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第70話 つかの間の平穏

( ゜Д゜)前回から2カ月経ってんじゃねえか!


どこから説明すればいいだろうか。


フランは研究所でトリアと共に兄と慕ったデュオを前にして何を言えばいいのか分からなかった。予期せぬ再開は嬉しさに溢れたものであるが心の準備が出来ず言葉に迷ってしまう。


「昨夜、嫌な風が吹いていたから気になって様子を見に行ったら2人に抱かれていたんだ。急いで家まで連れて帰って手当てしたんだが……、この辺はもう聞いているかな?」


「う、うん。ありがと……」


拘束具のような両目の眼帯。


まったく見えていないにも関わらずデュオはフランの顔を見て喋っている。おかげでその眼帯が痛々しいほどまでにフランに向かって自己主張している。自分が傷つけた相手のそれをマジマジと見ると言うのはさすがに厳しいものがあってフランはつい視線を背けてしまう。


「うん? ああ、これか。別に気にしなくていいさ。どうせ随分前の事だ」


「でもっ、あたしがやったことには違いないし……」


「何を言っている。奴に強引にやらされたんだろう? 気に病む必要はない」


それでも納得がいかない。


人から、それも大切な人から永遠に光を奪っておいて、平気でいられるわけがない。せっかく泣き止んだと思ったら再び目頭が熱くなり、涙腺が再び決壊しそうになる。


するとデュオがフランの頭を撫でた。その口元には微笑を湛えており、小さくため息をついている。


「また泣くのか? この泣き虫め」


「グスン、な、泣き虫じゃ、えぐ、ない……」


説得力皆無の言葉にもデュオは「分かった分かった」と言ってくれる。


ここにトリアもいたらどんなに良かったか、と思う。彼もまた他の兄弟姉妹の行方を気にしていた。デュオの事を知らせればきっと喜ぶだろう。


「エネア、いやフラン、お前が生きていてくれたことは本当に嬉しい。きっと母さんも喜んでいるだろうさ」


「お母、さん……っ!?」


その言葉にフランの記憶がフラッシュバックする。


あの優しい彼女が、かつてフランを本当の親から引き離し、果てには殺すよう指示した。その事を思い出した瞬間、別の涙がこぼれ出してきた。


「あたしは、あたしはっ……、何も、知らなかった……」


「それは、どういう意味だい?」












フランは思い出した記憶を事細やかに、何度も涙ぐみながらではあったがデュオに説明した。最後までデュオは黙ったまま、時々目を瞑りながら話を聞いてくれていた。


そしてフランが説明を終えて一度大きく息を吐くとそれに合わせたようにデュオは目を開いた。


「……フランは、信じているのか?」


「お母さんを? 分からない、分からないよ……。信じたいけど、あんな記憶、思い出した後じゃ……」


「……ちょっと待ってろ」


フランが頭を抱えて俯いたのを見てデュオは立ち上がると部屋を後にした。


隣の部屋にでも行ったのか壁越しに何かを探すような物音が聞こえ、しばらくすると小さな白い封筒を幾つか持って戻ってきた。封筒には裏に小さく数字が記されており、デュオはそのうちの一通をフランの膝の上に放ると残りを持って再び椅子に座った。


「これは……」


研究所あそこを逃げ出す時、母さんに渡されたものだ。あの時生きていた兄弟姉妹1人ひとりに宛てた手紙だ」


「逃げ出すって、どうやって逃げたの? あたしは母さんに外まで連れていかれたのに……」


「なあに、簡単な話だ。母さんは研究所を爆発させたんだ。地下に隠れてそれをやり過ごし、瓦礫を押しのけて脱出したわけだ。その後にこれを皆に渡そうと思っていたんだ。ところが、二次爆発やら騒ぎを聞きつけた奴らから逃げていくうちに皆はぐれて、渡せずじまいだったんだ。ようやく、1年越しの配達というわけだ」


開くよう促されて封筒の中から手紙を引っ張り出すと、三つ折りにされたそれを広げて書かれた文章に目を落とす。


それが彼女の字なのか、それすらも分からないが「エネアへ」という書き出しで始まる文章にはこう書かれていた。


『エネアへ。

 おそらくこの手紙がデュオの手から渡されている頃、残念ながら私はこの世にいないでしょう。でも、後悔はしてない。あなたたちに出会えたことは私の人生を根底から変えるきっかけにもなった。全てはあなたたちのおかげ。あなたたちのためにこの命を使う事が出来るのならば、躊躇いはない。私に出来る罪滅ぼしはこれくらいしかないのだけれど、受け取って欲しい。


今こうしている時間も惜しいくらいで、全てを書くことは出来ないけれど、知っておいてほしい事がある。生きてこの手紙を受け取っていたら、気を付けてほしい。あなたの近くにすでに危険が迫っているかもしれないから。


 あなたは他の子たちとは違う。あの研究所で長年の間行われていた研究の到達点、いわば完成品。あの研究所で私から指揮権がはく奪された後行われた全ての研究結果があなた。こう言われてもピンとこないかもしれないけれど、知っておいてほしい。故にあなたは研究所の存在を知る何者かに狙われる可能性もあるということを。出来ればあなたにだけは直接この手紙を渡したかったのだけれど、それをするだけの時間もなさそう。だから信頼できるデュオにこれを託した。


 エネア、どうか生き延びて自分の人生を歩んでほしい。何があっても挫けない心を持ってほしい。


 あなたから世界の半分を奪った私が言う資格はないけれど、幸せになって。


 私の愛しい娘…


                         アネシー・コーディア』


「アネシー・コーディア……、これがお母さんの名前……?」


「ああ、きっとそうだと思う。今となっては確認することも出来ないが」


短く綴られた手紙には自責の念がこれ以上なく滲み出していた。


紙は一部がふやけている。最後の方はもはや文字にするのも辛かったのか、涙でインクが滲み、読めなくなってしまっているのだ。


彼女、アネシーが書きながら涙を流している光景が頭の中に浮かび上がってくる。


「でも、この完成品って、どういう……」


「完成品、か。能無しと呼ばれたインペリティアの子供ばかりを集めて何をしようとしていたのか……」


腕を組んで大きく息を吐いたデュオは両目を覆う眼帯の下に指を少し入れて頬を掻いた。


(完成品、他の皆とは違うってこと……?)


今自分の持ち合わせの知識ではどうしようもない。


(でも、旦那様やメイド長なら何か知っているかもしれない)


フランの身の上を調査しているはずのクラウスやクレアであれば何か手がかりを持っている可能性はある。この話を一刻も早く伝える必要が出てきた。


「あたしの所なら、何か分かるかもしれない、けど……」


また襲われる可能性もある。


「……その傷はあの夜盗どものじゃないな?」


「…………」


癒えていない傷がまた疼きだす。


無言で小さく頷くとデュオは小さな小皿を手に取ると自分の指を強く噛んだ。


「何をっ」


指から血が流れ出したのを確認してデュオは指先から滴る血を皿で受け止めた。


デュオの突然の行為にフランは目を丸くして止めようとするが、皿に血が少し溜まるとその皿をデュオはフランに突きつけてきた。


「飲め。少しは傷の治りが早くなるはずだ」


「それって、どういう……」


「お前の体は衰弱しきっている。治癒を妨害する呪いのようなものが傷口から広がっているからだ。それを少しでも和らげるためには外部からフランの体を流れる血と同質のものを摂取するのが手っ取り早い」


有無を言わせず血の入った皿を手に握らせると、それを飲むよう促す。


恐る恐るそれを口に近づけると、一度唾を飲んで覚悟を決める。


(まさか、血を吸われることはあっても血を飲むことになるとは……)


指を切った時に咄嗟に指を口に入れる事は何度もあったからそう言う意味で血を飲むことは初めてではないが、皿におちょこ一杯ほど溜まった血を飲むのとはわけが違う。


意を決して血を飲み、喉の奥に流し込むと何とも言えない表情を自分がしてしまったのが自分でも分かってしまう。


「美味いとは思ってない」


「……何も言ってないよ」


図星なのでそう言い返すのがやっとだったが、それが可笑しかったのかデュオは笑みを浮かべ、それに釣られてフランも苦笑してしまう。


久々に笑った気がする。


どうも最近泣いてばかりな記憶があるフランにとって笑ったのは本当に久しぶりに感じられた。















デュオの血を飲んで効果が表れたのか、その日の夕方には体がだいぶ楽になっていた。傷の治りも心なしか早まったような気がする。常人ならば傷の治癒する速さなんて日を跨がなければ分からないほど遅いだろうが、フランの治癒能力は数時間で目に見えた違いを出すからその点分かりやすい。


ベッドでひたすら横になっていた事もプラスに働いたようだ。少なくとも屋敷にいたら仕事をしようとしていたに違いない。


その間、デュオはずっとフランの傍にいた。看病だけでなく話し相手も兼ねてくれていたため、フランも退屈せずに済んだ。農作業を任せっきりにしたことは多少気にしていたらしく時々窓から外を眺めていたが、ダンとルーノはまだまだ現役のようで窓から見えるその姿は力強さすら感じさせた。今の自分とは大違いだとフランは自嘲じみた笑みを浮かべてしまうほどだ。


のどかな話題もそこそこに、話はフランを襲ったゼーカに及んだ。


ゼーカの無事を知ったという安堵とゼーカがフランを殺そうとしたという事実に上半分を隠したデュオの表情は歪んだ。


「やはり、誰かがフランを追っているということか……。しかしどうやって場所を突き止めたんだ」


「それは分からないけど、もしどこにいても場所が知られてしまうのならここにも長居しないよ。ゼーカに勝てる自信はないけれど、皆がいればきっと……」


1人で勝てないのならば皆で相手をすればいい。


半ばやけくそにも近いが、今すぐフランが戦闘能力を倍増できる突拍子もない手段がない以上、そうするしかない。


「……そうか、一緒に戦ってくれる仲間が、いるんだな」


「仲間じゃないよ、家族、だよ」


「なら、なおさら良い事だ。頑張れよ」


ふと、デュオの言葉に違和感を感じたフランは顔を上げる。


「一緒に、来てくれないの?」


その言葉にデュオはすぐには答えない。


「もし、フランの言う通りどこにいても気づかれるなら、きっとここにも来るだろう。それなら2人を守らないと」


仕事を終え、庭先で農具を洗っているダンに窓越しに視線を向けながらデュオはそう言った。


「トリア兄さんも喜ぶよ?」


「トリアとはゆっくり話をしたいと思っていたが、今はまだその時じゃない。それに自分に出来る事はそれほどないだろうからな」


眼帯を指差しながらそう言われると、フランは何も言えなかった。


せっかく会えたのにすぐにまた別れなければならないのは寂しくてならないが、デュオの言う事も正論すぎて反対する事も出来ない。フランとてダンやルーノが自分のせいで事件に巻き込まれるような事があっては悔やんでも悔やみきれない。もしかしたら今こうしている間にもゼーカがここを目指しているかと思うと気が気でなくなってしまう。


「でも、もしあたしがここにいるのが原因で何かあったら……」


「安心しろ、お前に心配されるほど何も出来ないわけじゃないからな」


そう言いながらデュオが自分の手の平をフランに見せると、そこには何度も何度も破れたのか分厚く固くなった肉刺がたくさんあった。農具を扱っていたせいではない、毎日剣か何かを握っていたために出来る独特の肉刺だ。


「…………」


「納得してないな。なら、傷が治ったら一度お手並み拝見しようじゃないか」


ニヤリと笑うと、それが無性に対抗心を煽ってくる。


「いいよ、あたしも泣き虫なだけじゃないってところ、見せてあげるから」


「ああ、楽しみにしている」


「おーい、お二人さん、そろそろ夕飯にしよう。フランちゃんは体調どうだい?」


窓の外から部屋の中にダンが顔を入れると柔和な笑みを浮かべながら今さっき採ってきたと思われる土のついた芋を差し出してくる。


「父さん、洗ってから部屋に入れないと母さんが怒るよ」


ため息をつきながら土が散らないよう慎重に芋を受け取ったデュオはまだ繋がっている芋の1つを手に取って満足そうに頷く。


「いい出来だろう? 今年も豊作になりそうだ」


「天候にも恵まれたからだね」


こうして傍から見ていると、農家の親父と息子にしか見えない平和な光景だ。


どうやら芋を見せたかっただけらしいダンは芋をデュオから返してもらうと井戸から汲んだ水で他の野菜を洗っていたルーノの許へと戻っていく。その姿を見ながら、フランは1つ質問したい事が出来た。


「2人は、兄さんの事どれくらい……?」


「何も。何も知らない。いや、何も聞かないな。訳ありだと言う事を知りながらも息子のように可愛がってくれる。あんな人に出会えなかったら、今こうしてフランと話している事もなかったかもしれないな」


自分の境遇と似通っている気がして、無意識のうちにフランは頷いていた。


「こっちから話すのを待ってくれているみたいで、ありがたいよ」


心ある人であっても、純粋な人であっても時としてその優しさが逆に相手に対して辛い記憶を呼び起こすことにもなる。


だからこそ、たとえ気になっても自分から聞くような事はせず、何事も受け入れるような広く深い思慮が必要なのだ。ダンとルーノをファルケン家の人々と重ねながらフランはそんな事を考えてしまう。


「良い人だね……」


「ああ、欲しくてもやらん」















フランがひと時の再会に驚き、泣き、笑っている頃、ヘラの町にあるファルケン家の屋敷では王都からやってきた使者の知らせに屋敷全体の空気が凍り付いていた。


ファルケン家の当主であり、この国の大臣でもあるクラウス・ファルケンが王族のみが立ち入る事を許されている宝物庫の閲覧禁止書庫へ侵入したとして衛兵に拘束されたというのだ。


王族以外立ち入る事を許されないという言葉はそれ以上の意味を持ち、侵入した者が罪に問われる事は当然だが、その判断は全て国王に一任されているため、下手をすればその場で首を切られる事すらある。幸い、クラウスは大臣という上から数えた方が早い地位にあるが故に現在は王城の一室に軟禁され、国王の処断を待っているという状態らしい。


事が起こったのが3日前であり、今日ようやく使者がファルケン家にやって来て事の顛末を知らせてくれたという訳だ。


「私の責任だ。私があのような事を言わなければ……」


王族のみ閲覧できる書庫の存在をクラウスに教えたグラントは椅子に座って頭を抱えている。


「落ち着きなさいグラント、これはあなたの責任じゃないわ。私にも責任はある」


「しかし、このままでは旦那様は……」


その先は例え可能性の域にあっても言いたくはなかった。


それ以上言葉は続けず、グラントはどうしたらよいのか分からず判断を鈍らせている。


「父様……」


「レティア、泣くでない」


「泣いて、ないわよ……」


そうは言いつつ肩を震わせるレティアの肩を引き寄せ、テトはその背中をゆっくりと優しく撫でてやる。


フランがいなくなってからもなんとか気力と信念でここ数日平然を装いながら頑張っていたレティアであったが、父親であるクラウスが死んでしまうかもしれないという知らせを受けていよいよ精神的にも耐えられなくなってきているようだ。メリスやグラントであってもそれは同じで、自分たちの仕える主の身に起きた事態に何も出来ない、できなかった自責の念がある。


「……直談判、しかないわね……」


「なに……?」


小さく呟いたメリスの言葉にグラントが顔を上げる。


「こうなったら、王都に行って直談判するしかないって言っているのよ。旦那様が何をなさっていたのか、全てを話した上で裁可を仰ぐしか……。座して旦那様が処断されるのを見ているつもりはないわ」


「それはそうだが……、いや、考えていても仕方のないことか……」


「メリス、グラント?」


話についていけないレティアが目頭を赤くした顔で2人を見ている。


それに気が付いてグラントはレティアに近づくと一度大きく頭を下げた。


「お嬢様、旦那様の事は任せて下さい。お嬢様はフランが帰ってきた時のために、屋敷でお待ち下さい」


「……ええ、分かった。頼んだわよ」


グラントのその言葉からフランは決して合法的な解決策を行おうとしている訳ではない事を理解した。


たとえ法に触れるような事があってもクラウスを助け出す為に行動する、その決意を感じ取ったレティアは口元を引き締めてそう伝えるのがやっとだった。


「デックス、私たちの留守を任せるわ。何かあったら可能な限り、最大限の対応を取って頂戴」


その言葉にデックスは小さく頷く。


「お前たちも常に備えていてくれ。またいつあいつらが舞い戻って来るか分かったものじゃないからな。必要であれば学園にも助けを求めろ。お嬢様の身には指一本触れさせるな」


「もちろん」


トリアが胸を張って返事をする。


「う~、あたしには何かすることないの……?」


いざという時戦う事が出来ないクレアは何もできない歯がゆさに拳を握りしめていた。


メリスがそれを聞いて小さくため息をつくと、虚空に手を突っ込んで小さな箱を取り出しそれをクレアに手渡した。


「これ、救急箱……?」


「ええ、そうよ。あなたは戦えない。だから誰かが怪我をしたら手当てをしてあげて」


クレアは箱をしばらく見つめているとふと顔を上げ、力強く頷いた。


それを見てメリスは満足げに頷くと身を翻して居間の扉の所に立っていたグラントの方に向き直る。


「今からなら、馬車に間に合うかしら?」


「馬車では遅い。早馬を借りた方がいいな」


「そうね、そうして頂戴」


メリスの指示に頷くとグラントは先に外へ向かった。


そして居間にいたレティアたちの方に顔を向けると、メリスは笑みを浮かべた。


「皆、留守を頼んだわよ」

















 メリスとグラントを見送ったレティアの隣にテトがやってくる。その表情は何か言いたげだ。


「……どうしたのよ」


「なに、お主が大人しく屋敷でお留守番しているものかなぁと」


 その言葉にレティアは一瞬目を丸くし、すぐに不敵な笑みを浮かべた。


「……分かってるじゃない。あたしはフランを探しに行く。あの体だから、遠くには行ってないはず。それに、遠くに行くなら絶対人目につくはず。でも、あなたの鼻をあてにした方が正確かしら?」


「無論。フランの香りを忘れたことはない。必ず探し出して見せる」


「それを聞いて安心したわ。あのバカを意地でも連れ帰るわよ」


 その背後にクレアとデックスが現れる。留守を任されたはずなのに、二人とも荷支度を整えている。


「二人とも、その恰好……?」


「フランを迎えに行くんでしょ? なら一緒に行くよ。二人を止めるよりも、その方が良いと思うし。ね。デックス?」


 コクンと、デックスは小さく頷く。


「屋敷を頼むと言われたが、俺は屋敷ではなくお嬢様をお守りする事と解した。馬車を手配する」


「クレア、デックス……、二人とも、ありがとう」


 帰ってくる家を失っても、帰りを待ち望む人がいれば迎えられる。クレアとデックスもまた、レティアたちと同じ気持ちだった。メリスとグラントが「座して待っていられない」と王都へ駆けたのと同じように、残された四人も「座して待つ」つもりなど毛頭なかったのだ。


「凄いな、フランは本当に愛されているんだね」


 門のところまでメリスとグラントを見送りに行っていたトリアはわずかに目を潤ませている。血は繋がっていなくともトリアにとってフランは紛れもなく大切な家族だ。止められてでも探しに行く気でいたが、どうやらその必要はなかったようだ。


「大体の方角は分かる。手分けする必要もないじゃろうから、少し大きめの馬車を用意した方が良さそうじゃの」


「分かったよ。デックスさん、手伝います」


 ここに留守番組の意志は統一された。


 メリスとグラントが出発して数時間後、一台の馬車が慌ただしく屋敷の門を飛び出していった。

どうも、ハモニカです。

案の定、更新ペースが遅くなりましたね。計算通りです(ドヤァ)


さて、いろんな人から大切に想われるフラン。血のつながらぬ兄弟たち、家族と慕う人たち、彼女のためなら命を賭けることも辞さない方々に囲まれ、傷だらけながらもひと時の幸せを感じています。


けれど、過去にもあったように、そんな幸せな時間は長続きしないこともうすうす気が付いています。


「駄作者のベッタベタな構成で先が読めるだけです」


…何もキコエナーイ。


コホン、気を取り直しまして…。


冒頭でも述べたように、更新というか、執筆の時間がなかなか取れていないために更新が遅くなっております。引っ越しやら、就職やら、いろいろ忙しいものでして。


しばらくは様子を見つつ、この状態が長引きそうなら今回のように書き溜めていた分を小分けにして投稿しようと思っています。あとは、新作を投稿して時間稼ぎに逃げるかもしれませんね。


でもでも、完結済みの四文字を見るまで、私は走りますよ~。


ではでは、また次回お会いいたしましょう。誤字脱字報告、ご感想などなどお待ちしております。


最近はいつにもましてメンタルが大変なことになっているので、取り扱い注意ですけどネ!|д゜)ノシ


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