106話 論功行賞 7
「貴殿には子爵の地位と鉱山都市ドリンドルにその周辺の街1つ、村4つ、そして、コダの森の領地を授ける」
マコトはヘイマン国王のその言葉を聞いて、安心した。
全く知らない土地を領地として与えられるよりマシだからだ。
「有りがたく頂戴致します」
マコトは、頭を下げた。
「ウム、あの辺りはまだまだ開墾されていない森や土地が沢山有る、上手く領地運営が出来れば、将来的には辺境伯も夢では無いだろう」
ヘイマン国王が、そんな爆弾発言をする。
「陛下、何処の馬の骨とも知れない者にそのような地位と領地を与えて宜しいのですか?」
並び立つ文官の中から、そのような声が上がる。
文句が有るならその列の中から出て来て言えよな。
マコトは、そう思った。
「ならば、アレフガルド王国との戦、国内の盗賊討伐、火龍アラドーム討伐を成し遂げた英雄にどのような褒美を与えろと?
金銭に換算してそのような大金、度重なる動乱で国が荒れている中、捻出するのは無理だぞ」
このヘイマン国王の言葉に、反論する者はいなかった。
アレフガルド王国への出兵、大規模な盗賊の氾濫、火龍アラドームによる被害を受けた街や村の立て直し、ゲシュタルト王国の経済は火の車であった。
しかし、悪いことばかりでは無い。
アレフガルド王国からは賠償金と格安の薬草が入って来るようになったし、盗賊の氾濫では、捕縛した盗賊達を奴隷としてゲシュタルト王国が保有する鉱山の労働力とすることができたし、火龍アラドームの件ではゲシュタルト王国が、葬送曲の代わりに各国からアラドームに懸けられていた懸賞金を取り立てて、その手数料が国の宝物庫に入ることになっている。
今さえ乗りきれればゲシュタルト王国は更なる大国への道を突き進んで行くことだろう。
こうしてマコトは、マコト・フォン・ヒイラギ・ドリンドルという長い名前になり、ゲシュタルト王国の貴族の一員となった。
なっちゃったのである。
こうなるとゲシュタルト王国の法律上、マコトは直接、衛兵隊以上の武力を有することが出来なくなることから葬送曲はアリシアが司令官となり、それをマコトが雇用する形になる。
しかし、実態はマコトの私兵ということに変わりは無く、マコトは子爵ながらゲシュタルト王国有数の安定した戦力を有する貴族となった。
謁見の間での授爵の後は、王宮主催のパーティーである。
新しく貴族になったばかりで、潤沢な資金と戦力を持つマコトを自分達の派閥に引き入れようとして、多くの貴族がてぐすね引いて待ち構えていた。
しかし、パーティー用の簡素な服装に着替えて、パーティー会場に現れたマコトがエスコートしていたのは、王位継承権第3位を有するアレグリア侯爵家の長女ミナサリア・フォン・アレグリアだった。
たかだか新興の子爵家が、侯爵家の長女をエスコートできる筈も無くマコトが王家の後ろ楯を受けているのを示すのには十分だった。
実際には、なかなか領地を訪れてくれないマコトにミナサリアが腹を立てて、今回のパーティーのエスコート役を引き受けることで何とか許して貰ったという経緯があった。
パーティー中、ミナサリアは中々マコトから離れようとはせず、領地が安定し次第アレグリア侯爵領を訪れるように約束させられたのであった。
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