13話 ドリンドルにて 7
冒険者ギルドを出ると、アリシアとの合流地点である金毛の山羊の蹄亭を探し始めた。
ギルドの斜め向かいだと聞いていたのだが。
見ると酒樽の上に黄色の毛を纏った山羊の頭蓋骨と足が、ドン!と置いてある宿がある。
悪趣味だが、分かりやすくはある。
宿に入るとすぐにアリシアの居場所は、分かった。
そこだけ、腫れ物に触れるように人気が無かったのだ。
アリシアは、自分ともう2人分の酒杯を前にしてワインを飲んでいた。
「ここ良いか?」
視界に入るようにして、空いてる席を指差した。
「遅かったじゃあ無い。逃げ出したかと思ったわよ。」
仕草で許可を得たものと判断して席に座りながら、エールを注文する。
「すまない。ギルマスから呼び出しを受けていた。」
「それって、私の事?」
「イヤ、ある意味これからの自分達に関する事、自分の武器についてだ。」
「凄かったわよね。ゴブリンを吹き飛ばしたり、まとめて凪ぎ払ったり。」
「アレを君にも今後使って貰おうと思っている。」
「良いの?!秘蔵のアーティファクトか何かじゃないの?」
「道具は所詮、道具だ。誰かが使わなければ意味は無い。」
「アイよ!エール一丁お待ち!!」
頼んでいたエールが届いた。軽めの夕食を頼むと女給に1000円銀貨のチップを渡し、カウンターで1人で飲んで居る男にエールを届けるように頼んだ。
「アイツは?」
「ギルドから付いて来ていた。ギルマスの手の者だろう。これで諦める筈だ。」
エールを一口飲むと、
「ここは耳目が有りすぎる。続きの話は部屋に戻ってからだ。まずは、亡くなった君の仲間達に献杯。」
「献杯。」
途中でエールからワインへと変え、アリシアの話をマコトはずっと聞き続けた死んだ剣士が孤児院で、どんなイタズラをしていただとか、亡くなった魔術師の少女はどんなに頑張り屋だったのか、ただひたすらに黙って話を聞いていた。
最後には、同じ事を繰り返し話出して泣きながら潰れた為、宿の女将に部屋を聞き、ベッドに連れて行き、マコトは椅子を引いて来て側で座って眠った。
「それで?尾行が、ばれて酒を奢られた挙げ句ノコノコ帰って来た訳だ。」
「ちゃんと、話には聞き耳立ててましたぜ。でも、少女の死んだ仲間の話ばかりで最後は少女が潰れちまって部屋に戻ってちまったんですからしょうがないでしょう」
「男は少女の話を聞くだけだったんだな?」
「ええ、良く聞いてられるなって思いましたぜ。」
「それは野郎の方が人間ができてたってことだよ。ご苦労さん上がってくれ。」
「へい、尾行は続けますか?」
「ばれているんじゃ同じだ。もう良い。」
「また、何か有りましたら、闇ギルドを宜しくお願いしやす。」
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