168話 開戦 7
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飛行戦艦比叡が雲海を引き裂き、降下すると眼下には敗退したゲシュタルト王国軍が集結した森へと平原を進軍する約8万のイスマル皇国の軍勢が見て取れた。
艦橋は比叡の上部に有る為に、艦体が邪魔をして視界にイスマル皇国の全軍をおさめることはできないが、艦橋のモニターに艦下部に設置されたカメラからの映像が写し出された。
飛行戦艦比叡と飛行駆逐艦島風がイスマル皇国の航空部隊からの迎撃に遭ったことから予想されていたことだが、イスマル皇国の地上部隊も比叡と島風の接近に気付いており、陣形を行軍に適したものから横に広がり、迎撃に適したものへと変化させていた。
しかし、イスマル皇国軍に出来たのもそこまでで、まさか飛来したのが飛行戦艦のような巨大な物とは想定していなかったようで、迎撃の陣形も崩壊を始め、将兵達も驚きの顔で頭上を見上げていた。
「艦長、これは好機では無いのかね?」
マコトは、モニターに写し出されたイスマル皇国軍の将兵達の様子を見て言った。
「・・・・ですな。各銃座撃ち方よ~うい!!」
マコトの発言に、艦長も自分の役割を思い出して全艦に指示を下す。
それにより、127mm砲や、40mm擲弾発射器、12・7mm重機関銃座、果ては地上爆撃用の各種爆弾の投下用ハッチまで開かれた。
「撃ち方始め!!」
各種銃、砲座が火を吹く。
「面(お~も~)舵(か~じ)!!」
艦長は艦の舵を右に取った。
攻撃を続けながら、イスマル皇国軍の右翼の頭上に至ると、
「取(と~)り~舵(か~じ)!!」
急激に左へと舵を取り、イスマル皇国の横陣を右翼、中央、左翼へと横切れるように進路を取った。
「爆撃開始!!」
艦長の指示のもと、投下用ハッチにリボルバー状に納められた500ポンド爆弾(約227kg)が次々とイスマル皇国軍兵士達の上に降り注ぐ。
有る部隊は、127mm砲の直撃を受け爆散し、爆裂筒(イスマル皇国軍の大砲)をなんとか垂直にして比叡に向けようとした部隊は、40mm擲弾発射器による集中砲火を浴び壊滅して、逃げようと走り出した兵士達は500ポンド爆弾でバラバラに吹き飛んだ。
とにかく人が集団で居る場所にあらゆる砲火が浴びせられた。
そんな地獄が、イスマル皇国軍約8万の頭上を通り過ぎた。
イスマル皇国軍陣形左翼を通り過ぎ、カメラで地上の様子を確認したところ、まともに機能している部隊は1つも無かった。
数少ない生き残りは、呆然と立ち尽くしているか、来た道をそれぞれの全力で引き返して行くところだった。
こうして、イスマル皇国軍によるゲシュタルト王国軍追撃部隊は壊滅した。
同じ頃、上空の飛行駆逐艦島風からも、イスマル皇国軍の航空戦力を壊滅させた旨の連絡が入った。
ゲシュタルト王国軍との合流予定地点まで、約30分。
飛行戦艦比叡と飛行駆逐艦島風はゲシュタルト王国軍を威嚇する目的で、先頭を島風が行き、比叡はその少し後方から見下ろすように見える陣形で進んだ。
しかし、合流予定地点の間近まで迫って、第501及び第502戦車大隊から無線で人質の無事な救出を知った。
だが、依然として敵対的な態度をゲシュタルト王国軍が取るということで、比叡と島風は威嚇的な進軍を進めて、第501及び第502戦車大隊と偵察小隊と合流したのである。
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