160話 ラブレター 1
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久しぶりに領都ノースガルドに帰還したマコトは、各地に派遣した武官や、文官からの報告書、飛行艦の進捗率、鉱山都市ドリンドルに残して来たアリシアからの報告書の山を整理していたが、一山だけ異彩を放つ手紙の束があった。
マコトは、それを見た途端に嫌な予感がしたが、要決済待ちの箱に分類されていた為に見ない訳にはいかなかった。
その手紙の束の一通を手に取ると花の香りが微かに香った。
アレグリア侯爵令嬢、ミナサリア嬢からの手紙であった。
一通目は王都で最後に別れてどんなに寂しい日々を過ごしているか。
二通目はアレグリア侯爵の薦めで王都に有る貴族の子弟の通う学院に入学したこと。
三通目からは学院での日々が綴られていたが、七通目に伯爵家の次男坊から求婚されてどんなに嫌だったかが続き、その次男坊はしつこいらしく、十通目まで続き、遂には内密とされていたマコトとの婚約の話しを暴露して追い払ったと有り、
十一通目で謝罪の内容とマコトからの返事が無いことへの不満が書き綴られていた。
この数ヶ月の間に十一通もの手間のかかる手紙を送って来ただけでその執念が分かるし、相手はあの逆壁ドンをして来たミナサリア嬢なのだ。
それを一通も返信していないことにマコトは冷や汗をかいた。
このままでは、ミナサリア嬢自身がここ領都ノースガルドまで来てしまいかねない。
道理で、要決済の箱に入っていた筈だ。
この書類整理をした城の文官に金一封を贈っても良いぐらいだ。
マコトは急いでボールペンで返事の手紙を書き出した。
このボールペンは、マコトのスキル、異世界マーケットで購入した物であり、最初は親しい知り合いにのみ贈呈していたのだが、その便利さに注文が殺到して、瞬く間にゲシュタルト王国のみならず、各国の上流階級に広まり、やや、劣化したコピー商品までもが民間層にまで広まり、マコトのちょっとした収入源と化していた。
マコトはミナサリア嬢に対して、領地の巡察が忙しく、魔物や海賊の討伐が大変であったことを正直に書き記していった。
そして、決してミナサリア嬢をおざなりにした訳ではないことを強く強調して、学院での勉学に励んで欲しい旨を伝えて、これからは、なるべく返事を書ける様に努力するという内容で手紙を書きあげると、すぐさま王都ゲイボルグのミナサリア嬢の通う学院への使者を仕立てて送り出した。
すると1週間後、学院に送り出した使者がボロボロになって帰って来た。
領都ノースガルドから王都まで馬で行けば、2週間はかかった。
なので使者は、軍団の高機動車で、4日かけて王都に到着したのだが、ミナサリア嬢は、マコトからの返事の手紙を読んでから、その場で返事を書き出し、書き上がると同時に、使者に手紙を手渡しして、
「この手紙を一刻も早くマコト様に届けるのです!手抜きでもしたらどうなるか、お分かり?」
と、以前マコトに対して、壁ドンをした勢いで使者に詰め寄ったのであった。
免疫の無かった使者の元ハリマ帝国組の団員は、寝る間も惜しんで高機動車を走らせて、1週間で往復するという無茶をやり遂げたのであった。
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