第二話♪
人間へと転生してから一年、魔王レンブランド改めオリオール王国兵士、ダネン・ニクラとアイシャ・ニクラの子、リゼル・ニクラは非常に困っていた。
「ねぇ、貴方魔王よね?魔王の転生体よね?歴代最強魔王…レンブランドなんでしょ?」
「あー、だーうー」
赤子のふりをして誤魔化してはいるが、何故この少女は自分を魔王と決めつけているのか。
事実、そうではあるが魔族から人間への転生など聞いたことはない、人間は人間へ、魔族は魔族への転生が一般的…というよりは絶対である。
そう…神が決めたのだから、間違いが起こるはずなどないのだが、今彼にはその間違いが起こっている。
何より、転生したてでは以前の力は使えない、魔族人間に拘わらず『力』の発現は幼少期を過ぎてからだ、個人を判別など出来るものではない…のだが…
「ねぇ、あー、とかだーうー、とかじゃなくてちゃんと答えて欲しいの…じゃないとわたし、究極魔法メテオを放ってしまいそう…」
「だっ、だーうー」
『ダメだ!』リゼルはそう叫びたいのを必死で飲み込み、赤子のふりを続ける。
「ちっ!なかなか尻尾を出さないわね」
忌々しげにそう呟くと、少女勇者…一ノ瀬葵はリゼルの揺り籠から離れ、「でも諦めないわ」そんな捨て台詞を吐き捨ててニクラ家を後にする。
『何故…何故だ?人間への転生はもう諦めるとしても、あの勇者は何故私に固執するのか?』
『現魔王も倒されたとは聞かない、そもそも魔王討伐などが成されたならば、国をあげてのお祭り状態になっても不思議ではない、赤子である私の耳にも入るはず…』
リゼルの考える通り現魔王は健在であるし、人間対魔族の大きな争いは今のところない、あっても小競り合い程度でしかない。
ならば、何故勇者一ノ瀬葵がリゼルを元魔王レンブランドと断定しているのか、リゼルが知ることがあるのかは不明だが、一ノ瀬葵は神からの神託を授かる事が出来るスキルを所持している…
まぁ制限はあるが、おおよそ知りたいことは知ることが出来るのだ、魔王の魂の行方などは簡単に知ることが出来たであろう。
だが、当然リゼルが知るよしもないことであるため、長年リゼルを悩ませる事案となるのであった…