。
それを見て、車列は50m程の距離をとって停止した。
護衛をしていた団員の中からマコトがヘルメットを脱ぎながら、歩いてハイマン国王に近付いて行った。
臣下の礼の作法をとろうとしないマコトに、近衛騎士団が気色ばむがハイマン国王がそれを手を動かして押さえ込む。
「ヒイラギ辺境伯、例のモノは?」
ハイマン国王が問いかける。
マコトは無言で、後方に合図を送った。すると、数人の団員が3・5tトラックの金属製のハッチを開くと、フォークリフトがトラックの荷台から1個の木箱を重そうに持ち上げると、マコトとハイマン国王達の方へ近付いて来た。
近衛騎士団の騎士達は見たことの無いものがエンジン音を響かせて近付いて来るものだから、慌てて国王を避難させようとした。
しかし、ハイマン国王は動こうとはしなかった。
フォークリフトはマコトの横まで行くと、そこで木箱を下ろして少し後退した。
「陛下、御所望の品、今ここに」
そう言って、マコトは手で木箱を示した。ハイマン国王は頷くと、近衛騎士団に対して、
「アレを開けよ!!」
と木箱を指差した。近衛騎士団は少しの間、動揺したが見慣れた木の箱ということで、何処からか斧を持って来ると木箱に向かって振り下ろした。
バキッ!バキッ!
数回、斧を振り下ろすと木箱は、破壊されて中身の重量からか自壊した。
ジャラジャラジャラジャラ!!
音を立てて、木箱から金貨が溢れ出した。近衛騎士が驚いていると、いつの間にかフォークリフトがもう1個木箱を運んで来ていたことから、ハイマン国王は、その木箱も破壊させた。すると、そちらの箱からは銀貨が溢れ出した。
マコトは、
「このような木箱が全てで80個、1000億円分有ります。ご確認を」
ハイマン国王は、もう一度頷くと、後方へと合図を送った。すると200人程の軽装の文官が現れた。
「アレ等の木箱の中身を確認し、記録せよ!横領など考えた者はこの場で首をはねる!!」
文官と、それを見張る近衛騎士団が仕事にかかった。2台のフォークリフトもフル稼働で木箱を3・5tトラックの荷台から下ろしにかかる。
その間に、マコトと数人の家臣と、ハイマン国王と数人ずつの文官と近衛騎士が団員達の設営した天幕へと入って行った。
その間にも、資金が到着したことに気付いた避難民達が押し寄せようとするのを約1000人の王国兵が押し返していた。
天幕に入り、人目が無くなるとハイマン国王はマコトの手を取り、涙ながら頭を下げた。
「本当にスマナイ、ヒイラギ殿!!まさか本当に1日で1000億円用意するとは!!」
マコトは、国王の本気泣きに若干引きながら、
「約束は履行して頂けるんですよね?」
と問いかけた。
「勿論だ!旧アレフガルド王国領におけるゲシュタルト王国の全ての利権、領土はヒイラギ辺境伯の物だ!それと長らく不在であった公爵の地位を授ける。これより貴殿も公爵だ!関係書類、資料もこちらに用意してある・・・」
「申し訳ありませんが、『貴殿も』とおっしゃいましたね?他にもどなたか公爵位を?」
ハイマン国王は、油汗をかきながら、天幕に用意された机に両手をつくと、
「スマナイ、ヒイラギ殿、今回の受爵について手を回していると門閥貴族達が横槍を入れて来て、貴殿の出自が定かではないと難癖を付けられたのだ。貴殿に受爵しない訳にはいかないと押し通すと、それではバランスを取る為にも他の者にも爵位を、と言って来たのだ。結果、貴殿も知るアレグリア侯爵を公爵に。門閥貴族の侯爵を公爵に、伯爵の1人を侯爵にすることになったのだ。言い訳にもならないがもう少し時間が有ればこのようなことはさせなかった!私の至らなさが招いた事態だ」
そう言って頭を下げた。マコトは、ため息をつくと、ハイマン国王に言った。
「頭を上げて下さい。陛下、なってしまったものは仕方ありません。それよりも受爵に伴う領地や、報償金の方が大変なのでは?」
ハイマン国王はなんとか、用意された椅子に座り込むと、
「今回は戦などで手柄を立てて受爵された訳ではないから、本来相当ではないが、今回の戦乱の後では手痛い出費だ。もしかしたら、ヒイラギ公爵にまた資金の借り入れをお願いするかもしれない」
「構いませんが、そう何度もは流石にお受け出来かねますよ?それと今回の件についても、いくつか条件も付けたいですし」
「分かった。条件とやらは後で聞くので一度休んで良いか?昨日の今日でヒイラギ公爵も休んでいまい?それに、集まった避難民達にも、見舞金を出さねばならんしの?」
「分かりました。今日の会談は、この位にして明日またご相談しましょう」
「では、ヒイラギ公爵も城で休むかの?戦の後故に贅沢なもてなしは出来ぬが」
「イエ、私は部下との会議も有りますので、艦内で休もうと思いますので」
「そうか、無理を言ったな。では、また明日に」
「はい、また、明日」
ハイマン国王は、会談を行った天幕から離れて避難民の横を通り、城に向かったが、避難民の中から1人の人影が、国王に近付いて行った。しかし、近衛騎士は止めようとしなかった。
「影か?民の様子はどうか?」
「ヒイラギ公爵領から資金が届いたと噂を広めて、一応は落ち着いております」
「すまないが、1つ任務を追加だ。避難民に紛れ込んだ暗殺者がヒイラギ公爵の命を狙わんか注意してくれ」
「分かりましたが、杞憂では?公爵には最強の軍勢が有ります」
「万が一よ。こうした影戦にヒイラギ公爵が慣れておらんかもしれないからの」
「了解」
人影は再び避難民の集まりの中に消えて行った。
「陛下、アレが王国の影ですか?」
「そうか、お主は初めてか」
「無礼者かと斬りかかろうとしましたが、物凄い殺気に止められました。背後からの・・・」
「ハハハッ!アヤツだけでは無いからな」
「恐ろしい者達です」
空中駆逐艦島風 艦内
「司令、避難民の中に怪しげな気を放つ者達が居ます。排除しますか?」
「放っておけ、恐らく王国の影だろう。彼らが居るなら門閥貴族の刺客は心配しなくて良いかな?」
「司令の身は、自分達が守ります!!」
「宜しく頼むよ。自分は休む・・・影戦に特化した部隊を作るべきかな?憲兵だけでは荷が重かろう・・・・」
久しぶりに登場しました!王国の暗部、王国の影、忘れてしまった人も多いのでは?目立たないのが役目の人達ですからね。忘れていたわけではないですよ?
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