プロローグ~相棒誕生~
西暦20××年。日本では、『インセクト・バトル・ゲイム・システム』。
一般通称『ムシカゴ』というゲームが空前のヒットを飛ばした。
ホログラムで構成された自分と相手の『ムシ』を戦わせるゲームだ・・・・。
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【・・・本社の製品である『IBGS』、通称『ムシカゴ』は、ホログラムによって生成された『ムシ』のデータを使用して戦います。
この製品を使用していただく点でいくつかご注意が・・・・
「(そんなものはいいや)」
『僕』はそう思うとその注意書きの書かれたページを読み飛ばしてしまった。
次のページにはこう書いてあった。
はした金の小遣いをほとんどはたいて購入したのだ。一刻も早くやりたい。
【本製品で生成されるムシは、お客様の思考回路、性格、その他の情報より、初期生成される『ムシ』の型が決定されます。】
【初期生成される『ムシ』は、以下の一覧より選ばれます。
○『カブト、クワガタ』 タイプ
○『ハチ』 タイプ
○『チョウ』 タイプ
○『バッタ』 タイプ
○『トンボ』 タイプ
これ以外にも、稀に『レアタイプ』というタイプに派生します。】
「(へえ、面白そうだな)」
男心をくすぐられる。特に『レアタイプ』というのは興味深い。
早速、デバイスを手に取り、先端の起動スイッチを押す。
ルービ○クキューブの様な形をしているな。
(ポン)
起動音らしき音とともに、僕の目の前に電子画面が表示された。
【このたびは『ムシカゴ』をお買い上げいただき有難うございます。
お名前をご入力ください。】
「『音羽 響』っと・・・。」
【個人情報をご入力ください。】
「20××年6月30日生まれ。14歳・・・・。」
表示されていく質問にあわせて次々と回答を打ち込んでいく。
電子パネル式入力もなれたものだ
(ポン)
【それでは、『ムシ』を生成します。
質問にあわせて回答していって下さい。】
「(キタコレッ)」
【あなたの性格を一言でいうなら?】
【好みの色は?】・・・・・・
随分と簡単な質問だな、と思いつつも、さっきと同じ、いや、早い速度で回答を打ち込む。
さあて、どんな『ムシ』ができるかな~。
(ポポン)
【『ムシ』を生成中・・・『ムシ』を生成中・・・。】
「よっしゃ、あとは待つだけだな。」
一からホログラムを生成しているためか、時間がかかるらしい。
その合間に月曜の宿題を片付ける。数学は敵だっ!!
~~~~~~~~~~20分後~~~~~~~~~~
【テレッテン!】
【『ムシ』の生成が完了しました。】
【ステータスを確認して下さい。】
「お、出来たか。」
軽快な音とともに生成完了のアナウンスが流れる。
デバイスに駆け寄り、電子画面を覗き込む。
《カブトムシ(ヤマトカブト)》
カブト・クワガタ タイプ
突撃力:55
甲殻力:55
回避力:20
「・・・・まあ、初期段階だとこんな感じだろうな。」
説明書によると、『ムシ』のパロメータは、200までで決定されるらしい。
戦闘を重ねる事によって、増加していくようだ。
初期段階にしては、カブトムシらしく、突撃と甲殻が高い。
しかし、カブトムシ(ヤマトカブト)とは、随分とありふれたものだ。自分だって飼ったことがある。
もうちょっとひねった奴を・・・
「うん?」
パロメーターの下に見慣れない文字が書いてある。
《特殊能力》
【底力:ピンチ時、全ての能力が底上げされる。
硬化:一定時間、甲殻が硬くなる。】
手元の説明書をめくってみる。
【特殊能力】
【『ムシ』に付属している能力です。
『ムシ』のタイプによって種類は様々です。
特殊能力にもレベルがあり、戦闘を重ねるごとに強化されます。
初期段階では、最大で2つの能力が付与されます。
※特殊能力《底力》はカブトムシ(ヤマトカブト)のみ付属します。】
ほう、これも面白いや。特に、このヤマトカブト限定付属のスキル、《底力》がついてる事も嬉しい。
かなり使えそうな能力だ。前言撤回。このままでいいです。
ステータスの確認も適当に終わらせて、まずは、ホログラムで姿を確認する。
・・・・・見慣れたカブトムシの姿が浮かび上がった。
僕が飼っていた個体よりも赤みがかかってかっこいいじゃないか。
こいつがこれから、ぬるぬる動いてくれるのかと思うと、ワクワクだ。
「うおっ!」
突如、デバイス全体が赤く光りだす。
どうやら、バッテリーが不足しているらしい。
『ムシ』の生成というかなりの作業を行なったためだろうか。
こんな事もあろうと思って、すでにアダプターは用意してある。
「接続完了っと。」
しっかりと、充電中の文字が表示された事を確認して、布団に入り込んだ。
すでに夜中の零時ちかい。
もっといじっていたいが、学業に支障が出るのはさけたい。
明日は早速バトルでもしてみっかな・・・・・。
僕は眼を瞑って眠りについたーーーーーーーーーーー。
図鑑:カブトムシ(ヤマトカブトムシ)
主人公・響君の『ムシ』。今も昔も皆の人気者。
一本角がカッコイイ。
北海道を除いた多くの範囲に生息する。