12話 ドリンドルにて 6
マコトがギルドのカウンターの前に立っていると受付嬢の1人がやって来て
「こちらへ、ギルドマスター室にご案内します」
と促して来た。
アリシアとの約束は時間指定こそしていないが、早目にギルマスの用件を済ましてしまいたかった。
「ギルドマスター、Fランク冒険者のマコト様です」
「うん、入ってもらって」
いっそ質素とも言える扉の前で、受付嬢とギルマスのやり取りが行われると受付嬢が扉を開けてマコトを中へと誘った。
「ようこそマコト君、ギルドマスター室へ!!」
ソコには書類の積まれた大きな机の椅子に腰掛けた先ほどの男が居た。
「すみませんギルドマスター、何の御用事で呼ばれたのか理解はしていますが、自分にも先約が有りますので」
「じゃあ単刀直入に聞くよ?マコト君、君は何者だい?」
マコトは緊張で強ばる。
「数日前にドリンドルに向かう森の道中で商人のアラドン氏の荷馬車に同乗して、その道中盗賊に襲われていたアレグリア侯爵のお姫様を助けて、本日このドリンドルの街に到着。昼頃に冒険者登録をした後に常設依頼を2件同時に受けている、しかも、1件は危険な討伐依頼だ」
そこで、ギルマスは一息付くと、
「そして、依頼の最中にゴブリンの群れに襲われているパーティーを無傷で救出し、2人の遺体の搬送も行っている。目撃者によればアイテムボックスではないかという事だ。そして先ほどの騒動、素行が悪いとはいえCランク2人を相手にして堂々とした立ち回り、そして謎の飛び道具。実を言えばアレグリア家からも探りを入れてくれと依頼が来ているんだよね。1人で盗賊を全滅させたそうじゃない、そりゃ知りたくもなるよ」
一気に話し終えると、「で?」っといった視線をマコトに向けて来た。
マコトもまさか、半日でここまで調べられるとは思っていなかった。しかし
「何者も何もただの田舎者ですよ。名前も無い小さな村のね。村がモンスターに襲われて無くなったので一旗上げようと街に出て来たんですよ、秘蔵のアーティファクトを持ってね」
と、今までしてきた説明を繰り返すにとどめた。
なるほど、とギルマスは頷いた。
「事実を語る気はないと?」
「事実も何も本当の事ですからね。実際のところギルドに何の不利益も与えて無いでしょう?何の不都合が有るんです?」
「あ一、それを言われると厳しいんだよね。アレグリア家からもあくまでも要請だし、君の不興を買う方がマイナスだしね。良いよ、今日のところは君の言い分を飲むことにしよう。だけど、真実を言いたくなったり困った時はギルドはいつでも君の味方だからね」
「そういえば、酒場の床に開けた穴はどうすれば良い?」
「床や壁に穴が開いたり、傷付いたりは日常茶飯事だからね。気にしないで良いよ」
「もう帰らせてもらって良いのか?」
「良いよ。あぁ、後、私の名前はモーラスと言うから、何か用事がある時はモーラスに用事があるって言えば良いよ」
「最後だから言うが、軽いなあんた。本性は違うんだろうが」
「何時も気を張ってたら疲れるし、相手も侮ってくれるんだよね」
「あんただけは敵に回したく無いよ」
「お互い様だよ」
「じゃあ後は宜しく、くれぐれも気付かれ無いようにね」
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