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くもりのちはれ。  作者: Kiyomiya
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ビビり故にごねるんです。

 近所のクリニックからの紹介状を手にした私は、住まいから遠くも無く近くも無い大きな病院を訪れた。

 そこでは近所のクリニックでも行った検査と同じ事をしたが、瞳孔を開いた状態での更に細かい部分の検査をしてくれた。

 診察が終わるまではコンタクトをしてはいけないと言われ、コンタクト愛好家故に眼鏡を持っていない裸眼視力0.002の世界の住人である私は、色と大体の形しかわからない状態で、検査室から出る時もあちこち手を付きながらフラフラな状態。見兼ねた看護師さんが、即席の検査眼鏡を作ってくれて事なきを得た。

 検査用眼鏡を手に入れた私は、すぐに診察室に呼ばれることになった。この時にようやく主治医との初めての対面である。病院に訪れてから4時間程が経過していた。

 先生は挨拶もそこそこに、私の目の断面図をモニターで見ながら、視界不良の原因を教えてくれた。色々言ってくれたが、詳しくは覚えていない。端的に言えば、網膜が炎症を起こしていて、脆く新しい血管ができて、そこが出血して眼底部に水やら血液が溜まってこぶ状になっている、そのこぶが視界を遮っている、というような事だ。無治療で放置したら、5年後には最悪は視力が無くなる可能性が高い。

 治療は、網膜に薬剤を与えて炎症を治めて新しい血管(新生血管)が無くなるのを期待するしかないが、飲み薬では効かないから、直接網膜に薬剤を入れるしかない、と眼球模型に注射針を刺すような仕草をしながら言われた。

 いわゆる『眼球注射』である。

「全身麻酔ですか?」

 咄嗟に出た言葉が、注射時の意識の有無だった。

「いいえ。部分麻酔です。なに、心配はいりません。消毒を含めて三十分程度の時間で終わりますよ。針を刺すのはほんの十秒程度ですし」

 手早く済ませるから安心しろ、と言ってくれているのは理解したが、目玉に針が迫る恐怖に耐えきれるだろうか。私は自他共に認める怖がりだ。ビビりだ。毎年のインフルエンザの予防接種でさえ心臓バクバクなのだ。肩に針が迫るだけで泣けてくるのに、目玉に針が迫ってくるのが見えるだなんて恐ろしすぎる。

 目玉に針を刺すことを想像した私は、思いっきり拒否してしまった。

 怖かったのはもちろんだけれど、指定された日が一週間ちょい先だったからだ。いきなりすぎて心の準備ができない。

 医師もまさか、治療しなくて放っておくと視力が無くなる可能性があるのに、拒否られるとは思ってもいなかったのだろう。早い段階で治療を開始した方がいい、と何度も説得してくれた。

 けれど、私は決断できなかった。

 別室に連れて行かれた私は、看護師さんに何枚かの紙を貰った。それは、今回の病気に関する事が書かれているものと眼球注射同意書。

「急いで治療しないといけないから、医師が他の手術予定をずらして時間を作ってくれた。予約だけしておいて、当日になってもやりたくないと思うのなら、セカンドオピニオンを希望すると言ってくれればいい」

 とりあえず、指定された日程に予約を入れてもらい、迎えにきてくれた夫に半泣き状態になりながら病院での出来事を語りながら帰宅した。


 

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