14話 コダの森にて 3
ズドン!
「グギャ!!」
「目標、ハートショット。良い腕だ。」
胸を撃ち抜かれたゴブリンがスコープの中で倒れる。
「この狙撃銃?っていうのが凄いんだよ!弓矢とは大違い!!」
宿での一件から数日が経過していた。
もともと、弓矢での狙撃が得意だったエルフのアリシアなら、狙撃銃だろうと思って、創造の力を使い7・62mm狙撃銃(セミオートマチック式)通称19式狙撃銃を作り上げ、数日間かけて構造、操作方法等を教え込んだ。
分解整備、組み立てはまだまだだが、とにかく自分が使う物がどんな物なのか自覚を促す為に、常設依頼の討伐Eー2ゴブリン3体討伐につき5000円の依頼を受けてコダの森へと試射に来ていたのだ。
エルフの才能と言うべきか、600m程では、ほぼ百発百中で討伐証明部位を取りに行く方が大変で既に23体のゴブリンを狙撃していた。
アリシアに合わせてではないが、マコトも装備を一新していた。
主力は、アリシアと同じ7・62mm弾を使った自動小銃でこれも年が変わり2019年になったことから19式自動小銃と呼称していた。
調べて見ると、この世界にも四季が有り、1ケ月が30日程で12ケ月を1年としていたことから、前の世界を忘れない為にも、この命名の仕方は続ける気でいた。
当初は、自衛隊時代に使い慣れた64式自動小銃か、89式自動小銃にしようと考えたが、所持ポイントから計算すると創造した方が若干節約出来たので、今のところは装備品は創造した物でかためることにした。
話は戻るが、主力兵装を19式自動小銃にし、ゴブリンにも使った18式手榴弾を2個、18発装填できる9mm自動拳銃通称19式自動拳銃を採用したが、19式自動拳銃についてはアリシアにもサブウェポンとして持たせた。
アリシアの19式狙撃銃には12倍の倍率のスコープを取り付けたのみだが、マコトの19式自動小銃は3倍の倍率のスコープとフォアグリップを取り付け、近、中距離仕様としていた。
アリシアの狙撃銃の慣熟訓練が進み、キルスコアが50を超えそうになる頃それは、現れた。
ビッグボア、コダの森中層に現れるCランクの猪系のモンスターだ。
マコト達が訓練をしていたコダの森の浅い層にはまず現れないが時折、姿を現す迷惑なモンスターだ。Dランクのスタンプボアが年を重ねて進化したものと言われ、突進し、その硬いスタンプ状の鼻で相手を押し潰したり、掘り起こして獲物を取る雑食だが、その巨体から取れる肉や牙は高値で取引される。
幸い相手は、まだこちらに気付いていないようだった。アリシアとも相談し、コイツを今日の仕上げにする事にした。
風を読み、風下からビッグに近付いて行き300m近くまで近寄れた。
これ以上近付けば、音等からもバレることからこの距離で狙撃することにした。
チャンスは1回、ビッグボアが横を向いたら、こめかみを狙撃し、脳を破壊する。失敗すれば、19式自動小銃の出番だが、肉が痛み買い取り価格が下がる。
冒険者として、一撃で仕留めることがベストである。こんな芸当ができるのは、銃あってのことだが。
牛程もあるビッグボアは、埋まっている野生の芋のようなものを掘り起こそうと一心に穴を掘っていた。
いつしか、風も止み離れた場所にいるビッグボアの鼻息が聞こえてきそうな静けさの中で、突然、ビッグボアが穴に突っ込んでいた頭を出した。
そして、周囲の匂いを確かめるような仕草をし出した。気付かれたか?
しかし、何も捉えることが出来なかったのか、再び穴に頭を突っ込もうとした時、
ズドン!
今日何度目かの銃声が鳴り響いた。
そこには、穴に半分頭を突っ込んで動かないビッグボアがいた。
「マコトさん殺りましたよ!」
「ああ、そうだな。」
これが、数日前まで自分の力の無さを嘆き、仲間の死を悼んでいた少女なのか。マコトは自分の他人に与える力の強さに今更ながら驚いた。
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