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第53話 業火ノ剣


思ったんですけど、試合中の風景を想像するときは絶対に風船をつけちゃだめですよ? 絶対割れるだろwってことしてるんですからww


では、どうぞ。



「先手必勝、行くわよ!」


試合開始と同時にレティアが火球を作り出すと空高く投擲する。


放り投げられた火球は弧を描いてレイナたちの頭上まで行き、空中で爆ぜると無数の散弾のようになって2人に降り注ぐ。


レイナは身構える事すらせず右手を持ち上げると人差し指を天に向ける。指の先端から炎の小さな灯が見えたと思った次の瞬間には、レイナとミコトを包むように炎の傘が生み出され、降り注ぐ火球を防いでいく。


結果が予想出来ていたようでレティアは表情を崩さなかったが、それでも先ほどまでのお話モードから完全に切り替わった表情は若干悔しそうに歪んでいる。


「お互いに炎、小出しの魔法じゃいつまで経っても決着はつかない、それくらいはレティも分かってるでしょう?」


「……だからといって、あなたの作戦・・に馬鹿正直に乗る気はないわ」


真正面からの撃ちあいとなれば、ミコトの支援を受けられるレイナに分がある。


それはさすがに少々分の悪い賭けだ。できればそれをせずに勝負を決めたいところだが、レイナの言う通り、小出しの魔法ではステージを抉る程度の効果しかない。


「僕を忘れてもらっては困りますよ」


ミコトの声が聞こえたと思った次の瞬間には、巨大な火の壁がフランとレティアの逃げ場を奪うかのように左右に広がる。炎で出来た絶壁が猛烈な熱波を放ち、フランはほとんど動いていないにも関わらずどっと汗をかく。


結界があるおかげで熱まで籠っているのか、ステージ上は早くも炎天下の砂漠を思わせる気温になっている。


「そら、避けられるものなら避けてみなさい!」


両サイドを炎に囲まれた状態でその炎の壁の突き当りにレイナが姿を現し、炎の奔流を生み出す。


「ちょっ、初っ端からクライマックスすぎるわよ!」


「お嬢様、一応決勝戦クライマックスです」


「そういう問題じゃないわ!」


レティアはそんな事を叫びながら手の平を炎の奔流に向けると、自分の目の前にミコトと同系統の炎壁を作り出す。


「時間稼ぎにしかならないわ。この壁抜けるわよ!」


「分かりました! 風船が割れないようお気をつけて!」


フランは即座にアフェシアスの銃口をミコトの作り出した炎壁のために燃えているステージの床に向けるとすかさず発砲する。


床が砕け散って一瞬燃やすものを失った炎の壁にわずかな空白が生まれると、フランはレティアと共に素早くそこを潜り抜けて炎壁から脱出する。


しかし、脱出したその先には先ほどまで遠くにいたはずのレイナが目の前で自分の身長ほどもある火球を頭の上に浮かばせて待ち構えていた。


「いらっしゃいませー!」


「なっ!?」


レティアが驚いて足を止めたのを見計らってレイナが火球を思い切り投げつける。


フランはレティアを押しのけて前に出るとアフェシアスの引き金を一度引いて魔力刃を作り出すとそのまま火球を斬り捨てる。一瞬真っ二つになった火球が次の瞬間にはわずかに膨張、そして大爆発を起こす。


「うわっ!?」


これには斬った本人であるフランも驚き、爆風を利用して後方に飛び退きつつもウィッグに燃え移った炎を慌てて手で叩いて消す。


もはや「服」と称するよりは「鎧」とかそっちの方に分類されてもいいんじゃないかと思うメイド服のおかげで身体は無傷だが、それでも顔や手の先を守るのには限界というものがある。


「やっぱり、フランさんがいるとレティに1発当てるのも至難の業みたいね……」


言葉とは裏腹に、レイナは満面の笑みを浮かべている。


「その割には、嬉しそうですね」


「もちろんよ!」


フランの言葉に反応して、レイナは思い切り胸を張る。


試合中だということを忘れているのか、フランとレティアの前で仁王立ちになると、勢いよくレティアを指差した。


「勉強で戦い、運動能力で戦い、果ては家に帰る時間すらも競っていたあたしとレティにとって、この試合はどちらが本当に強いのかを決定的にする機会なのよ! フランさんには悪いけど、手加減なんて一切しないんだからね……、きゃあっ!?」


大仰に天を仰いでいたレイナの顔の横を拳大もある火球が通過していく。


フランがふと横を見ると、ジト目のレティアが指先をレイナに向けてため息をついていた。


「あんたねぇ、競争も何も一度もあたし、受けたことないんだけど?」


「あら、そうだったんですか、お嬢様」


「使う魔法が同じって事もあったし、微妙に名前が似てるって事もあって、何かとつけては優劣付けたがってるだけよ、多分」


もう一度ため息をつくレティアを見ている限り、どうやらだいぶ前からレイナとのいがみ合いは続いていたようだ。


カッコつけて演説まがいの事をしていた最中に横槍を入れられたレイナは肩を震わせながら歯ぎしりし、それでも冷静さを失うまいと深呼吸を繰り返す。


「あれ、撃っていいんでしょうか?」


「面白いし、待ってましょう」


ステージのど真ん中で深呼吸を繰り返すレイナにレティアが含み笑いをしながらそう呟く。


「すぅー、はぁー、……ミコト、プランB行くわよ」


「え? ああ、うん、わかった」


それまで会話に入っていなかったミコトが急に声をかけられ、一瞬聞き返したが、すぐにレイナの言った事を理解して頷くと、両手を天に向けて膨大な炎を生み出し始める。


炎はまるで巨大な噴水のように天高く吹き上がり、青い空を埋め尽くすかのように広がっていく。


『あつ! あっついです!』


上空で実況していたカミラが炎に巻かれたのか悲鳴を上げているのが僅かに聞こえる。


だが、その悲鳴も炎が作り出す轟音に飲みこまれていく。


「あ、あんた、まさかここであれをやる気?」


レティアが苦笑いしている。


どうやらレティアにはレイナが何をしようとしているのか理解できているようだ。そしてその表情からとてつもなく大変な事が起ころうとしている事も知りえる事が出来た。


フランは、左足を半歩後ろに下げ、何が起こっても対応できるようレイナとミコトの動きに注意を集中させる。


レイナはミコトの作り出す炎の熱波に風船が割られないよう気を付けつつも、ミコトに近寄り、指先から細い炎の帯を数本作り出すとそれをまき散らされるミコトの炎に繋いでいく。


その瞬間、炎がまるで身震いするかのように蠢き、大きく広がっていた先端が徐々に収縮していく。


「やばいっ、フラン、レイナを撃って!」


「りょ、了解しました!」


レティアのただならぬ叫びに即応してアフェシアスをレイナに向け、立て続けに3発発射する。腹、喉、眉間を狙っての放たれた弾丸は勢いよくレイナ目掛けて飛翔する。


しかし、その時視界に入ったレイナは、薄く微笑んでいた。


そしてフランがそれに気が付いたのと時を同じくして、レイナの身長の二倍ほどまでに小さくなった炎をレイナは振りかぶり、弾丸の射線に振り下ろした。


ゴウッという炎が猛る音と共に強烈な熱波が発生する。


振り下ろされた炎がステージの床を抉り、ポッカリと穴を開けている。


その炎の向こう側には、弾丸の射線上から一歩も移動していない、無傷のレイナが立っている。それだけでフランは起こった事を理解して戦慄する。


(融かされた……)


鋼鉄で出来た弾丸が、ただの一振り、炎にわずかに接しただけで融かされたのだ。


鋼鉄はその内容する物質にもよるが融かすのには最低でも1000度を超える温度が必要だ。そんなものを喰らったその日には、消し炭すら残らないだろう。


しかし、それほどの火力を維持するのはそう簡単な事ではない。おそらくあの巨大な炎を圧縮に圧縮を重ね、あそこまで凝縮した結果あれほどの高火力を実現しているのだろうが、魔力の消費はすさまじいはずで、そんな事を維持すればすぐに魔力が枯渇してしまいかねない。


「ふふ、フランさんも理解できたみたいね、この業火ノ剣ヘルファイア・ブレードの威力を」


表情に出ていたのか、レイナが少し嬉しそうな顔をしている。


「そして今、『どうしてこれほどの魔法を持続して使えているのか』なんて考えてるんじゃない?」


「……お見通しですか」


「簡単よ、ミコトが炎を作り、あたしが圧縮する。これで1人の魔力は半分程度で済むわ」


同じ魔法を使う者だからこそ出来る協力技とでもいうべきものだろうか。


圧縮された炎はミコトの左手から炎自体を供給し、レイナの右手から伸びる炎の帯で圧縮されているという事だ。


さすがにその火力が強すぎるためか、レイナの伸ばす帯は長く、熱波にやられないように距離を取っている。


「ですが、それはつまり2人が同じ場所にいないと成立しない事ですよね?」


それでも、フランはレイナとミコトがお互い数メートルも離れていない場所に立っている事に気が付いていた。


2人が1つの魔法に関わっている以上、2人の距離が離れれば魔法の維持も困難になる。ならば、それを狙って2人を分断させようとフランは考えたのだ。


「できるものなら、やってみてください、フランさん」


フランの問いに答えたミコトもまた、不敵な笑みを浮かべている。


それを挑戦と受け取ったフランはアフェシアスの威力を高め、左手も添えて両手で支えると2人目掛けて引き金を引いた。


発砲の反動で身体が後ろにのけ反りそうになるが、決して視線を2人から外すことはしない。


「ちょ、フラン、1人で始めないでよ!」


レティアの困惑した声が聞こえてくるが、今はそれよりも重要な事があった。


ミコトの言葉の意味することを理解するためだ。


「ミコト!」


「分かってる!」


僅かな言葉で意思疎通をすると、レイナとミコトは同時に・・・左に飛び退く。


完璧に同じタイミング、同じ方向、同じ距離だけ、2人は移動した。着地のタイミングすら同じで足音が一度しか聞こえず、当然2人の距離は開いてもいないし狭くなってもいない。


これにはフランも苦笑いするしかない。


同調シンクロとか、そんなレベルの話じゃありませんね)


「フラン、あの2人の連携とか動きは言葉を必要としないわ。長年一緒にいるから、お互いの考えが分かってるのよ」


そこにレティアが補足を入れてくる。


「お互いがお互いの考えを知り、それに合わせるだけの実力を持っている、という事ですか」


「そういう事よ。正直、引き離すのは簡単じゃないわ」


今の攻撃に対する反応だけでも、それは痛いほどに理解できた。


だが、フランとレティアはお互いにそれを打ち破るつもりでいるとお互いを理解していた。


レイナとミコトのように、そこに言葉はいらない。


















ひとまず2人を牽制しつつ、どう対処するかの作戦会議をする事にする。フランはアフェシアスを、レティアは複数の火球を同時発射して弾幕を張り、黄色か白に近い、直視するのも難しい色をした炎を操るレイナとミコトを近づけさせない。


「燃料切れは?」


「30分はもつわよ、あれ」


再装填するために弾倉を取り出し、弾を詰めると再び銃を持ち上げる。


「お嬢様も出来ます?」


「無茶言わないで。風船割れるわ」


炎を作り出したのはミコトだった。


風船を付けたレイナは熱波に気を付けつつ近づいていた。レティアが同じことをすれば、間近で炎の熱波を浴びる事になり、それでは風船が耐えられないのは目に見えている。


「……打つ手ないじゃないですか」


「考えるのよ、諦めるのには早いわ」


「その考える時間をあたしたちが与えると思ってるのかしら!」


一瞬、フランとレティアの攻撃が同時にレイナを襲った。


それをレイナは炎の剣を一振りで薙ぎ払うとそのまま切っ先をレティアに向けて突き立て、突貫してくる。ミコトは完全にレイナの陰に隠れており、視界に捉えるのも難しい。代わりに視界に入るのはレイナの不敵な笑みだ。


「人が話し終わるまで大人しく待てないの!?」


「あいにく、あたしを倒す相談が終わるのを待つつもりはないわよ!」


そう言いながらレイナが右手を振り上げる。


すると炎でレイナと繋がれた剣がそれに連動して天高くその切っ先を向け、一気に振り下ろされる。


剣を振ると言っても、手に持ってるわけではないためそのリーチは非常に長い。そのおかげで振り下ろされる速度も並みでなく、風を切ると言うよりは、もはや空間を焼き切る勢いだ。下手をしなくても直撃すれば溶鉱炉にでも飛び込むようなものだろう。


レティアは防ぐことを最初から考えず、力の限り右に跳ぶ。コンマ数秒前まで自分がいた場所に剣が突き刺さり、木製の床を炎上させ、燃やし尽くす。剣が抜かれると地面が露出するが、地面は真っ赤に熱せられて白い煙を上げている。


「殺す気? 殺す気でしょう! 馬鹿なの!? 本当に殺す気ならあなたは大馬鹿よ!?」


その様子に蒼白となるレティアは反撃しつつも声を荒げる。


「あら、あの程度でどうにかなるなら、あたしのライバルじゃないわよ!」


「それはあなたが勝手に言ってることでしょう!」


レティアの抗議もレイナの耳には届かない。


フランとしてはむしろ教員がこの事態に何も口を挟まないのが不思議でならない。いくら試合とはいえ、いつ死人が出てもおかしくない状況は教員としては止めに入るべき事態だ。もちろん、それを言い出したらこの武闘祭自体が成り立たないのだが、ボーダーは必要だ。


自分がそのボーダーを何度か踏み越えている気がすることはこの際置いておくとして、フランはレティアの掩護に回りながら活路を模索する。


「ちょっと、どうしてあたしばかり狙うのよ!? フランも少しは狙いなさいよ!」


「レティが風船つけてるんだから、優先的に狙うのは当たり前でしょう!」


「姉さん、冷静にね。フランさん来るよ」


声はすれど姿なし、とはまさにこの事だろうか。


逃げに徹するレティアを見て、ミコトはフランに対して姿を見せないようレイナの陰に隠れている。攻撃をレイナに任せている代わりに、状況把握をミコトが引き受けている、と言ったところだろうか。


ミコトの言葉にレイナが即応し、レティアに向けて振りかぶっていた剣を真横に倒すと、そのままフラン目掛けて振り抜いてくる。フランがそれをしゃがんで回避すると、その背後ですさまじい破裂音にも似た音が響き渡った。


振り返るとステージの床が綺麗な弧を描いて抉れており、その端にはレイナの振るった剣がある。わずかに傾いていた剣がその切っ先でフランの背後の床を抉り取ったようだ。


「レイナさん、手加減って、知ってますか?」


その惨状にさすがにそんな言葉がフランの口から出てきた。


「大丈夫、学園うちの先生は優秀よ!」


清々しくサムズアップされてもなんの安心も与えてくれない。


これほどまでに強烈なツッコミを入れたくなるサムズアップもなかなかないのではないだろうかと、まったく関係のないことまで頭を過ぎる。


そしてこの状況に結界を挟んだ外側はより一層盛り上がっている。上空のカミラが絶妙な煽りで観客を沸かせているのだ。状況が許せば是非とも地上に叩き落としてやりたい衝動に駆られる。そうすればあの絶妙なカミラ節も黙るだろう。


その煽りと一緒になって楽しんでいるテトやウルの姿が目に止まり、一瞬小さくため息をついてしまう。


「何もしてこないのなら、早々に優勝を決めさせてもらうわよ!」


レティアとフランがなかなか強い反撃をしてこないのに痺れを切らしたのか、レイナは両手を天に向ける。


「ミコト、最大火力!」


レイナがそう叫ぶや否や、剣が膨張し、地上数十メートルの高さまで伸びていく。まるで太陽をそのまま剣の形にしたかのような威圧感に圧倒される。


流れ出る汗が滴る前に蒸発し、身体から水分が抜け落ちていくような感覚に襲われる。


「お嬢様、どうしましょう!?」


「あたしに振らないで考えましょうよ!」


さすがにこの状況はまずい。


レティアの最大火力はこのメイド服でも数十秒耐えられることが先の試合で立証されたが、あそこまで圧縮された熱量に耐えられる気はまるでしない。むしろ頭が骨くらいは残るかなぁなどと現実逃避している。


『おおっと、これは一気に勝敗が決まるのでしょうか! レイナが大技を繰り出そうとしています!』


カミラの実況が振り上げられた巨大な剣の先端付近から響いてくる。


それを聞いて、フランはふとカミラを見上げた。


「……あれ?」


フランはそこで大声を張り上げるカミラに違和感を感じた。


カミラは涼しい表情で実況をしている。


そう、涼しい・・・表情で、だ。


もちろん、白熱した戦いを大声で実況しているのだから汗は出ているだろうが、地上の自分たちに比べれば不自然なほどに涼しそうだ。先ほど熱がっていたが、思えばあれほど近い距離であの程度のリアクションで済むという事は、何かしらのがありそうだ。


それに気が付いたフランは黒い笑みを浮かべ、無言のままアフェシアスの銃口を上空のカミラに向ける。


『……へ?』


「そこの実況さん、密着取材しませんか?」


引き金が引かれ飛び出した弾丸がカミラを囲むように通過していく。


地上であればなんら問題を引き起こさない攻撃だが、気流を操り滞空するカミラにとってそれは死の宣告にも近い意味があった。


『ああああああああっ!!!??』


カミラが絶叫しながら頭から落ちてくる。


何とか体勢を立て直そうと必死にもがくが、失った気流をすぐに復活させるのは難しいのか、その姿がどんどん大きくなってくる。


そして気流を取り戻し、落下のスピードが和らいだ頃にはカミラの視界にはステージの床が広がっていた。


あわや墜落かと思われたが、墜落させる事が目的ではないので間一髪のところでフランがカミラを抱き止める。半泣き状態のカミラが震えながらフランに顔を向ける。


「あ、あの、どうして……?」


「随分涼しそうな表情でしたので、あたしたちも相乗りさせてもらいますね、お嬢様!」


カミラを抱き止めてすぐに確信した。


彼女以外の誰かによって、カミラの周囲には不可視のシールドのようなものがあるのだ。試合中の流れ弾などに対して、実況に集中しているカミラが気づかず撃墜、などという事がないように用意されたものだろうが、今のフランにとってそれはイージスの楯のように感じられる。


「そら、喰らいなさい!」


「ちょ、姉さん! 1人余計なのが増えてる!」


「己の身の不幸を呪いなさい!」


勝負を決めに来ているレイナはカミラがそこにいる事などお構いなしだ。


渾身の一撃を放つため、剣をステージ目掛けて振り下ろす。


そして、爆炎がステージ全体を包み込んだ。















ステージに生暖かい風が送り込まれているのをフランは肌で感じていた。


レイナの一撃に耐えられたことに感謝しつつ、フランは次にどうするべきか目まぐるしく頭を働かせている。


生暖かい風の正体は結界に開いた穴から外の空気が流れ込んできているためのようで、わずかばかりに煙を晴らして視界を確保してくれる。しかし、即座に修繕が行われているようで、その風も次第に弱まっていく。


「お嬢様、ご無事ですか?」


「けほっ、ええ、返事なら後でね……」


「ついでにカミラさんは……あら」


盾扱いしたカミラの事も一応心配しておく素振りだけは見せようと視線を向けると、目を回して気絶していることに気が付いた。


「……どうしましょう、これ」


「端に置いておきなさい。外から引っ張り出すでしょうよ」


レティアに促されてカミラを背負い上げるとステージの端までおぶって行って結界に寄りかかる様にして座らせておく。結界の外に教員の姿が見えたので時を置かずして外に出られるだろう。


それを確認してフランとレティアはステージに視線を戻す。


煙の中に白く光るものを見つけ、気を引き締め直す。


「時にフラン、打開策は見つかった?」


「あの火力では受け止めるのも無理です。正面から1発勝負をしても勝てるかどうか……」


お互いが最大火力でぶち当たっても、勝てる見込みは少ない。最初にも考えた事だが、そうなれば向こうに有利だ。


「そこで思ったのだけれど、あたしもレイナも、炎でしょう?」


レティアが人差し指を立てながら思わせぶりな表情をする。


「ええ、それがどうしました?」


「炎は何を燃やす?」


「……?」


一瞬質問の意図が分からず首を傾げてしまう。


「あの剣がなければ、風船を狙い撃てる?」


「妨害がなく、最大威力で撃てば真っ直ぐ飛びますから、狙うのは容易かと……」


「それじゃ、『邪魔がなくて落ち着いて狙える状況』を作るから、絶対に外すんじゃないわよ?」


「お嬢様、一体何をするおつもりですか?」


レティアは煤だらけの顔に笑みを浮かべ、フランに顔を向ける。















「さあフラン、理科の授業を始めるわよ」


お久しぶりです、ハモニカです。


いろいろあってめっきり更新してなかったですが、一ヶ月ぶりに更新しました^^;


前書きでも書いたんですけど、多分この辺の話で一番活躍してるのは風船だと思うんですよね。いや、本当にw


実は同じ炎を使うキャラ同士の戦いということもあってどう戦わせようか悩んでいたのも更新が遅れている1つの要因です。一応ハモニカの頭の中ではレティアはフットワークの利く軽量級、レイナは一発が思いヘビー級っていうイメージで考えているんですけどねぇ。


さてさて、形勢逆転して優勝できるでしょうか?


ではまた次回。


誤字脱字報告、ご感想などお待ちしております。



  追伸


先日、ご感想で大量の誤字脱字報告を頂きまして、即座に訂正したわけですが、相も変わらず誤字脱字が多いですが、本当に申し訳ございませんm(_ _)m



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