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くもりのちはれ。  作者: Kiyomiya
6/6

処置日

 この日を迎えるまでの数日間、私の精神はかなりキていた。

 片目のど真ん中辺りが見えない恐怖。五年後には視力すら無くなるかもしれない恐怖。罹患していないもう片方の目もなるかもしれない恐怖。(なる可能性が高いと宣告されました)

 五年後には病気が両目に出てしまい、曇天の如き灰色の世界に染まってしまった視界のせいで、我が子の顔が見る事ができなくなってるかもしれない。生活もできるのだろうか。

 見えなくなった事を想像して、何度も両目を閉じて家の中を歩いてみたり、我が子の顔がわかるように、指の腹で何度も子どもたちの頬や眉や口や鼻や目のあたりに触れてみた。子どもたちが成長する姿を想像もしてみた。

 

 しかし、私は単純な性格をしていた。

 注射を受けるだけで、一時の苦痛を我慢するだけで、(薬が効けばだが)子どもたちの成長を見守る事が出来るのだと納得してしまった。

 そうすると、次に襲った恐怖は、薬が全く効かなかったら……? というものだ。しかし、これについては、神頼みしかないと神社に詣で身代わり守りなるものを分けてもらった。それだけで満足してしまった私はやはり単純だと思う。


 身代わり守りを鞄につめ、処置台に上った私を待ちうけていたのは、片目を閉じれないように器具で瞼を固定してからの消毒液での眼球洗いだった。

 洗うわけだから麻酔なんてできない。本当に目玉に大量の消毒液をブシュー! 最初はシャンプーが目に入った感じの「しみるわ~」な痛みだったけれど、それが続くので地獄だった。初めての経験にうめき声をあげていた私は、次第に痛みに耐えきれなくなったのか気持ちが悪くなり、段々と感覚がマヒしていき、うめき声すらあげれなくなってしまった。

 心配した看護師が血圧を測り、医師も消毒液を止めて声をかけてくれた。後に聞いたところ、血圧が180を超えてたそうだ。今まで洗浄だけでそこまで血圧が上がって中断した患者さんはいなかったらしい。

 どんだけビビりなんだよ私は……。

 意識は完全にあったから、頭の中でそんな反省をしながらなんとか返事をして、麻酔を点眼。

 この時にふと気がついたのだが、視界はすでに霞んでいた。医師の持つライトが不思議と眩しくなくなっていた。

 麻酔が効くまで暫し安静を保ち、医師とたわいもない会話をしながら待つこと数分でとうとう恐怖のアレがやってきた。

「今からこの注射を刺しますからね~。左上を見ててね」

「……ぅいっす」

 うわずった声で返事をし、「やるならやってくれ! 早く!」な心境で待ち構えると、厚手の風船に無理やり布団張りを刺したような感覚がやってきた。

 目玉が潰されるような感覚。

 思わず「ぐぇっ!」とカエルの断末魔ような声が出てしまった。

 やがてそんな感覚が無くなると、今度は薬剤が入ってくるのがわかった。それは黒い丸となってコロコロと目玉の中を転がっている。

(????? なんだこりゃ……)

 施術を終えて起きあがった私の視界には黒い玉が存在しており、顔を傾ければ傾けた方へとコロコロ転がってゆく。それは薬剤で、二、三日で吸収されて消えるとの説明を受けながら眼帯を付けて、本日の診療が終わった。

 

 因みに、注射治療でこの日に支払った金額は約七万円。

 目も痛いが、懐も痛くなった日だった。

 どうか再発はしないで欲しいと願いつつ帰宅して、眼帯をしている時には目を閉じてた方がいいのかどうかを聞くのを忘れ、ひたすら片目を閉じ続けて疲れ果ててしまった姿を見られて、旦那に笑われた清宮でした。  

 

再発した時に思い出せるようにとの事で用意したメモ書きのようなお話でした。お付き合いいただきましてありがとうございました。

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