199話 王都炎上 16
夏本番て感じの暑さになって参りましたが、皆さまお元気でしょうか?自分は結構な暑さと仕事でグロッキーです。コロナに負けず頑張りましょう!!
「アレがランスロットの言ってたワイバーンか・・・」
マコトは今、城内の中庭の望むことの出来る城のテラスに這いつくばって、ワイバーンを観測していた。
サッカーコートほども有る中庭には大きな噴水が設置されており、平時には沢山の花が華々しく咲き誇り、それを観賞する為のベンチ等も所々に設けられていたが、今はワイバーン達に踏み荒らされて見る影もなかった。
報告では、最初は数騎の竜騎士が暴れていたそうだが、数人の騎乗した騎士が討ち取られたことにより警戒してほとんどが地上援護を諦めて飛び去ったとの事だった。
竜騎士達を屠ったのは誰か、言うまでもない。
しかし、マコトは報告が気になっていた。「ほとんど」と言う点だ、その答えが
眼前に有った。
「私のピーちゃんを傷付けた奴ら出て来~い!!アシュラ王国にこの人有りと言われたザンダガスピアの長門楓様が相手をしてやる~!!」
背中まで伸ばした黒髪をポニーテールにして緑色がかった鎧を着込んだ黒眼の少女が雷を纏った長槍を手にして翼が傷付いたワイバーンを庇っていた。
「アレか?」
「アレです」
マコトは右手で顔を覆うと、天を仰ぎため息をついた。
「誰が気付いた?」
「偵察に来た古参の団員が、怒りの余りか大陸共通語ではない言葉を話していることに気付き、その単語の中に司令が命名した空中戦艦長門と同じ単語が出てくることに気付いてから、容姿に気付いたそうです」
「そうか、分かった。全部隊に通達、指示通りに行動しろ!」
「了解!!」
「う~ん、誰も出て来ないなぁ?お城の中に先に入った騎士団の人ぐらい助けに来てくれても良さそうなのになぁ?」
「その願いが叶うことは永遠に無い・・・・」
「誰!?って日本語!?」
次の瞬間、中庭を囲むテラスや、ベランダ、柱の影から葬送曲の団員達が姿を現して、少女に銃口を向けた。
「え、ええええ!!迷彩服?鉄砲?ってことは自衛隊???な、何でこの世界に居るの?」
『そこのお前!武器を地面に置いて腹這いになれ!!』
拡声器で、命令する。
『繰り返す、武器を置いて腹這いになれ!後10秒、9、8、』
少女は傷付いたワイバーンに振り向くと、
「ゴメンね?ピーちゃん少しの間我慢してね?」
「ピュウィ!!」
返事をするようにワイバーンが鳴く。
『4、3、』
黒髪の少女はスピアを置いて、地面に伏せた。
「これでいいんでしょ!?誰か説明しなさいよ!!」
少女は地面に伏せたまま、近付いて来る人影を観察していた。するとほとんどが特徴的な耳をしたエルフであることに気付いた。
(どういうこと?アレは確かに日本語だった!!)
混乱する彼女に、最も近付いた人影がスピアを拾い上げる。
「フム?鑑定してもミスリルが少し使われただけの普通の槍だ。どうやって雷を纏わせていたのかな?」
(日本語!?)
少女は両手を地面に付くと起き上がろとした。
その動きに周囲の人影は反応して、銃口を向けた。
「あぁ、皆良いよ。そのまま、そのまま。女の子をいつまでも地面に這いつくばらせておくのも見栄えが良くない。どうぞ、起き上がって?」
長門楓と名乗りを挙げた少女は、眼前に居る自分の武器を持った迷彩服の男に対して、
「貴方名前は何て言うのよ?何で自衛隊がこの世界に、何でアシュラ王国と敵対するの?」
少女の前に立った男、マコトはマシンガンのように喋り出した楓に人差し指を向けると、すぐに自分の唇の前に持って行き、静かにのジェスチャーをして見せた。
「自分の名前は柊誠。我々は自衛官ではありません。敵対したのは貴女達が攻めて来たからですね。それと貴女、西暦何年生まれですか?はい、喋って良いですよ」
楓は、戸惑いながら、
「2003年生まれよ。それに日本語!貴方日本人何でしょう?」
マコトは、笑いながら、
「見たところ、16~17歳というところですね。貴女の問いに答えるならば、はい、自分は日本人でした。今は少々怪しいですけどね。貴女はどうやって、この世界に?」
楓は少しでも情報を得ようと、会話を続けた。
「部活の帰り道に子供が道路に飛び出して、そこにトラックが走って来たから助けようとして・・・気付いたら白い空間に居て死神を名乗る男性が貴女は死ぬ筈じゃあなかったって・・・・」
ガチャン!!!
マコトが手にしていたスピアを城の柱に投げつけていた。
「クソ死神共が、またヘマをやらかして、こんな少女の未来まで奪いやがったのか!!!」
楓が慌ててフォローする。
「で、でもそのおかげで子供が助かりましたし、私だって第2の人生を・・・」
「悔しくないのか?未練は無いのか?こんな戦国時代みたいな世界に来て本当に嬉しいのか?」
マコトの問いに、楓は涙をポロポロと流し出す。
「未練が無い訳無いじゃありませんか!!友達ともっと一緒に居たかった。両親に何の恩返しだってしてない。お爺ちゃんやお婆ちゃんだってきっと悲しんでいる!!なのに、この世界では戦うことでしか自分の居場所を作れない!!帰りたいよう・・・・」
「その願い、自分ならば叶えてやれるかもしれない。けどそれは修羅の道や仮にも神様を敵に回す事なんだからな?」
「え、それって・・・・?」
周辺警戒をしていた、エルフの指令本部要員が話しかけて来る。
「どうしますか?彼女らには少なくない数の近衛騎士が殺られています。方針を決めなければ・・・」
「コイツはウチの食客にする。ワイバーンにも世界樹の雫を使ってやれ」
「本気ですか?下手をすると近衛騎士団との関係が悪化しますが?」
「奴らの尻拭いを自分らがやっとるんだ。戦利品の1つや2つ認めさせてやる」
「はぁ、分かりました。では当初の予定通りにここは中継基地にするということで手配を進めます」
「頼んだぞ!!」
楓は、マコトの服の裾を引っ張ると、尋ねる。
「どうなったの?部下の人、怒ってたみたいだけど?」
「あぁ、君をウチの預かりとした。大丈夫、女の子の1人や2人養うのは簡単だ。何せ辺境伯様だからな!!」
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