第八話
思わず教室を飛び出してしまったリゼルだったが、思い返せば少し大人気なかったとは思わなくもないが、このまま教室へと戻るのも癪だし、どうせなら学園内の探検でもしてやろう、自分のクラスへくらいならちゃんと覚えているから大丈夫…と、更なる不幸を呼び込もうとするリゼル。
各クラスを繋ぐ廊下を抜け、中庭にある大きな一本の木の下…そこにリゼルにとって、更なる不幸の元凶になるかもしれない者はいた。
この時リゼルが教室を飛び出していなければ…飛び出したとしても、中庭に近づかなければ回避出来たかもしれない不幸…
「…ひっく、だから…学園なんて、…ひっく、来たくなかった…のに」
「どうしたの?どこか痛いの?」
「ひゃっ!!」
一本の木の下、踞って泣いている一人の少女を見つけたリゼルは、純粋に心配して声を掛けたのだが、返ってきたのは怯えた小さな悲鳴だった。
その怯えた少女をリゼルは観察し『ふむ…』と内心頷く、少女の頭には立派な獣耳が伏せみがちではあるが自己主張をしている。
『こんな所に魔族が?いや、先祖帰りというものか…?』
とのリゼルの想像の通り、この少女の両親は普通の人間である。
ただ、人間以外は亜人と蔑み、人間が魔族を産んだなどと知れたら村八分では済まないこの世界…
そんな世界でこの少女が今まで生きてこれたということは、両親にちゃんと愛されて生きてきたからだろう。
もちろん、本人両親ともに、相当な苦労はしてきただろうが…
この出会いは、リゼルにとったら不幸ではあるが、少女にはかけがえのない出会いとなる。
「怖がらなくていいよ、どうかしたの?」
「…ほっといて、あなたも…魔族ってわたしを虐めるんだから」
「こんな所に魔族はいないよ、魔族領とだっってずいぶんと離れているし」
そう少女に問いかけるが返事はない、これまでの彼女の境遇が、他人を近付けさせない近付かない関わらない、それが自己の…そして両親への防衛手段となっているのだろう。
事実、彼女の両親は街を離れ、人里からだいぶん離れた場所を住居に選んだ。
なら何故彼女が此処にと疑問が出るであろうが、少女の歳になれば学校へと通うのは義務づけられている。
その際適性検査を受けるのも義務である、少女は…少女の才能は魔導学園へと通うのに十二分であったのだ。
「僕は、君の耳はかわいいと思うよ?」
「なっ!?何を…」
言っているの?
そう続けたかった少女だったが、それを遮る乱入者登場。
「ネコ耳!?ネコ耳がいいのね…そこのネコ耳少女!わたしにそのネコ耳を寄越しなさい!もしくは何処で買ったか教えなさい!そして、今日、今からあなたはネコ耳を着けることを禁止します!」
いろいろとダメな人、馬鹿勇者登場。