第五話
リゼル七歳…
この歳になると王立魔導学園への入園選定を、国内の子供達すべてが受けなければならない。
魔力の発現や、オリジナルスキルの発現がこの年頃になると終了しているからなのだが…
レンブランド改めリゼルは迷っていた。
子供としては有り余る魔力やスキルの隠蔽などは雑作もないことだが、それらを隠蔽して町の一般の学校へ行くか、多少の魔力とスキルの開放を行い王立魔導学園へ行くか…
「大丈夫、おねぃちゃんはリーくんが何処に行ってもついていくから」
「そんな心配これっぽっちもはしてませんよアオイさん」
「アオイじゃなくておねぃちゃんね」
「アオイさんは僕の姉ではないですよね?ならアオイさんで問題ないはずです。…それと、魔導学園へはついてこなくて大丈夫です」
「ずぇったいついていくから!」
本気でついてくるだろう少女勇者一ノ瀬葵はどうでもいい、問題は魔導学園へと入園するならば両親と離れ寮生活になるということ。
人間リゼルへと転生してから、リゼルはちゃんと人間の子供をしていた…演じていた…だけではない、ちゃんと両親に対する愛情は持っているし、地元の子供達ともちゃんと友達をしているのだ。
地元を離れるということは、親や友達と離ればなれになるということ。
リゼルは寂しいのだ。
だが…人間の扱う魔法やスキルにも興味はある。
魔導学園はエスカレーター式で、中途入園は許されてはいない…チャンスがあるのは今だけなのである。
両親や友達を取るか、自分の欲求を取るかで葛藤しているのだが、実は半分は答えは決まっていた。
『魔導学園へ行きたい』
魔導学園へ入園出来れば所謂エリートコースまっしぐらで、長期休みの帰郷に掛かる費用などは全て学園持ちである。
長く会えなくなることは寂しいが、一生離ればなれというわけでもない。
エリートコースに乗れば、両親にも先々楽をさせてあげられることもできる。
「魔導学園へいくのね!わかった、ちゃんと小細工するから!」
「心を読まないで下さい!あと、小細工ってなんですか!?」
「内緒、ウフッ」
この少女勇者さえいなければ、リゼルの決心はもっと早かったかもしれない