フランクフルトからビブリスへ2
『野菜も食べないね。ソーセージの付け合わせの野菜ぐらいかな。あとはキャベツのザワークラウト』
と、その日泊まるホテルがあるビブリスへと向かう列車の中でD先生が教えてくれました。
『野菜炒め、とかないんですか?』
と私。小学校の家庭科で作る基本メニューです。
『ない。存在しない』
『野菜の煮物は?』
(筑前煮とか油揚げと小松菜の煮浸し的なものを考えて聞きました)
『ない』
『鍋料理はないんですよね』
『シチューとかビーフシチューっぽいものになるかな』
なんて食生活。大変、こんな食事じゃ私、絶対に便秘になってしまう。
下剤持ってきてああ良かった!
なんぞと思ってたのですが、二週間私は便秘になりませんでした。
いつも快調な私ですが、いやむしろ普段より更に快調のような。
あれれ?
一週間目にその疑問を口にした私にD先生の答えは。
『ああ、それはね。水のせいだと思う』
硬水、のせいなんですね。日本の軟水と違う硬水効果。
ガス入りのペットボトルの水を飲んでましたが。そのせいか。
なるほど。
野菜なんぞ食べなくても、水のおかげで便秘にはならないし。
だから野菜食べなくても別にオッケーオッケー無問題なのね……って、違う!
あまりにも野菜食べなさ過ぎでしょ、これは。身体に悪過ぎる。
いきなり判明した食生活の違いに、私は戦きました。私、絶対にドイツでは生きていけないわ。
『野菜とか、アジアの食材が欲しいんだけど、売ってる場所が少ないしものすんごく高いんだよね。帰国した時に、ほんだしとか日本の調味料買い込むんだけどさ』
D先生のお言葉に。
私は持参したアヒージョとかスンドゥブなどの日本の調味料をプレゼントいたしました。すんごく喜んでもらえました。
日本の調味料がドイツ在住の日本人に一番喜ばれるお土産かもしれません。
『あとドイツはね。時短とエコの国だからさ。家事に時間を割かないんだよね。昔から、ドイツの朝食と夕食は冷たい食事って決まってて』
なんですか。その寒々しい言葉。
『朝はハムとチーズとパン。夕食はハムとチーズとパンとビール』
悲しい。
寒い国なのにあったかい料理が欲しくならないのかしら。
『冬なら日本なら鍋、ですけど。そういうのはしないんですか?』
(鍋を愛する私はしつこく二度目の質問)
『うん。ないかなあ。昔からそうだからね』
ドイツの方は昼食がメイン、なのですって。朝と夜は簡素で済まそう、ということですね。(言い方を変えると、家事に追われるお母さんにとても優しいお国)
ちなみにドイツの方の平均の食事時間について。
朝起床5時 朝食
朝休憩 朝食を食べていない人や物足りないときは、朝休憩のときに少しお弁当などを食べるそうです。(学生さんの場合)
お昼の二時 どっぷりメインの昼食を(外食とか)
夕食は帰宅して6時ぐらい?
だそうです。
学校や仕事は7時には始まるそうです。
皆さん、5時ぐらいに起きてごそごそ登校、出勤。
そして就業終了時間は学校が2時。
仕事は4時。なんですって。
小学生は2時に帰ってきて、昼食を家で食べるのだそうですよ。
日本は量も質も夜がメインですよね。
仕事から帰ってきて、熱い豚汁と白いご飯、最高じゃないですか。
湯気のたつ、フウフウしながら食べる食事はドイツではまあ、無いというわけですな。
うん私、絶対にドイツでは生きていけないわ。
反対に、気になった私はD先生のご主人様は日本料理がお好きかどうか聞いてみました。
『水分の多い料理はね、あんまり好きじゃないみたい。煮物も鍋もうどんもそばも』
『ラーメンはどうですか? 外国の人に人気ありそうだし』
若先生。
『それもダメみたい』
『日本のカレーライスはどうですか?』
と私。
世界に誇る日本のカレールー!
『うん、あんまり。焼きそばとか、お好み焼きとかたこ焼きは好きみたい』
その言葉を聞いて私は気付きました。
あれだ。
結局、ビールに合うか合わないか。
つまり、そういうことでしょう。
水分の多いメニューはビールを呑む勢いを妨げますからね。
ちなみに。
ご主人が好きな日本のビールの銘柄は何ですか? とD先生に尋ねてみますと。
『日本のビールは美味しいよね、って言ってたよ。好きなのはアサヒ、って言ってた』
だそうです。
これも、ドイツで滞在中、ビールを飲んでわかった気がしました。
ドイツのビールは様々な種類がありますが、日本のビールと比べると軽いんです。味が。
そして、アルコール度数も少なく、ガンガン飲める。
よく聞きますけど、ドイツ人にとってビールは水代わりだとか。
日本人がドイツに行った際、タクシーの運転手に「一番美味しいビールは何?」と尋ねたら。
「日本のビール」
という答えが返ってきたという話を聞いたことがありますが。
これはやっぱり運転手さんのリップサービスかな。