120話 アマゾニア戦争 5
金曜日は、全国的に気温が落ち着き猛暑日となった箇所が無かったのが、統計上1ヶ月ぶりだったそうです。自分も金曜日の夜は扇風機のみで寝ました。涼しい日々が続けば良いのですが。
「何をしてんだブタが・・・・・・」
マコトの呟きに武装した人族の集団が気色ばむ。
特に小柄で、人一倍太った小男が顔を真っ赤にしている。
「栄光あるゲシュタルト王国貴族のバルトマン子爵に向かってブタとは!!
貴様何者だ!!」
そんな小男に対して、
「嫌味のつもりでブタって言ったら、本当にブタだったよ」
マコトは何処吹く風とばかりに無視をした。
「キ~、貴様ら、エルフのメスどもは後回しだ、あの無礼者を痛め付けてやれ!!」
ブタ子爵の命令に従って男達が動き出そうとすると、
「マコト・フォン・ヒイラギ・ドリンドル・・・・」
マコトは小さく呟いた。
男達の動きが止まった。小男も顔を青ざめさせている。
「どうやら俺の名前位は知っていたようだな?」
「爆炎の魔術師・・・」
「殲滅魔・・・」
「王国の守護神・・・」
小男の周囲の男達が呟きながら、戦意を無くし武器を捨てていく。
「貴様ら、あの男がそうと決まった訳ではないのだぞ!!
武器を取れ!袋叩きにしろ!!」
言った本人が信じていないのは、明白で配下をけしかけながら逃げようとしている。
マコトは、19式自動拳銃の銃口を小男に向けると、
「おっと、逃げようとするなよ。武器を捨てたお前らもだ。
動くと部下の攻撃の餌食だぞ」
いつの間にか、マコトの部下のエルフ達は19式自動小銃を構え、男達に照準を合わせていた。
「わ、私が悪かったヒイラギ子爵、どうか矛を納めて貰いたい・・・」
小男が相変わらず青ざめた顔に汗だくになりながら、懇願する。
「それは無理だな。そら、来た」
馬蹄の音が近付いて来ると共に、武装した一団がやって来るのが見えてきた。
この都市の衛兵隊である、エルフと人族の混成部隊である。
「これは何の騒ぎか!?」
隊長らしきエルフが叫ぶ。
すると、エルフの姉妹が隊長らしきエルフに近付いて一言、二言話すと隊長は納得したらしく
「バルトマン子爵とその配下を拐かしの現行犯で、捕縛する!!」
と言い放った。
バルトマン子爵は抵抗を続け、
「エルフごときが、他国の貴族を捕縛できるものか!!」
と叫んでいたが、エルフの衛兵隊長が、
「私は、アレフガルド王国とゲシュタルト王国との盟約に基づき、伯爵以下までの貴族ならば捕縛できる!!」
と宣言したことにより、ガックリとうなだれて連行されて行った。
残されたエルフの姉妹は、マコトのところへとやって来ると、
「貴方があの爆炎の魔術師だったのね」
「実際に会うのは初めてだけど、私達もあの攻防戦に兵士で参加してたのよ」
「その魔法の筒で確信したわ、貴方が爆炎の魔術師だって」
と、次々とおしゃべりを始めた。
10分ほども話し続けていると流石に話題が尽きたらしく、本題に入って来た。
「「私達をこの遠征に参加させて欲しいの!!」」
聞けば、城塞都市ガルムに詰めていた彼女らの長女が、獣人との戦闘の際に行方知れずとなったらしい。
彼女らも相手が獣人とあって生存は諦めていた。だが、せめて一矢報いたいと願っていたが商業都市フォレスタまでは獣人の偵察部隊が来ることも無く、諦めかけていたところにゲシュタルト王国ら連合軍の侵攻の噂を耳にしたのだ。
そこで彼女ら姉妹は、商業都市フォレスタに立ち寄るであろう侵攻軍に参加させて貰い、獣人との戦争に挑もうとしたのだ。
その結果が、下心丸出しの好色貴族に絡まれるとは運が無かったらしい。
しかしそのおかげで、彼女らは探していた商業都市フォレスタに降伏を決意させた部隊、軍団葬送曲の指揮官マコトと出逢えたのだ。
彼女らはこの幸運を噛みしめながら従軍を申し出たがマコトの答えは、
「駄目だ」
の一言であった。
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