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異世界の吸血鬼殺し  作者: 配線トルーパー
異世界の吸血鬼殺し
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第一章 日本国立対魔学園(2)

何故、日本の国防軍の中に外国人のような名の者がいるのかから始まって、両界編制軍、アルワードが拾った小型の機械、そして異界など。


世界はこの半世紀で大きく変化していた。


夜明と涼火は日本国に住んでいた。もっと大きく見ると地球。さらにもっと大きく見ると宇宙。日本国等々の国々に加えて、月や太陽。それらが存在する世界に夜明らは住んでいた。


そんな今まで夜明らが生きていた世界とは全く違う、別の世界というものを人間は発見することになった。


その名は後進世界。パラレルワールドとは違う、アニメで出てきそうな魔界に近い存在の世界である。


なぜ後進世界と呼ばれるのかというと、夜明らが住んでいた世界よりも文明や技術が劣っているからである。従って、夜明らの住んでいた世界は先進世界と呼ばれている。


後進世界が先進世界よりも技術が劣っているということから分かるように、後進世界にも文明というものが存在している。人間が作った文明が異世界にも存在しているのである。


先進世界以外の世界にも人間が存在しており、文明を築き上げていた。全くどこかの映画のような話であるが、これは全て事実である。


先進世界の人間が後進世界を発見したのは、BWⅢ十八年のことだった。BWⅢというのは現在使用されている年号の一つで、Before World War Ⅲの略。従ってBWⅢ十八年とは、第三次世界大戦が終了した年から十八年前を意味している。


また、AWⅢという表記もあり、これは After World War Ⅲの略。つまり、第三次世界大戦が終了してからの年号となる。


日野孝義(ひのたかよし)という先進世界のオカルト研究者が、研究の際に後進世界を偶然発見したことから全てが始まった。


日野は歴史学者という立場で、とある大学の教授をしていた。だが、プライベートではオカルト、つまり宗教じみたものや魔術などを研究していた。


そんな時、日野は自分が住んでいる世界とは違う世界というものを発見した。詳しいことは明かされていないが、中国の古儀式について研究の最中だったという。


日野はそうして後進世界の発見後、そこへの移動方法を確立させた。初めは物を運んで開発していき、試行錯誤の結果、人間が使用しても安全なものが日野の手によって完成した。


そして、日野は後進世界の存在情報と移動方法を日本政府に高値で売りつけた。日野は自分だけがこの技術を独占するよりも、国益に繋げた方がいいと考えたのだ。


日本政府はその情報を日野から買い取り、後進世界についての権限を得ることになった。初めは時代錯誤な植民地の設立という案が出され、日本政府は後進世界について調査を開始し研究を進めた。


その調査の結果、後進世界が石油に代わる新しい燃料を多く存在させていることが判明した。また、後進世界で戦争が行われているということも、日本政府はその時に知ることになった。


エネルギー資源が多く存在していることが判明すると、日本政府はそれをきっかけとして、直ちに後進世界を統治していた王政に貿易を持ちかけた。先進世界では第三次世界大戦の予兆があった為、日本政府は安定的に供給されるエネルギー資源を欲していたのだ。


そして、日本政府は高い技術力をエサに貿易をうまく進めた。その為、異世界との戦闘ということもなく話は進んでいくこととなった。後進世界もまた、とある理由で高い技術力を欲していたのだ。


それから、日本政府は後進世界の王政と関係を築き上げていき今に至っている。これが異世界の正体であった。夜明らが向かっている日本国立対魔学園も、日本政府が後進世界と友好関係をより良くする為に作ったものである。


次に両界編制軍のことについてであるが、両界編制軍とはその名前から分かるように、先進世界と後進世界が共同で作った軍隊のことを示している。


その為、編制軍自体は日本軍の管轄下となっているが、アルワードやイルアなどの後進世界出身の人間も軍人として所属しているのだ。


そして今は、夜明と涼火も両界編制軍に所属する国防軍の一員である。詳しい立場を述べると、日本軍両界編制軍特別兵員。つまり正規の方法で軍に入隊したのではなく、特別な理由で入隊した兵員となっていた。


夜明が所属する両界編制軍がどこで活動するのかというと、両界編制軍というだけあって先進世界と後進世界に跨る。従って、その二つの世界を行き来する必要があることは言うまでもない。


異世界への移動方法についてであるが、それは日野孝義監修のもと段々と簡略化が進み、今では小型の機械がそれを実現してくれている。ただし制作は国防軍が独占し、制作方法などほとんどが最重要機密なために機械の中身はブラックボックスになっている。


その機械は両界転移装置といい、先進世界と後進世界を転移する為に必要不可欠なものとなっている。コンピュータに次ぐ、先進世界での人類の科学の最高傑作とも言われているほどである。


その両界転移装置には様々な種類がある。アルワードが持っていたものは小型である為、運べる量はおよそ人間十人分の質量までとなる。だが、貿易用の両界転移装置はかなり大きく、運べる量は大型タンカー一隻分にもなるのだ。


このように非常に便利な機械である両界転移装置であるが、先程も述べた通り管理は全て国防軍が行っている。その為、無断で使用することは出来ない。使用するには日本政府を始め、後進世界の王政府と両界編制軍の許可が必要となる。


ただし、装置を使用するのはほとんどが両界編制軍であるため、許可は王政府に取るだけで十分となっている。両界編制軍は国防軍管轄の為、国防軍を統率している日本政府にわざわざ許可を取る必要がないのだ。


そんな非常に有益である両界転移装置であるが、この機械も一般的に使われている機械と同じようにメリットとデメリットを持っている。


メリットは勿論、先進世界と後進世界、つまり両界を移動出来るということである。現時点で両界を転移する為の装置はこれだけしかなく、両界の関係を保ち続ける上では必要不可欠なものとなっている。


次にデメリットだが、デメリットは行って戻ると使えなくなることである。つまり両界を一往復するとエネルギー切れで装置は使えなくなってしまう。


簡単に考えても想像がつくように、両界を移動するには莫大なエネルギーが必要となる。その為、何往復もするだけのエネルギーを装置に積むことが出来ないのだ。


また、貿易専用の種類になってくると、運ぶ質量がかなり多くなるので、装置を大きくしても片道分しかエネルギーを積むことができない場合もある。


その場合は、装置を一度国防軍に返すことによって国防軍がエネルギーを充填する。だが、エネルギーの供給方法も国防軍だけしか知らない機密事項なため、個人が勝手にエネルギーを充填することはできない。


はたから見れば使い勝手の悪いように見えるこの装置だが、実はこのデメリットはある意味を持っていた。


もし、装置が車のように個人が勝手にエネルギーを充填することができる仕組みならば、装置が敵に渡った時に乱用されることを防ぐことができない。盗難車は犯人がガソリンを継ぎ足せばいくらでも走ることができる。


だが両界転移装置は、国防軍しか装置にエネルギーを充填することができない。その為、敵に装置が渡ったとしても乱用されることは防ぐことができる。


しかし、それでも許可を取らず両界を移動しようとする人間は少なからず出てきてしまっている。両界編制軍の備品を盗んで使用する人間がいるのだ。挙げ句の果てには、軍の中にもそのような人間が出てきている。


それの対抗策として、装置の保管体制を厳しくすることは勿論のこと、それに加えて両界転移監視体制という体制が両界には敷かれていた。


誰かが両界転移装置を盗み、それを使って異界へ転移する時、転移先が自由に選択できては犯人の確保に時間が掛かってしまう。そこで国防軍は、両界転移装置の転移先をある特定の場所だけに制限することを考えついたのである。


つまり、国防軍が両界転移装置を制作する際に転移できるポイントの座標を予め装置に覚えさせ、それ以外の場所には転移ができないようにした。その転移が出来る場所を転移可能ポイントという。転移可能ポイントは両界にそれぞれ二十五箇所ずつ設置され、そこは先進世界では国防軍が、後進世界では王軍が警備している。


これにより、もし誰かが装置を盗んで使用したとしても、転移先は必ず軍が警備しているので、転移したのが不審者だった場合にはすぐに身柄を確保できるようになった。


また、異界から「人間による」襲撃があるとするならば、敵は間違いなく転移可能ポイントから侵入してくることになる。その場合も、軍は対応が遅れずに済むというわけであった。


また、転移の際にはある特定の微弱な電波が到着地点で発せられることが分かっている。電波の発生理由は完全に解明されていないが、今のところ転移時の到着ポイントで空間の歪みが発生するからと考えられている。国防軍は先進世界で人工衛星を飛ばすことによって、その微弱な電波を感知している。そして、リアルタイムで世界中での転移の痕跡を監視していた。


後進世界では人工衛星を飛ばすことはできないのため、国防軍が地上に基地局を設置している。これは人工衛星ほど監視の目は届かないが、ある程度の土地をマークすることはできている。


この二種類の監視体制を両界転移監視体制と言い、異界からの不審者という脅威からそれぞれの世界を守っていた。さらに先進世界では、両界転移監視体制で情報漏洩も阻止している。


後進世界の存在は先進世界でも日本政府のみが知っていることで、これによって独占的に後進世界の王政と貿易ができている。だが、もし後進世界の存在が先進世界の他の国々に知られた場合、その貿易権を巡って再び世界戦争が起きる可能性は十分にあり得る話である。


それはなんとしても避けなければならないことであるため、日本政府は両界転移監視体制で後進世界についての情報漏洩を防いでいた。多少ブラックなこともしながらである。


このような複雑な事情が絡まりながらも夜明と涼火は後進世界にやって来て、日本国立対魔学園に向かっていた。全ては復讐の為にである。


複雑な世界事情など関係なく、夜明の頭の中はそのことしか考えていなかった。

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