18話 奴隷商にて 1
奴隷商編です。苦手な方はすみませんが、もう数話続きます。
ミケーレ商会、それがドリンドルの街における唯一の奴隷商の名前だった。
入り口から中に入ったところには、屈強な用心棒らしき男がスーツのような服を着て立っていた。
「冒険者ギルドからの紹介で来たのだけれど?」
と言って、ギルマスに書いてもらった紹介状を見せると封蝋の冒険者ギルドのマークを確認すると
「ようこそミケーレ商会へ。」
と丁寧に奥の部屋に進むように促して来た。
店員の教育はしっかりと行っているようだ。これで、顎で促すような店員だったら顎に掌底を喰らわせていたかもしれない。
「ねぇ、マコト本当に大丈夫なの?」
そう、商会にはエルフであるアリシアも連れて来ていた。
人種差別があるかもしれない世界で、異人種であるアリシアを連れて来ることに些かの迷いはあったが、これから命を預ける仲間を選ぶのだ。
相棒の意見を無視する訳にはいかない、という理由で連れて来たのだ自分がしっかりしないととマコトは考えており、先程の用心棒への過剰な警戒もその現れだった。
奥の部屋に進むといかにも商人といった感じの人物では無く、用心棒と同じようなスーツの様な服装の細身の男性が待ち受けていた。
「ようこそミケーレ商会へ、私が当商会を預かりますミケーレ・ザザと申します。お見知りおきを」
と言って優雅に一礼して来た。
「Eクラス冒険者のマコトと言います。こちらは相棒のアリシア。冒険者ギルドマスターからの紹介状をお渡ししても?」
なるべく非礼にならないように気を付けて振る舞った。相手は商会名と共にザザという家名を名乗った。
この世界で家名を持つのは主に貴族と大商人、金を持つ者達だ。これから商談をする上でも相手を不愉快にさせたくない。
「ええ、どうぞ。拝見致します。」
ミケーレはギルマスからの紹介状を時折「ホォ!」と驚きの声を上げながら読み進めていった。
紹介状を読み終えると、
「アレグリア侯爵家に縁を持ち、冒険者ギルドに加入してわずか数日でランクアップするギルド期待の星ですか。是非とも私もご縁を得たいところですな。」
そう、奴隷商についてギルマスに相談に行った日。いきなりのFランクからEランクへのランクアップが告げられたのだ。
理由は、100体を超えるゴブリンの討伐とビッグボアの討伐である。加入して1週間足らずで、それだけの実績を出したのだ。
ランクアップするには十分な実績だと言われてランクアップしたのであった。
アレグリア侯爵家とのことはミケーレに舐められないようにとの配慮だろうが、出来れば内密にしておいて欲しかった。
「これは、私も張り切ってご案内せねばなりませんな。それで?希望する奴隷についてご要望は有りますか?」
ミケーレはギルマスからの紹介状を読んでから明らかに積極的になっていた。
マコトは、
「人数は5名程、予算については心配なさらずに。口が固くなるべく長く雇えるとありがたいです。後、出来ればエルフ等特殊な技能を持った種族だと良いですね」
ミケーレは少し考え込んだ顔をしていたが、考えがまとまったのか笑顔になり
「値段は少し張りますが、ご要望に応えられる案件が有ります。犯罪奴隷で6人のエルフが居ります。1人500万円で3000万円になりますが。」
マコトは、
「犯罪奴隷というのは鉱山送り等になるのでは?それに、そのエルフ達は何の犯罪を犯したのでしょうか?」
ミケーレは頷くと、
「犯罪奴隷と言いましても、普通の犯罪を犯した者だけではございません。例えば、反乱、戦争の捕虜等も重犯罪人扱いされるのです。このゲシュタルト王国は現在エルフの国アレフガルドと戦争中の為、エルフの捕虜が発生して売りに出されるのです。と言いましてもなかなかその数は少ないのですが」
「捕虜交換等は発生しないのですか?」
ミケーレは悲しそうな顔を作りながら、
「アレフガルドのエルフは捕虜を取りません。よって交渉自体が成り立たないのです。」
マコトは、
「それだけ人族を嫌っているエルフなら、奴隷にしても言うことを聞かないのでは?」
と質問をした。
「奴隷紋が刻んであるので、主人の命令には逆らうことは出来ません」
「冒険者という仕事柄指示には素早く反応してもらわなければなりません。その点などどうでしょう?それと、エルフの性別は?」
「性別は男性が1人に女性が5人になります。女性も戦士なので、ご懸念の点も戦士としての本能から大丈夫だと思われます」
ここでマコトはミケーレが忠誠心のことで少々ごまかしているなと感じた。そこで
「う~ん、良い案件だとは思いますが一度実際に拝見させて頂いて宜しいですか?」
すると、ミケーレは喜色満面になり、
「どうぞどうぞ、只今準備をして参りますので、少々お待ち下さい」
と言って席を立った。
ミケーレが完全に立ち去ったのを確認すると、マコトはアリシアに
「どう思う?仲間になってくれそうかな?」
と相談した。
アリシアは、
「普通ならまず無理ね。でも、アレフガルドのエルフは捕虜になった仲間のエルフすら見下すようになるわ。そこを突けば奴隷になったエルフ達も仲間になってくれるかもしれない。」
「よし、エルフ達の説得は任せた。自分はミケーレの気を反らしておく。」
と役割分担を決めたところにミケーレが戻って来た。
「準備が整いましたので、さぁこちらへ。」
一行は更に奥の部屋に進んで行くと地下室への入り口が現れた。
地下室への階段を降りて行くと地下は意外に広く高さは3mはありそうだった。
地下室は真ん中が通路になっており、その左右が檻になっている作りだった。
「こちらになります。」
とミケーレが先に立ち一番奥の方の檻へと案内した。その檻は他と違いより頑丈に作られ、魔方陣等も刻まれていた。
「こちらの檻は魔法等を無効化する効果を持たして有ります。」
ミケーレは、檻の説明をすると共にドアノッカーのような金属金具を鳴らし、
「お客様のお越しだ。顔をお見せしなさい。」
と檻の中に呼びかけた。
誤字脱字報告、感想、ブックマーク大歓迎です。これからも応援宜しくお願いします。