154話 領地開発 6
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シーサイドは、港街である。
それは、貿易港と漁港の両方を指していた。
貿易港としては、アレフガルドの大森林の恵みである薬草や、獣の干し肉、生鮮野菜などを輸出して、他の土地からは金属製品などを輸入していた。
漁港としては、豊かな海の幸が豊富に獲れて、それを干物にしたり、または海水を煮立てて塩を精製して大森林の各地に送り出していた。
元アレフガルド王国内でも、海に面する土地は少なく、また大型の貿易船が入港できる深度の深さのある港街は、更に少なかった為に重要な貿易拠点とされていた。
しかし、今、その役割が大きく変わろうとしていた。
アレフガルド王国が征服されて、鉱山都市ドリンドルの領主でもあるマコトが、この一帯の領主になったことで、外国から高い金属製品を購入する必要が薄れて来たのである。
そうすると、外国の船はわざわざ空荷で、やって来て買い取りだけして帰るとなると、薬草などの販売利益があっても、旨みが半減するのだ。
それにより、外国の船の入港率が下がりつつあるという報告を、駐在する文官から受けていた為に、マコトはロードル村などの立ち寄った村で、ドライフルーツの生産を推し進めるなどして、新たな特産品を生み出すことによって、外国の貿易船を呼び戻そうとしていたのだ。
また、構想段階であるが、逆に鉱山都市ドリンドルで生産された貴金属の製品を輸出する構想も、練られつつある。
貿易港としては、いささかの陰りの見えるシーサイドであったが、漁港としての役割は損なわれることは無かった。
むしろ、ゲシュタルト王国との戦争が終わり、人手が戻ったことにより賑わいは増した程であった。
マコト達がシーサイドに到着した際にも、数隻の漁船団が帰港して港に魚介類の詰まった箱をいくつも水揚げしていた。
港の外れの工場では、海水を煮立てている煙と水蒸気がモクモクと上がり、塩の生産も順調のようであった。
マコトが、それらの街の様子を眺めていると、シーサイドに駐在する武官や、文官達が漁港の網元や、貿易港の商会長を連れて出迎えにやって来た。
彼らに案内されて、シーサイドの役場にマコト達は連れて行かれた。
役場の隣には、武骨な建物が建っており、外国の水夫などの荒くれ者にも対処できるように結成された武官配下の警備隊の詰所であった。
役場では、あらかじめ文官から知らされていた内容とほぼ同じ内容の報告がなされたのだが、一点だけ追加事項があった。それは、
「海賊!?」
貿易港をまとめ上げる商会長からの報告だった。
「はい、外国の船がシーサイドで買い付けをする際に、以前は金属製品との等価交換などが行われていたのですが、最近は金属製品の需要が無くなって来ましたので外国船は買い付けの為の資金を積載するようになったのですが、その資金を狙い、シーサイド行きの船を襲う輩が現れたのです」
他の商会の関係者が、港に入った外国の貿易船から一緒に来ている筈の船が到着していないとの連絡が立て続けに入るようになった矢先に、一隻の船がボロボロになって入港して、海賊に襲われたことを通報したことから事態が発覚したと説明した。
ただでさえ、入港数の減りつつある外国船だ、海賊の暗躍はシーサイドの街の死活問題となる。
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