一、彼の戦国記1
「んのあっ!」
落とし穴の下に叩きつけられたと思って踏ん張ったので変な声が出たのだが、意外と柔らかい物の上に落ちたらしく、ほとんど衝撃は無かった……というか全くない……
「……!?」
目を開けて周囲を確信したとたん、目が点になる。
なんだこれ?
目の前には見たこともない後景……情景と言ってもいいかもしれない……が広がっていた。明らかに日本人ではない、欧米的な、しかも大人たちが、こちらを向いて傅いている。……と、そこで初めて自分が段上の大きな椅子に座っているのに気付いた。
わけもわからず呆けていると、手前の左隅の男が立ち上がりこっちへ来た。
「ようこそアトラン帝国へ。まずは神祇の召喚と、この状況説明をさせていただきますので、こちらへ」
と言ってすたすたと歩き出す。
「へ?あ、ちょっと……」
俺も慌てて後を追う。頭の中ははてなでいっぱいである。……こいつ日本語しゃべってる!!とか。
階段を嫌になるほどのぼって(ただでさえピクニック帰りで疲れていたのに)、もう座りたい……と思ったところで、やっと目的地に着いたらしい。
「ここです」
といって通されたのは、学校の教室二つ分くらいある部屋だった。塔のてっぺん付近にある部屋なのに窓は一つもなく、燭も見当たらない、にもかかわらず部屋が明るいのは、部屋の真ん中に火の玉が浮かんでいるからだ。
って浮いてる!?
なんというホラー……
「あの炎に手をかざして下さい」
「はあ……」
とりあえず言われたように炎に近づく。とはいってもホラーチックな火の玉である、そう簡単に近づけるものではない。
と、躊躇していると、ここまで案内してきた男が近づいてきて、
「……失礼します」
「へ!?」
俺の背中を火の玉めがけてポンと押した。
「ええ!?」
俺は完全にバランスを崩して火の玉に倒れ込んだ。