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第64話 襲撃の夜

「僕の本名?」


「うん、兄さんの名前」


フランの問いにキョトンとした表情を浮かべるトリアに、フランはもう一度質問する。


「あたしと違って、兄さんはちゃんと記憶を持ってる。なら、トリアじゃなくて、兄さんの本名を教えてほしいな、と思って」


もしかしたら、何かのきっかけでフラン自身の記憶が戻るかもしれない、そんな淡い期待も持ちながらの質問であったが、トリアはしばらく考え込む仕草を見せた後、静かに首を横に振った。


「すまない、思い出そうにも僕は自分の本名を聞いた覚えがないかもしれない。物心ついた頃にはあの施設でトリアと呼ばれていたからな。フランにしても、施設に来た時はこんなに小さかった」


数字の「3」が刻印された腕を持ち上げて赤ん坊を抱えるような仕草をしてみせるトリアにフランは驚きを隠せなかった。


つまり自分は、まだ赤ん坊の頃にあの施設にやって来ていたということだ。


「もしかしたら、名前を貰う前に親元から引き離されていたかもしれないな。今となっては調べようのないことだが」


「……それじゃあ、あの人は? あたしたちが母さんって呼んでいた、あの人の事」


「……ああ、覚えているよ」


「!!」


つい、体が前のめりになる。


それほどまでにフランは鼓動が高鳴っていた。トリアに出会えてよかったことは何より第一には家族に再会できたことだが、さらには他の家族の手がかりを知ることが出来るかもしれないということがある。


フランと違ってトリアはしっかりとした記憶を持っているのだから、何かしらの情報を得られる公算も大きい。


「と言っても、僕が正気を失う直前までの記憶だ。今どうしているとかは分からない。最後まで謝り続けていたよ、母さんは」


「……そう、なの……」


気分が高鳴っていた分、落胆も大きい。


しかし、それでもフランは諦める気は毛頭ない。1人で無理なら2人で、2人で無理なら皆で探すまでだ。


「兄さん、他の家族を見つけられると良いね」


「もちろんだ。見つけたら、皆ここで働かせてもらう事になるかもしれないが」


「そうなったら、グラントさんが喜ぶんじゃないかな。教育するの大好きだから、あの人」


「ああ、それは僕も思い知ったよ……」


グラントの教育熱心さに若干疲れの色が見えるトリアに、フランはつい苦笑してしまった。















警察はサナトスを取り逃がしたことで意気消沈していたようだが、その後別の町でサナトスが目撃されたという情報に息を吹き返し、何とか自分の町の警察を協力に行かせようと躍起になっている。当然、この町に派遣されていた兵士も帰還しており、町には以前の明るさが戻っていた。


後々聞かされた話だが、どうもサナトスの続報に関してはジョブが偽の情報を流していたらしく、「バレたら退職クビになるな、こりゃ」と笑いながら言っていたそうだ。まったく、あの男の考える事はよく分からない。


トリアはと言えば、1週間ほどで執事としての仕事のほとんどを覚えた。どうやらトリアにはフランのような記憶の難はないらしく、恙なく仕事内容を頭に入れて実践に移している。さすがに細かいところはまだ埋められていないようで時々メリスやグラントに小言を言われているが、それもあと1か月もすればなくなるだろう。


いつの間にか執事姿が板につき、それを見ているこっちもなんだか嬉しくなってしまう。


何しろ、フランがメイドとして働き始めた最初の1か月は覚えていても忘れたくなるような失態の数々で軽く給料が消し飛ぶほどだったそうだ。自分の体質で忘れたのか、意図的に忘れたのか定かではないが、家計を管理しているメリスが頭を抱えるほどだったというのだから相当なものだったのだろう。笑い話のように今もたまに話をされるのだが、とてもじゃないがこっちは笑えない。恐縮しきってしまう。


「あー、物凄く健康的な生活をしている……」


「何をおかしなことを言ってるの、兄さん……」


昼休憩で広間の椅子にもたれ掛るトリアにお盆を脇に挟んだフランがため息をつきながらそう呟く。


座った状態で腕のストレッチをすると、腕の関節がパキパキと音を立てる。


「いや、馬鹿な自分(サナトス)の不摂生のおかげで随分おかしな体になってたからな。朝昼晩、ちゃんと食べて睡眠をとり、適度な運動をするような生活なんぞ、多分初めてだ」


「……そっか、兄さんはあそこにいた頃から、あれだった、もんね……」


トリアの言葉に狂気に染まったトリアの姿が思い起こされる。


夢の断片的な情報では時系列がはっきりしない。最後に見た燃え盛る空を背景にしたあの瞬間まで、トリアが狂気に落ちた時からどれだけの日数、年月が経っているのか分からない。


どちらにしても、トリアにとってここでの生活は人生初の人間らしい生活、という事になるのだろうか。


「フランは昔の記憶があまりないんだったな。実際、どうなんだ、僕や兄さん、他の兄弟姉妹の事は覚えているのか?」


「断片的には、ね。だけどまだちょっと自分の事とは思えないような感覚もあるし……」


兄弟姉妹の顔も、夢に出てきた名前に関しては覚えている、いや、思い出したと言った方が適切か。


自分に対して行われた恐ろしい実験もある程度は思い出している。


「まあ、気長に思い出すしかないね。兄さんにそれを聞いても良いけど、聞くなら皆がいる時でもいいから」


「そうか……。皆と言えば、今日はお嬢のお父さん、クラウスさんが戻って来るんだったな、ようやく屋敷の主にお会いできるのか」


そう、今日は久々にクラウスが帰ってくる。


これはトリアが屋敷に住み込みで働き始めたという事をメリスが報告したところ、是非一度顔を見ておきたいと言われたそうで、夕方帰ってきて今日は一泊するとのことだ。病院でメリスからクラウスがやっている事を聞いたフランとしてはいろいろ思うところがあるが、それは今回聞くべきことではないだろう。


因みに、トリアはレティアの事を「お嬢」と呼んでいる。「お嬢様」と呼ぶのは気恥ずかしいらしい。その辺は年頃の男子といったところだろうか。頬をポリポリと掻きながら小声でボソッと「お嬢様」と呟いた時の顔と言ったら、見てるこっちが恥ずかしくなるほど真っ赤だった。いつもクールで冷静なトリアらしくない表情に抱腹絶倒したテトがトリアに尻尾を踏みつけられたのはご愛嬌だ。それ以来テトはトリアに近づく時は決して背中を見せなくなった。


「どんなお人なんだろうな。僕やフランを働かせてくれるのだから、きっとお優しい方なのだろう」


「ふふ、その通りだと思うよ」


自分の主人をそのように言われると、何故かフランも嬉しくなってしまった。















「不思議ねぇ」


「なんだ、藪から棒に」


広間でフランとトリアが何やら話し込んでいるようなのであえてそこに突っ込むような無粋な真似はせず、調理場で昼食を取っているとティーカップを手に持っていたメリスが面白そうにクスッと笑った。


「……言葉遣い、か」


「なんのことー?」


デックスは既に気が付いていたようでそう小さく呟く。


対してクレアは話の意味も分からないようでキョトンとしている。


「そう、フランは今まで誰にでも敬語だった。たとえ相手がテトであっても、ね。だけどトリアには違う。普通の、年相応の女の子らしい喋り方だわ」


「そりゃあ、気心知れた家族同然の存在なら、当然だろう」


グラントが新聞を丸めながらそう言うと、「分かってないわねぇ」とメリスが首を振る。


クレアが何とかして話題に入ろうとタイミングを見計らっているようだが、あいにくタイミングを得る間もなくメリスが口を開く。


「そうだとしたら、私たちってあの子に『家族』とみなして貰ってないのかしら?」


「それは……、仕事の上下関係とか、先輩後輩の関係、もちろん主従の関係があるからだろう?」


「そういう考え方もあるわね。そう教え込んだのは他でもない私たちでもあるし。でも、そうだとしたらトリアは初めてフランに出来た同世代の友達、という事になるわね。これがあの子に良い影響を与えると良いのだけれど」


メリスはドアの隙間から広間を覗く。


相変わらずフランとトリアが時々笑顔を交えながら会話をしている。傍から見ているとまるで恋人同士のようだ。レティアが見たら憤慨するだろうか、と思うとまた笑いがこみ上げてきそうになる。


(フランには年相応に遊ぶ時間も、普通の人なら必ず経験する大切な時間が欠けている。今のフランは酷く歪な土台の上に出来た、砂上の城だ。何をきっかけに「フラン・・・」が壊れるか……)


笑っている反面、そんな事を考えている自分もいる。


メリスにとってフランは大切な家族の1人だ。その彼女が奪われるようなことはメリス自身が断じて許しはしない。


今日、クラウスが帰ってくるのはただトリアに会いに来るだけではない。あの計画とやらに関わっているトリアに会うというのも重要なのは確かだが、それ以上に彼自身の目でフランの状態を確認したいという内々の知らせがあった。


それが意味するところをメリスはまだ理解しきれていないが、やはり調査で何か分かったのだろう。どうも最近は法に触れるか触れないかのグレーゾーンにまで手を広げているようで、いつクラウス自身が罪に問われるか分かったものではない。


「さてと、旦那様がお戻りになられるまでまだ時間はあるし、今のうちに残りの掃除を済ませましょう」


「うぇーい」


「……クレア、シャキッと、しなさい!」


「うぎゃあっ!」


調理場のテーブルに身を乗り出して怠そうな顔をしたクレアの背中を思い切り叩くと、クレアが悲鳴を上げてテーブルから跳ね上がった。


まったく、この子が本気を出す日はあるのだろうか……。
















「「「お帰りなさいませ、旦那様」」」


夕方、日が傾いてきた頃、屋敷の前に1台の馬車が止まり、クラウスが降りてくると玄関の前でお出迎えをする。


「元気そうだな、皆。……そして、君がトリア、かね?」


玄関の前で皆と同じようにクラウスをお出迎えしたトリアに気が付くとその前まで歩いて来て声をかけた。


その声にトリアが顔を上げ、そしてもう一度お辞儀をしながら挨拶をする。


「は、初めまして、トリアと申します。若輩者ではありますが、ファルケン家でお世話になる事になりました。よろしくお願いします!」


腰から直角に体を曲げ、最大限のお辞儀をするとクラウスが面白そうに苦笑する。


顔を上げるように言いながらトリアの肩を叩くと、笑顔でトリアに言葉をかける。


「随分真面目なようだな。手紙で仕事っぷりをメリスから聞いているが、フランの時とは大違いだそうだな」


「うぐ、だ、旦那様、それを言われると返す言葉もありません……」


「はは、冗談だよ、フラン」


胸にグサッと短剣を突き立てられた気分になり、引きつった表情でそう言うが、クラウスは笑ってそう返してきた。


クラウスと共に全員で屋敷の中に戻ると、いつの間にか広間の方から香ばしい匂いが漂ってきていた。どうやらデックスが王都から戻ったクラウスのために早めの夕食をすでに広間に運び始めていたようだ。


匂いでそれに気が付いたようでメリスがクレアとトリアに声をかける。2人ともその声に反応してクラウスを追い抜くと調理場に向かっていく。細かい事を言わなくても、既にトリアは自分が執事として何をすべきかをすでに心得ている。


「ふむ、働き始めて1か月だが良いじゃないか。教育者が良いのかな」


「ありがとうございます、旦那様」


ペコリと頭を下げるグラントも満足げだ。


「それはそうとフラン、彼はお前の兄なのだろう? どうだ、久々に会った感想は」


クラウスがフランの隣にやって来ると微笑を湛えながらそう訊ねてくる。


どう答えたものか悩んでしまうが、一言でそれを現すならもちろん……。


「嬉しい、です」


「そうか、それは良かったな」


フランの言葉にクラウスが満足げに頷く。


広間までやって来るとすでに料理がテーブルにほぼ並べられていた。あとは個別の皿を並べるだけのようだ。フランもクラウスに一度頭を下げて配膳の仕事に戻る事にする。


「そういえば、レティアはどうした」


「お嬢様なら、多分テトと遊んでいます」


「テト……、あの猫か。まったく、この屋敷には曰く付き・・・・を吸い寄せる力があるのかな」


「旦那様、それはどういう事でしょうか?」


「おっと……」


冗談めかしてそう呟いたクラウスにメリスが結構いい・・笑顔でそう訊ねる。


クラウスが慌てて笑って誤魔化しているが、メリスの笑みに若干汗をかいているように思える。こうして見るとファルケン家の力関係がなんとなく理解できてしまうのだが、それを口に出すと確実に「アウト」なので今の会話は聞こえなかった事にする。


「それじゃ、フラン、レティアとテトを呼んできてくれ。皆集まったら夕食にしよう」


「はい、分かりました」















「長い事眠っていた計画のようだ、『ゲンドリル・ヴェラチュール計画』、先代の国王陛下が計画の実行を命令し、オーウェン陛下が王位についてしばらくして永久停止、封印、資料の抹消が行われた、ということは分かった」


メリスの部屋。


この件について話し合うのはこれで何回目だろうか。


いつものようにクラウス、メリス、グラントとデックスの4人で手元にある資料とにらめっこをしながらクラウスの話に耳を傾ける。


「この計画自体は先王の時代を考えれば別段問題はないものだ、内容はともかくとして、だが。不死身の兵士を作り上げるために、魔法薬によるドーピング、瞬発的な魔力の増大、エトセトラ……。まだ隣の国ともいがみ合っていたのだから、それくらいどこかで考えていても当然だ。とはいえ、ここまで調べ上げるのですら1年以上かかったのだ、裏があると見て間違いない。あのドランク校長ですら、口を噤まねばならないほどの、な」


「……けれど、どうしてそこにフランやトリアのような魔法の使えない子供たちが必要に……」


資料を読んでも子供が出てくるような実験は一切出てこない。


裏があったとしても、今までに調べ上げた資料と今回の資料を足してもまったく分からない。


「そんな薬品を使うなら免疫も体力も低い子供を使うより、より鍛え上げられた兵士を使うべきだと思うがね」


グラントの言葉にクラウスも頷く。


そのような実験ならば、何もわざわざ魔法の使えない子供を拉致して被験者にする必要性はないはずだ。この計画を資料通りに読み取ればそうなる。


「……その計画に携わった者は?」


デックスが資料をぺらぺらと捲りながら、探している情報が見当たらないのか言葉に出してクラウスに質問するとクラウスは肩を落としながら首を横に振った。


「分からん、それに関しても今の段階では一切情報が手に入らないのでな。例の研究施設の爆発でほぼ全員死亡しているとも考えられる。もはや手が付けられるところは全て見終ってしまった。手詰まりとはまさにこのことだ……」


小さくため息をつくクラウス。


誰一人としてそれを責める者はいない。クラウスでなければ、ここまですらたどり着くことは出来なかっただろう。


「…………宝物庫」


「うん?」


ボソッと呟かれたグラントの言葉に3人の視線が彼に集まる。


「王都の地下には王家の財産が保管されている宝物庫があります。確かあそこには王族にしか閲覧を許されていない書物も保管されていると、以前聞いたことがあります」


「宝物庫か……、宝のある場所に本はないと高を括っていたから、これは盲点だったかもしれん……」


だが、1つ問題がある。


「王族以外閲覧禁止、これが意味するのは……」


「見た者はいかなる理由でも死刑、裁判無し、国王の権限でその場で首を刎ねられる可能性すらあるわ」


「まあ、私なら辞世の句を読み上げる時間くらいは貰えるかもな」


「笑い事じゃありませんよ、旦那様」


唯一の可能性が残された場所はよりにもよって失敗イコール死を意味するような場所になってしまった。


「宝物庫に入る事自体は手続きを踏めば問題なかろう、何度か入ってはいるからな。問題は宝物庫の衛兵の目を盗んで求める物を見つけられるか、だ」















「フラン~、寒いのじゃ~、暖めてたも~」


「服を着てください、服を。そして大人しく寝なさい」


「う~、我慢できんのじゃ~、……こうなったらお主の兄で渇きを潤すしか……」


「何をふざけた事を言ってるんですか!」


妖しい笑みを浮かべながら部屋を出ていこうとするテトの尻尾を遠慮なしに掴むと思い切り引っ張る。


テトはそれも織り込み済みだったのかほとんど抵抗せず体を翻すとフランに抱き付いてくる。


「むおー、フラんべらっ!?」


そしてその頬にアフェシアスの銃口をめり込ませる。


「そうするであろうことは分かっていました」


「むがー、ランー」


掴んでいる尻尾も手に巻きついてくる。


気のせいではなくトリアが屋敷に来てからテトの甘え具合が悪化している。


まったく訳が分からないといった感じのフランは銃口をテトの方に押し付けながら小さくため息をつく。


(はあ、あたしが何をしたと……)


まるで親に甘える大きな子供のようだ。


慕ってくれるのは嬉しいのだが、さすがにこうも寝る時にべったりくっ付かれると暑苦しくて寝る事も出来ない。一体何度目かも忘れるほどの回数同じ押し問答を繰り返したのだが、その結果分かったのはその程度でテトが諦めるわけがないということくらいだ。


「ほら、テト、いい加減――――――」















「やあエネア姉さん、元気そうじゃないか」















全身の神経が泡立つ。


テトの頬に押し付けていたアフェシアスを瞬時に窓の外に向け、窓の外を凝視する。


「フ、フラン……?」


テトも気が付いていない。


あれほどはっきりした空耳などあるはずもなく、全神経を尖らせてわずかな違和感も見逃すまいと全周囲を警戒する。部屋の中にフランとテト以外に人影はなく、いるとすれば窓の外。


窓に慎重ににじり寄り、そっと窓から外を見渡そうとした瞬間、何かが風を裂く音が聞こえてくる。


「テト、伏せて!!」


そう言うのと、自分自身が伏せるのはほぼ同時だった。


次の瞬間、物凄い衝撃が頭上で起こり、ガラスが割れ、壁が砕ける轟音が響き渡る。頭の上から瓦礫が降り注ぐのを腕で防ぐが、大きな瓦礫が身体中に降り注いで服と一緒にフランの肌を裂く。


「フラン、無事かの!?」


部屋の奥からテトの声が瓦礫の崩れ去る音に紛れて聞こえてくるが、そんなものに耳を貸している余裕がないほど今のフランの心臓は早鐘を打っていた。


ゆっくりと起き上がり、先ほどまで窓があった壁が崩れ去り、外が見渡せるようになってしまった部屋から外を見据える。


屋敷の門。その上に人影が見える。


「久しぶりだね、姉さん。どうした、そんなに顔を強張らせて。懐かしい弟の顔がそんなに怖いのか?」


人影がケタケタと笑い声を上げる。


記憶のフラッシュバック、忘れかけていた夢の内容が瞬時に蘇ってくる。


手にはノコギリのような武器を持ち、その髪の毛は月明かりに照らされて白く輝いている。


屋敷の中が慌ただしくなってきた。おそらくクラウスたちが騒ぎに気が付いたのだろう。レティアはクラウスと一緒に今晩は寝ると言っていたからとりあえず大丈夫なはずだ。メリスやグラントならまず真っ先に2人の所に向かい、安全を確認するだろう。


「あなたは……」


「あれ、もしかして覚えてないか? 記憶喪失って本当だったのか? それじゃ自己紹介しようか」


言わなくてもいい。


思い出してしまったから。


言われる事で絶望のただ中に叩き落とされるだけだから。


言わないで。















「俺の名前はゼーカ、あんたの可愛い弟だよ」


月夜に姿を現したその顔は、口角を吊り上げた狂人のそれのようだった。

クレア「今日は台詞が3つくらいあって嬉しかったよ!(涙)」


……まあ、報われる日もそのうち来ると思いますよ、多分、おそらく、そうであるといいと願っていてください。


はい、そういうわけで1か月ぶりですかね、ハモニカです。こんな駄作者にお付き合いしてくださっている方々、お久しぶりです。


学年末考査、次回投稿予定65話の書き直し、その他諸々が重なりだいぶ間が開いてしまいました。


とりあえず落ち着いてきているのでボチボチ再開させていきたいと思います。とはいえ、休み期間中は不定期更新(良い方に転がるか悪い方に転がるかは分かりませんが)になりそうなので、ご容赦を。


ところで、実は今回出てきた単語「ゲンドリ(ry」計画なんですけど、もともとの意味を忘れるという事態に陥っていますwいや、適当にインターネットの翻訳機能でそれっぽい意味を日本語でいれて設定にしたはずなんですけど、日本語の意味をメモしておくのを忘れていたのですww


まあ、影響はないとおもうんですけど、我ながら馬鹿な事をしたなぁと。多分読み方微妙に変えているから元の単語も分からないかも…w


ま、そんな感じで花粉症に怯えながら過ごしています。


では、また次回。


誤字脱字報告、ご感想などお待ちしております。



△▽△▽△▽△▽△▽△



追伸


先日はバレンタインデーでしたね。それ用の絵を描いてみたので奇特な方はみてみんを覗いてみてもいいかも…。(宣伝乙)

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