第四話
リゼルは五歳になっていた。
まだ子供なので世界情勢などは知りうることは叶わなかったが、父や母の少女勇者への態度から、ただの勇者への対応ではないことは感じていた…
というか、「何故この少女勇者は私達と一緒に暮らしているのか?」という疑問が一番大きかったかもしれない。
つまりリゼルは、四六時中監視されているようなものだ。
そんな過酷な環境の中でもリゼルはきちんと子供を演じ、少女勇者以外には『中の人』が元魔王であるとは誰も知らない……まぁ普通ならそんなことなど考えもしないだろうが。
また、リゼルは律儀な性分をしていたため、喩え人間だろうと自分を産み育ててくれた両親を裏切ることなど出来なかったのである。
さておき、今日も今日とて少女勇者はリゼルについて回る。
「ねぇ、いい加減ぼろだしなさいよレンブランド」
「ぼくはリゼルですよおねぃちゃん」
「おねぃちゃん…ちょっともっかいおねぃちゃんいただける?」
「?、おねぃちゃん?」
何故、そんなことを言わせるのだろうか……リゼルはただ子供らしく演じているだけなので、首を傾げながら魅了魔法「おねぃちゃん」を唱えると、少女勇者はモジモジしながら顔を赤く染め上げた。
『なにか間違っただろうか』と不安におもうリゼルだが、少女勇者は「おねぃちゃん悪くない…ショタっこも…悪くない」と、なにかを拗らせてしまっている。
「おねぃちゃん、ぼくはもうお風呂に入ってきますね」
「おっ…おねぃちゃんも一緒に入ってあげようか?」
「もう一人で入れるから」
「そこをなんとか!」
「どうせ一緒にはいるなら、お父さんかお母さんと入りますから…」
「血が…血がつながってないからいけないの?……そうだ!おねぃちゃんと結婚しよ、そしたらお風呂くらい一緒に入っても何も問題ないから!!」
「問題だらけです…」
当初の目的はどこへやら、少女勇者はショタを拗らせ、別のいみでリゼルを射止めるべく、これからも迷走するのであった。