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幕間

  目覚ましの音が鳴り響く。

  時刻は午前6時。

  私は目覚めるとすぐに机へと向かった。




  机上にはいくつもの紙の束が積み重ねられている。そのどれもに、びっしりと黒鉛の文字が並べられていた。

  私はその中から真っ白な紙を取り出し、文字を連ね始めた。

  書くことは決まっている。

  戸田奈央子という女性についてだ。

  彼女の1日の行動から感情まで、事細かに、丁寧にその在り方を定めていく。

  紙は黒く染まっていく。

  やがて書くスペースが無くなると、紙を裏返す。さらにそのスペースが埋まれば、新たに紙を取り出す。

  一日の大半を、私はその作業に費やしていた。




  午後9時。

  私はようやく書く手を止めた。

  ふと、私はわたしが聞き連ねてきたものを読み返すことにした。

  同じ日を生きる彼女。

  どれだけ良いことが起きようとも、またどれだけ不幸にあおうとも、最後には等しく死が待っている。

  数えきれない程の終わりを繰り返してきた彼女は依然、その環の中に囚われている。

  そして未だその事実に気づいていない。


「そろそろ、変えるべきだろうか」


  私は宙を眺めながら、そう呟いた。

  彼女、いや私は先へ進まなければならない。

  しかし一歩間違えれば彼女の存在は唯の、実体のない幽霊とかわらないものとなる。

  これまで私は、幾千もの終わりと始まりを繰り返すことで“奈央子”という存在に形を与えてきた。

  だから、それらが無駄に終わるということだけはなんとしてでも避けたかった。

  すでに変化への布石は打っている。一手間を加えるだけで話は大きく動き出すだろう。

  今起こすべきか、それとも。


  一晩中、私は懊悩した。

 



  暁の光が窓から差し込む頃、彼は再び筆をとった。

  その書き出しは──。

 

 

 

 

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