表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

ビブリス一泊

 スーパーマーケットで飲み物を買い、ホテルに戻りました。ホテルは平屋の可愛い感じのプチホテルです。入口のフロント兼レストランは地域の皆様のちょっとしたレストランにもなっているようです。


 さて、ドイツの部屋のドアの鍵なんですが。

 ドイツ滞在中、私と若先生は何度も悩まされました。

 日本の鍵とはなにか違うんです。

 日本なら鍵を鍵穴に差し込んで一回、回すとカチャリと簡単に開きますよね。

 ドイツは二回、回します。

 でも二回回したとしても、私と若先生はなかなかドアを開けられない。

 これが難しいんです。

 何度もドアの前でガチャガチャ四苦八苦を繰り返しては結局最後に『D先生〜』と泣きつきに行きました。申し訳ないです。

 コツがあるのですが。

 コツが最後までつかめませんでした。

 なぜあんなに難しい鍵なんでしょう。



 時は9月後半。ドイツはもう肌寒いです。

 部屋の窓の下にはセントラルヒーターがありましたが、まだつけずとも大丈夫な感じ。

 持ち帰りの機内食と水とジュースを飲んで一息ついてから、シャワーを浴びます。

 やっぱり当然のようにバスタブはありません。そして、当然のようにアメニティーグッズはゼロ。

 ドイツはエコの国であり部屋にアメニティーは無いと聞いていましたので石鹸、シャンプー類はサンプルを山程持ってきました。しかし、歯ブラシを忘れてしまった私。羽田前泊のホテルで部屋にある歯ブラシを持って来るつもりだったのですが忘れてしまいました。

 ああ、しまったなあ、明日どこかで買わなきゃと思いつつ。

 ガラス張りのシャワー室でシャワーを浴び、ああこれから2週間お風呂に浸かれないのはキツイなあ、などと思いながら身体を拭いたあと。


 待て。

 はた、と気がつきました。

 日本なら当然のように設置されている見慣れたアレが無いことに。


 ドライヤーが見当たらない。


 愕然としました。


 ドライヤーがねえ! (洗髪済み)


 しまったああああああああ!

 無いことが分かってたら洗わなかったのに!


 そういえば過去にドイツに行った先輩がドライヤーを日本から持っていったと話してたような。

 ドイツは部屋にドライヤーが設置されていないのか。

 おそるべしエコ大国!


 ちらりとシャワールームにも設置されているセントラルヒーターが目に入りましたが。

 いやいや、それでどうにもならんでしょう!


 どうしよう、このまま風邪ひいてしまう危険大! まだ研修も始まっていないのに、ドイツに着いて初っ端から冗談じゃありません。そんなこと勘弁です!


 一生懸命タオルで髪を拭き、タオルを二重にして頭に巻いたまま、毛布に包まり不安いっぱいで眠りました。


 次の日、目覚めましたが風邪をひいてる感じはしませんでした。

 ほ、良かった。とりあえず一安心。


 着替えて部屋を出て(この時部屋のドアを閉めるのにも四苦八苦)朝食バイキングのレストランに行くと、もう若先生は食べ終わるところでした。


「おはようございます。卵、料理してくれますよ」


 と、若先生。他のお客さんは居ないのか、もう出立したのかレストランには私たちだけ。


「スクランブルエッグ? って聞かれたので、お願いしたら目玉焼きが出てきたんですけど」


 目玉焼きはサニーなんとかじゃなかったでしたっけ?


 バイキングの棚を見ましたが、簡素でした。

 パン四種、バター、ジャム、ハム何種類、チーズ何種類、オレンジ。話に聞いてたとおりですね。

 飲み物は水、牛乳、コーヒー。


 とりあえず、全種類のハムとチーズとパンを皿に載せて戻ってきた私を見て


「ああ、先生、やる気ですね。朝から食べるんですね」


 と若先生。

 貧乏性なんです。こういうの、とりあえず全種類食べたくなるんです。


 ここで奥からホテルの従業員さんが来て聞いてくれました。


『スクランブルエッグ?』


 頷く私。


 ハムは白いハム、サラミのようなハム、そして緑の粒コショウが入ってるハム。

 うん、日本のハムより種類が多いなあ。あまりこういうハム朝に食べたことないなあ。イタリアン行った時のアンティパストのような感じ。


 チーズはクリームチーズ、穴の空いたチーズ、色の濃いチーズ……すみません、私あんまりチーズに詳しくないんです。

 一口、入れたチーズに私、少しびっくり。


「……結構、朝から濃いチーズ食べるんですね」

「そうですよね。僕もそう思いました。夜ワインと一緒に食べるような感じのチーズも朝から食べるんだなあ、て」


 クセのある臭い、うわあ、て感じのチーズでした。

 私、実はチーズあまり好きじゃありません。

 好きなのはモッツァレラチーズ。あっさりと味の薄い淡白なのが好きなんです。あとは、カッテージチーズ、クリームチーズぐらい。


 こんなもの朝から食べてたなら、さすがにああいう体臭になるのはしょうがないかあ。

 やっぱりドイツ人の体臭はチーズが元なんだな。


 そう思いながら、結構クセのあるチーズをモゴモゴ食べてると従業員の方が皿に卵料理を持って来てくれました。


「……目玉焼き、ですよね」

「目玉焼きなんですよね」


 ドイツは目玉焼き イコール スクランブルエッグなんでしょうか。


 しかも目玉焼きは揚げたかのようにまっ茶色で脂ギッシュ。見かけがちょっと……です。


「まあ日本ではない目玉焼きですけど、これもアリかな、と思いましたよ」


 若先生の言葉に口に入れますと。

 広がるバターの風味。コクがあります。うん、これはこれで美味しいですね! 見かけはちょっとですが。

 バターたっぷり使って焼いた卵(卵揚げの方が近いかも)なんですね。


 コーヒーを飲みながら、若先生とドライヤーの件について話しました。


「そうなんですよ、女性だと髪長いから大変ですよね! とりあえず僕はあの暖房具で」


 セントラルヒーターに頭を近づけて、あたかもドライヤーをかけているかのように髪を撫でる様子を再現してくれた若先生。


 いやそれ、私も一瞬、考えましたけれども!





 こんな感じでドイツ初のドイツらしい朝食を食べたのでした。












中庭にはレモンと洋梨が植わって居ました。

ああ、こっちって梨といえば洋梨なんだな、とぼんやり思いました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ