- 第三章 - 船の上
家々の白い壁が二つの月明かりに照らされ裏道も明るくなって居る
タンは、ゆっくり前に進むがどうも背後が気になって居る。
気にせずそのまま歩こうとしたその瞬間にタンに似た黒い影が目の前に立憚る。
この辺じゃあ少し名の知れたボス猫だった。
タンは現れた驚きと同時に、特殊な視力で見えて居るボス猫に疫病が纏わり付いているのにも驚いて居た。
喧嘩上等!といきたいところだが、
病気になっては家に帰れないし、
その後の怖さも知っている。
ボス猫はタンを威嚇し睨んでいる、
タンも本能で逆毛と尻尾を立てる
暫くの睨み合いが続く。
ボス猫は少しずつ前進する、
タンは威嚇には怖くは無いが疫病が恐ろしく後退りしなくてはいけなくなる。
タンは裏道は慣れっこだった、
斜め後ろに住人が貯蔵庫代わりに使って居る地下に通じる階段の扉を見つける、その扉は半分壊れていて鍵もかけられていない。
タンの体型ならすんなり通れる大きさだった、ボス猫は少しゴツくてタンより大きい。
逃げ道としては最適だ、取り敢えず逃げるように悟られずに後退りした右手と後脚を前に出す、そして‥
素早く方向転換して壊れた扉へ飛び込む。
一目散に逃げる逃げる、ただひたすらに。
ボス猫も追ってくる、予想通り飛び込もうとした扉に体が挟まる。
踠いて進もうとするが少しの時間稼ぎとなりタンは地下の通路を走る走る。
この貯蔵庫は、扉で仕切られていて数十メートルは続くのを知って居る。
途中には地上へ抜けられる窓もある、
今ならボス猫を巻いて逃げられると判断したタンは幾つかある窓から出られそうな所を選んで飛び割って出た。
出た場所は、家々が途切れて目の前が港に成っていた場所。
またタンは驚いた、港のあちらこちらに疫病に染まって居る。
疫病に汚染されていない場所を選んで早歩きする、ボス猫は手こずって居るのかもう追っては来ないが、もう後へは戻れない。
そのまま船着場まで歩く歩く‥
人が搭乗する前まで来てしまった。
疫病と逃げる道、少し悩んだタンだったが、船の上なら病気も無いと思い飛び乗った。
この船は漁船らしい、船底は食材の貯蔵庫と道具置き場になっている、ここに暫くの間は身を潜める事にした。