164話 開戦 3
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イスマル皇国海軍旗艦戦艦イスマル。
艦上では、艦長と副官が周囲の艦隊を眺めながら会話していた
「生意気にもゲシュタルト王国軍が我が国に侵攻して来たらしいが、この国名を冠した戦艦と新兵器、炸裂筒が有れば我が軍の勝利は間違いない!!」
「閣下、龍母艦の存在も侮れませんぞ、アシュラ王国から入手したワイバーンが1隻に10頭、それが5隻、50頭が乱舞するのです。敵艦はひとたまりも無いでしょう」
「言うな?副官。では、どちらの艦がこれより向かう戦場でより多くの戦果を挙げるかを賭けるか?」
「龍母艦5隻と戦艦15隻の勝負ですか?良いでしょう。私は秘蔵のワインを賭けましょう」
「フム、では、儂は敵艦の艦長から戦利品として得た柄に宝石の埋め込まれた短刀を賭けよう」
「良いのですかな?かなり自慢の品だった筈ですが?」
「それだけ炸裂筒に期待しているという訳だ。あれこそ我が国の生んだ大発明だ」
「しかし、その自慢の炸裂筒、出所は、皇国情報部だというではありませんか?あそこは良くない噂ばかり聞きますが?」
「そう言う貴官の自慢のワイバーンもアシュラ王国から買い付けたというが、それは情報部の仕事らしいではないか?本当に対価を払ったのかも怪しいものだ」
「まぁ、噂をどうこう言ってもしょうがありません。今、実際に兵器として此処に有ることが重要なのです」
「ふん、まぁ良い。そう言うことにしておこうか・・・何やら騒がしいな?」
「近くの者に聞いてみましょう。オイ!何があった」
走り回っていた1人の水兵が立ち止まる。
「艦隊前部の小型艦の乗組員から水平線上に白い点が複数見えるという報告が・・」
「何だと!?儂は聞いておらん・・・・」
ドカ~ン!!!
「何だ!何の爆発だ?」
「まさか、炸裂筒が暴発したのでは?艦長」
「あ、あれは、まさか!!」
その視界には艦隊中央に配置された龍母艦が、沈んでいく姿が入って来た。
それは、まさに飛行戦艦比叡の放った対艦ミサイルが龍母艦を捉えた瞬間であった。
ズドン!!ボン!!ドカン!!ドカン!!
立て続けに4回の爆発音が続く、戦艦イスマルの艦長兼艦隊の提督でもある艦長は絶叫を挙げる。
勿論言うまでも無く、残る対艦ミサイルによる攻撃で4隻の龍母艦が撃沈された爆発音である。
「何故だ?何故我が海軍の艦が沈む?敵は姿さえ見えておらんのだぞ!!」
実際には、イスマル皇国海軍の艦艇は、飛行駆逐艦島風のレーダーに捉えられており、丸裸の状態であったが。
「伝令~!伝令であります!」
1人の海軍士官が艦長と副官の元に走り寄る。
「伝令だと?何を今更!」
「艦長!今は少しでも情報が必要な時です!」
「グムムム、読め!!」
「ハッ!艦隊旗艦より先行している部隊より、空を飛ぶ艦を発見し、これを攻撃するも効果無し、敵艦の方角より白い石柱のようなものが旗艦方向に複数飛翔せり、以上であります!」
「グムムム、遅すぎるわ!儂らは5隻の龍母艦を失ったのだぞ!その無能な艦の指揮官を厳罰にしてくれる!!」
「艦長、伝令は手旗信号により、これが最速です。むしろ敵艦を発見したことを誉めるべきかと・・・・」
「何なのだ、この敵は!視界の外から攻撃して、一撃で龍母艦を沈めるだと?」
「艦長、幸い敵艦の方角は判明しているのです。全艦をそちらに向けるべきかと?」
「えええい、分かっておるわ!全艦進路を2時の方角に取れ、敵艦を残らず沈めてくれる!!」
「了解しました。艦隊進路を2時の方角に取ります!」
こうして、図らずしもイスマル皇国海軍と、マコト達ゲシュタルト王国軍は互いに進路を取って、正面対決へ至ろうとしていた。
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