147話 新領地 10
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王城での用件を終えて、漸く城を出ることが出来た。
控え室で待機していた護衛の2人と合流し、送迎の馬車を待つ為に城の出入り口に向かっていると数人の貴族の姿が見えた。
貴族達はマコトの姿を見つけると、駆け寄って来た。
イヤな予感を覚えたマコトは、ハンドサインで護衛に前を歩くように指示した。
たかだか数十mの距離なのに、ハァハァと息を切らしながら駆け寄って来た貴族達は、マコトの顔を見るなり、
「ヒイラギ辺境伯、どうか家の息子を家臣に!!」
「イヤイヤ、当家の息子こそ辺境伯の期待に応えてみせます!!」
「辺境伯、どうか娘を行儀見習いに、器量良しできっと気に入りますぞ!」
宿でもあった領地を持たない法衣貴族達の子弟の売り込みだった。
断ることは簡単だったが、マコトもこれからは大貴族たる辺境伯である。
中央とのパイプは持っていて損はないだろう。
しかし、今までは一般的にドリンドル子爵と呼ばれ、親しい人からはヒイラギ子爵と呼ばれていたのが、新しい広大な領地と辺境伯位を得たことから、親しく無い人からもヒイラギの名を呼ばれるようになってしまった。
話しは戻るが、マコトは一定水準に達した貴族の子弟を幾らかは採用する気でいた。
目的はやはり中央とのコネ作りである。
そこで、後日に文官と武官の採用試験を行う旨を法衣貴族達に伝え、その場は強引に押し通り馬車に乗り込んだ。
宿に戻るとまだ出入り口付近には、子弟の売り込みに来た貴族達が彷徨いていた。
そこでまた、マコトは貴族達に後日採用試験を行う旨を伝えて解散させた。
宿に帰り着くと、マコトは既に採用が決まっている武官、文官を集めさせて、試験内容を検討させた。
そして、文官は基本的な地理、歴史、計算問題を、武官は教官との模擬試合と走り込みを、女官には、礼儀作法といった試験内容が大まかに決まった。
勿論、全員に面接試験と身辺調査があり、問題がある家の者は試験が合格でも、不採用となる。
以上の内容を王都の掲示板(情報の発信源として設置してあった)に告知して1週間後に身分を問わず行う旨書き添えた。
それからの1週間の間に、アレグリア侯爵にお願いして、城の練兵場を借り受けたり、空いている貴族の屋敷を試験会場として借りたり、試験問題を活版印刷機を作らせて、刷っていたところ、文官が驚愕して印刷機の量産と販売が決まった。
(マコトは何気無く作らせていたが、活版印刷は転移前の世界でも異世界でも大発明だった)
そして1週間後の試験日に1000人を想定して準備したマコトの予想を超えて3000人の受験希望者が集まった。
法衣貴族の子弟のみならず、読み書きの出来る商人等の子弟も参加して来たようだ。
文官に1000人、武官に1500人、女官に500人の受験希望者だ。
文官は試験の点数で大幅に削り、武官は走り込みで人数を絞り、女官は礼儀作法と面接で大幅に人数を減らした。
最終的に残ったのは、文官150人、武官200人、女官50人といった結果になった。
意外にも、文官と武官の半数近くを平民が占めて、女官はほぼ貴族という結果になった。
新しい領地をまとめ上げる為に、かき集めた人材は文官350人、武官300人
女官100人となった。
武官が異様に少なく感じるが、これは、文官と武官を1人ずつ組ませて、各村や街に派遣して、異常が無いかを調査させるのが、目的だ。
言うなれば、日本の警察の駐在所のようなシステムだ。
問題を早期に発見し、事態の悪化を防ぐことがこのシステムの良さで、日本の警察を真似てアジア地域で、交番、駐在所の導入を図った国もある。
武官には、軍団のように銃は支給しないが、無線機を貸与して連絡の迅速化を図るつもりでいる。
しかし、心構えや規格化された技術等を叩き込む為に1ヶ月間、軍団葬送曲の訓練に参加させて鍛え上げた。
余剰の人員は、旧アレフガルド王国北域の本拠地に集め、そこで、業務に当たらせるつもりだ。
人口のほとんどを占めるエルフ達と軋轢が生じないように、文官と女官も1ヶ月を葬送曲のエルフ達と交流を深めさせ、合わないようであるならば去るように伝えたが、辞退者は居なかった。
鉱山都市ドリンドルには約1000人の兵力を残し、元ハリマ帝国親衛隊を含めた約3000人と新たに募集した人材を引き連れて、マコトは旧アレフガルド王国
北域に向けて出発した。
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