第43話 ギャップ萌え……?
5月20日:ご指摘を受け一部表現・描写の不足分を補填。
「?」が付いているのが重要ですwww
では、どうぞ。
活動報告にツイッターのアカウントを載せた数分後にフォローされたのは予想外でしたwww
『試合終了!! 第2試合はメリー・ハリー兄弟コンビが同学年の相手を倒して決着です!』
カミラの実況と共に歓声が上がる。
それは試合終了の合図であると同時に、フランとレティアにとってはカウントダウンの合図にもなった。控室でその様子をモニター越しに見ていた2人のもとに、舞踏祭本部と書かれたネームプレートを首から提げた女子生徒が駆け寄ってくる。
「レティアさん、フランさん、準備の方、よろしいですか?」
「あ、はい」
いよいよフランたちの番となる。
最後にもう一度身だしなみを整え、フランはアフェシアスの弾倉を確認してからホルスターに戻す。
レティアも手甲の紐を締め直し、深呼吸をして集中力を高めている。
「行きましょうか、お嬢様」
「ええ、全力で行くわよ」
控室を出ると会場に続く通路が真っ直ぐに伸びている。
観客席の下にあって若干薄暗いが、通路の先は眩しい光が逆光となって通路に差し込んできている。
その中を歩いて会場に出ると、朝とはまったく雰囲気の違う会場がフランとレティアの視界に飛び込んでくる。
満員となった観客席から盛大な声援が送られ、レティアがそれに応えるように手を振る。
「ほら、フラン、愛想良く」
地鳴りのような歓声に放心していたフランであったが、レティアにそう言われて我に返るとおずおずと手を振る。
慣れない事ではあったが、そんなフランの対応でも観客たちは盛り上がれるようだ。ステージ側から観客席は結界のために視界が悪いが、音は遮断されていないので物凄い音量が会場全体を駆け巡っている。
『さあ、今回の武闘祭初の学園外からの参加者です! 赤コーナー、5年生レティア・ファルケンとそのメイド、フラン・ショーンです!!』
カミラの紹介にフランが眉をひそめる。
それもそのはず、何故かフランの名前の後に余計な単語が付いていたからだ。すぐにレティアに向き直ると、若干ばつの悪そうな顔をしたレティアがいた。
「フランって、姓が無いでしょう? それじゃ困るから、メリスに言って借りたのよ。別に問題ないでしょう?」
「いやまあ、そうですが……、前もって言っておいてくださいよ、びっくりしました」
そんな会話をいている間にカミラが対戦相手の紹介をしていく。
『対する青コーナー、どう考えても役割が逆! 同じく4年生コンビ、ヴェスト・ハイサック、ゾーヤ・ジャジュチェンコのコンビです!!』
反対側から姿を現したのは、いかにも「ゴリマッチョ」という単語が似合いそうな金髪の男子生徒と、逆に「か弱い少女」という印象を受ける青髪の女子生徒だ。
憮然とした表情の男子生徒、ヴェストは背中に巨大な剣を担いでいる。鋼鉄の剣が太陽光を反射して鈍く光っている。その隣に立っている少女、ゾーヤはヴェストの隣にいる事もあってより一層小さく見えてしまう。冗談事ではなく、ヴェストの二の腕はゾーヤのウエストと同じくらいの太さがある。
(ふむ、お嬢様が見てのお楽しみとか言っていましたが、典型的な前衛と後衛の組み合わせでしょうか?)
ヴェストとゾーヤを見比べながら、フランは相手を知ろうとする。
しかし、外見からしてあまりにも分かりやすいので、拍子抜けしてしまう。
「フラン、あなたが何を考えているのか、手に取る様に分かるわ。けれど、それは大間違いよ」
「え?」
不意にレティアにそう言われてレティアに顔を向けると、「言いたい事は分かるけど」と言いたそうな表情をしているレティアがいる。
「なに? 俺とこいつを外見だけで判断してんの? ならそれは確実に間違ってるぜ」
「あ、それは失礼、を……?」
そこへ投げかけられた言葉に無意識に反応してお詫びをしようとした相手がまったく口を動かしていない事に気が付き、不審に思って隣にいた人物に視線を向けると、腕組みをしてこちらを睨み付けていた。
言葉だけ聞けば、どう考えても男性の台詞である。
だが、その言葉を発したのはゴリマッチョなヴェストではなく、ゾーヤの方であった。
その予想外な事態にフランはつい本人の前だという事も忘れて目を丸くしてしまう。
すると案の定、ゾーヤが不機嫌そうにフランを指差し、犬歯をむき出しにして食いついてくる。
「あ! お前俺がか弱い乙女かなんかだと思ってただろ! 絶対そうだろ!? 俺をそこらのガキと一緒にすんなよな!」
「ゾーヤ、少し落ち着こう?」
さらにゾーヤのギャップに混乱しているフランに追い打ちをかけるかのように、細く大人しそうな声が聞こえてくる。
当然ながら残る声の主は1人しかいない。ヴェストだ。
目を瞑れば口の悪いウルのような女性を、ミコトのような大人しい少年が宥めようとしているようにしか聞こえないのだが、現実はあまりにも理想とかけ離れていた。
『さあさあ、さっそくフラン、我が校名物の「ギャップ萌えのヴェスト・ゾーヤ」コンビに目をパチクリさせております! 分かります、その気持ち、ほぼ全ての4年生に共通しております!!』
カミラの実況に観客席から笑い声が聞こえてくる。
「え、えと、お嬢様? あれは、どういう……?」
「そうね、あたしから言える事はただ1つ、受け入れなさい、これが現実よ」
「はあ……」
どうして神はあのような大人しそうな精神をあの凶悪なゴリマッチョ人間の肉体に宿らせたのだろうか、不思議でならない。
どう考えても、逆だ。
「あ、すいません、自己紹介が遅れました、僕はヴェストといいます。それでこっちが……」
「ちょっと、なに勝手に進めようとしてんだ、俺が進める! 俺の名はゾーヤ・ジャジュチェンコ、そしてこいつは俺の部下、ヴェストだ。そしてそこのお前! 俺を侮っただろ? 侮ったよな! その不敬、万死に値する!!」
「ゾーヤ、そんな事あの人も思ってないから落ち着こう?」
勝手に1人で喧嘩をしようとしているゾーヤに呆れたのかその首根っこを掴むとヴェストがゾーヤをひょいと持ち上げる。
「ちょ、何すんだ! はーなーせーっ!」
まるで小動物を嗜める飼い主のような光景だ。
「すいません、ゾーヤは口が悪くて。お気を悪くされたのなら謝ります」
「い、いえ、こちらこそ人を外見で判断するような真似をしてしまい……」
「いつもの事ですから、大丈夫ですよ。ただそこまで分かりやすい反応をした人も久しぶりだったので、なんだか新鮮でしたね、そのせいでゾーヤも久々に暴れてますし」
「うっさい! ていうかとっとと下ろせ!」
ヴェストは出来た大人、といった雰囲気だ。
あの性格であの体型、一体何があったのだろう、と思ってしまうフランは悪くない。
『ささ、自己紹介もそれほどに、ボチボチ始めますよ? 双方準備は良いですか?』
フランは今気が付いたことなのだが、実況をしているカミラは中に浮いている。
そしてカミラはスカートを穿いている。
いろいろまずいんではないかと思ったのだが、彼女はスパッツを穿いていたようだ。いっそスカートをやめてズボンか何かを穿けばよいものを、と思ってしまうが、それもまた彼女が人気を集める理由なのかも知れない。
『それでは双方しっかり風船を被ってください』
そう言われてレティアが帽子をかぶるように風船を頭に乗せる。
それに対して青コーナーではゾーヤを地面に下ろしたヴェストがおもむろに風船を取り出すと頭に乗せる。
その瞬間、再び観客席から歓声とも笑い声とも分からぬ声援が沸く。
「意外性ナンバー1、って奴ですね……」
「気を引き締めていくわよ、フラン、ゾーヤが前衛、ヴェストが後衛よ」
「ならあの大きな剣、何なんですか……?」
「ぶっちゃけ、飾りよ」
「ええ~……」
なんだか、残念な気持ちになってしまう。
てっきりヴェストの身の丈もあるかという大剣、あれと戦うものかと思っていたが、どうやらフランの相手はゾーヤになりそうだ。レティアと同級生とは思えないほど小柄な彼女がどのような戦い方をするのかという興味もあるが、飾りの武器を持つヴェストも理解できない。
とはいえ、そんな事を考えている暇はない。
見上げればカミラがすでに腕を振り上げている。
『それでは――――――』
そして、一気に振り下ろされる。
『試合開始!!』
その瞬間、空気が変わる。
まず動いたのはゾーヤだ。
地を這うような低い姿勢でフランとの距離を詰めながら腰の鞭を手に取るとそれを振り上げ、フラン目掛けて振り下ろしてくる。先端に重しとなる鋭い刃の付いた鞭が風を切る音を立てながらフランの中心線を狙ってくる。
(このくらいなら……なっ!)
決して速くないその鞭の一撃を十分引き付けてから避けようと思っていたフランの目の前で、急激に鞭の速度が上がる。鞭が蛇のようにくねり、先端の刃が一気に振り下ろされる。
「俺の鞭をなめんなや!」
ゾーヤは手元でわずかに鞭を操作するだけだが、その動きは鞭によって増幅され、先端が大きく動く。
済んでのところで直撃を避けると、刃は勢いよくステージの床板を穿ち、木の板を粉砕する。
「くっ」
「フラン、それをギリギリで避けちゃだめよ!」
「え――――――?」
レティアの声に床を穿った鞭を見ると、うねる鞭が地面を這い、フランの足に絡みついてきていた。
まるで生き物のように動く鞭はフランの足に巻きつき、動きを封じる。
「今だよ、ヴェスト!」
「分かってますよ!」
気づけば、ゾーヤの背後にいたヴェストが両手をこちらに向け、手の平に金色の球体を作り出していた。激しく放電しているそれを大きく振りかぶるとフラン目掛けて投げつけてくる。逃げようにも動きを封じられている以上、アフェシアスで迎撃するしかない。
即座にアフェシアスを構え、飛んでくる雷の球を撃ち落とそうと引き金を引くと、間髪入れずに目の前にまで迫っていた球が弾ける。
ただ、このままでは良いように弄ばれてしまう。撃ち落としたのとほぼ同時に足元の鞭に銃口を向け、1発撃つと鞭を足から弾き飛ばす。ゾーヤもそれに気が付いたのかすぐさま鞭を引き戻す。
「フラン、ボーっとしてないの!」
「分かってます。お嬢様、掩護頼みますよ!」
「もちろんよ!」
今度はこちらの番だ。
空砲を一度撃ち、魔力刃を作り出すとゾーヤの腰から斬り上げようとする。ゾーヤは鞭を両手に持ってそれを食い止めるが、フランの力で一瞬身体が宙に浮く。
「剣!? お前、武器幾つ持ってんだっ」
「フフ、1つですよ」
銃で撃たれるものと思っていたのだろう。
ゾーヤが自分で防いだ刃を見ながら舌打ちをする。
それでもゾーヤは臆することなく防いだ鞭を魔力刃に絡めてフランからアフェシアスを奪おうとする。フランがそれを許すはずもなく、即座に魔力刃を霧散させると、そこには絡まった鞭だけが残される。
「うそっ!?」
「お嬢様!」
これにはゾーヤも驚いたようで、一瞬動きが止まる。
その隙を見逃さずレティアに合図を送ると、後方で火球を作り上げていたレティアが3つの火球をゾーヤ目掛けて投げつける。当然、同士討ちを避けるためにフランは後方に飛び退く。
しかし、直撃寸前のところで3つの火球が迸る雷光に撃ち落とされる。宙に3つの花火が咲き、わずかに遅れて雷鳴のような音が響き渡る。
「ちっ、俺としたことが、隙を見せちまった……」
「想定外を想定するのが、想定だよ、ゾーヤ」
「分かってらぃ」
一度ヴェストの場所まで下がったゾーヤは不満げにそう漏らすが、その表情は決して不愉快なものではない。むしろこの状況を楽しんでいるように思える。
フランはその様子をジッと見つめながら、ゾーヤとの予想外の戦いにくさに若干の焦りを感じていた。
今までフランはメリスやグラント、ウルと戦った事があるが、相手のほとんどが自分より身体の大きかった。フラン自身より小柄な相手と戦うのはこれが初めてなのだ。
少し視界が塞がれれば簡単にゾーヤを見失いそうになる上、小柄なゾーヤは小回りを利かして素早く動き回る。状況判断能力も高く、目の前のフランだけでなくレティアの事も常に意識に置いているようだ。口が悪く分かりにくいが、あれで存外冷静なのかもしれない。
「ヴェストさんの攻撃も掩護としては申し分なし、ゾーヤさんを掩護しつつ、こちらを自分に近づけないようにしている……」
「ていうか、ゾーヤはフランを潰すことに集中してるわね。確かにフランが倒れたらあたしはどうしようもないでしょうけど」
どうやらヴェストとゾーヤはフランを無力化した後にレティアを狙うつもりのようだ。
もちろん、それをするためにはレティアからの攻撃をヴェストが確実に迎撃、ゾーヤの邪魔にならないようにする必要がある。その作戦を取るという事は、その実力があるということなのだろう。
「ならこっちは、お嬢様、少々お耳を拝借したく」
「返してよね?」
「冗談はいいですから……」
手短に作戦を話しあい、お互い理解したことを確認すると無言で頷き合う。
そして相手が動くのを待つことなく、フランが動き出す。それに合わせてゾーヤが前に出て相対するが、ゾーヤへの攻撃はまずレティアから始まった。
ゾーヤは身長が低い上に地面を這うような動きをする。当然視点も低くなる。フランのメイド服は足首少し上ほどまであるため、正面斜め下から見ると背後はほとんど見えないに等しい。フランを挟んで背後からのレティアの攻撃はゾーヤから見えないため、不意打ちは可能だ。
弧を描き、フランを追い越す様に放たれた火球がゾーヤを襲うが、ゾーヤはそれに構わず突っ込んでくる。フランとゾーヤの中間あたりでヴェストが火球を迎撃し、小爆発が起きて一瞬ではあるがゾーヤ、フランがお互いを見失う。
しかし直後には煙を突っ切ってゾーヤが姿を現し、横から鞭を振るってくる。
振るわれた鞭が首に届くよりも速くフランは左腕を持ち上げて右手で鞭の中ほどを掴む。それを見てゾーヤがハッとした表情になるが時すでに遅し、鞭をしっかり握り、数かい捻って自分の手に巻きつけると思い切り引っ張る。
「いっ!?」
「ゾーヤさんの、一本釣りぃっ!!」
自分でも驚くほど腹から出た声に驚きつつも、フランは鞭を後ろに引っ張りゾーヤを宙に浮かせる。
そして宙に浮いたゾーヤの目に飛び込んできたのは、目の前に迫る複数の火球、火球とヴェストの間にはゾーヤがいるため迎撃は不可能、火球がゾーヤを包み、爆発する。
「やった!?」
「まだですよ、お嬢様!」
鞭の先端を握っているフランはその鞭に込められているゾーヤの力を確かに感じ取っていた。
爆炎の中、ゾーヤの身体が地面に落ちてくる直前にフランは急激に引っ張られるの感じ、足に力を入れて踏ん張る。煙の中からヌッと巨大な影が現れ、太い腕がフランを捕まえようと伸ばされる。フランは即座に踏ん張るのを諦め握っていた鞭を手放し、後方へ逃れる。得物を逃した猛獣の口が閉じられるかのように太い腕が虚空を掴む。
爆炎の中、接近してきたヴェストがゾーヤの鞭を掴み、引っ張りつつフランに腕を伸ばしてきたのだ。
「いってー、やりやがったなー」
「あの程度で倒れるとは思ってませんが?」
煙が晴れてヴェストとゾーヤが姿を現す。
ゾーヤはヴェストの肩に座り、焦げた上着を脱ぐとポイッと投げ捨てる。
「当ったりめぇだ。なめんなよ?」
ヴェストの肩に立ち上がると、威勢よくそう言い放つ。
「おいヴェスト、あれやっぞ」
「いいよ。決めに行こうか」
ゾーヤの言葉にヴェストが小さく頷くと太い腕を後ろに回して背負っていた大剣を抜き、床に突き刺す。
ヴェストが左手を突き出すとゾーヤの鞭の持ち手を握り、反対側を大剣の柄に引っかける。そしてヴェストの前にゾーヤが立ち、横に張られた鞭に体重をかけるとヴェストがゆっくりと鞭を右手で引いていく。丁度鞭がくの字に曲がり、パチンコのような形になる。
「……冗談ですよね?」
「フラン、本気と書いて、マジと読むのよ」
何をしようとしているのか理解したフランが頬を引きつらせている。
弾を撃つ人間としては、人間が弾になるなど考えた事もなかった。それを目の前の2人はやろうとしているようだ。
鞭がギリギリという音を立てる中、ゾーヤがニヤリと笑う。
「喰らえ、バレットオブゾーヤ!」
ゾーヤが叫んだ瞬間、ヴェストが鞭から手を離す。
そしてしなった枝が戻るかのように鞭が元の形に戻ろうとして、ゾーヤをまるで砲弾のように撃ち出す。その勢いは半端なものではない。あっという間にフランの前にゾーヤの勝ち誇ったような笑みが迫ってくる。
(速いけど、直線的!)
これほどの速度があれば進路変更など出来るはずもない。
僅かに避けるだけでゾーヤがフランの脇を通り過ぎていく。あの勢いならばステージの端まで行っているだろう。フランの背後のレティアまで戻ってくる気だとしても、それより早くフランはヴェストに接近出来る。
そうなればこっちのものだ、と思った瞬間、フランは腹に力を入れていないにも関わらず腹を締め付けられるような感覚に襲われ、視線を下に向ける。
「なっ!?」
見るといつの間にか鞭が腹に巻きついている。
即座に後ろに振り返ると、鞭を握ったゾーヤがこちらを向いて犬歯を覗かせている。
一瞬遅れて思い切り背後に身体を持っていかれ始める。フランの背後でゾーヤが地面に足をつくと、その勢いを殺さぬまま身体を回転させ始める。するとジャイアントスイングのように鞭の先端についたフランが引っ張られ、ついに遠心力に耐えられず宙に浮いてしまう。
(こ、これは……!!)
自分がどうなるか分かってしまったフランは苦笑いしながら来たるべき衝撃に備える。
「はっはっはっ、バレットオブゾーヤ、弾になるのは俺じゃない、あんただ!!」
いつの間にか大剣を両手で握ったヴェストが回転するフランの進行方向に立っていた。
「峰打ちです。ご安心を」
そしてその手の大剣をバットのように振りかぶり、そしてフランが近づいてくるのに合わせて振った。
ゴキッ
到底、人が出す音とは思えない音を響かせ、フランの身体がくの字に曲がる。フルスイングされたバットの如く振られた大剣が胴を直撃し、そのままヴェストが大剣を振り抜くとフランの身体が天高く吹き飛ばされ、ステージと観客席の間にある結界に直撃し、そのまま地面まで落ちてくるとそこでようやく動きが止まる。
「ホームラン♪」
ゾーヤの勝ち誇ったような言葉に、レティアは茫然とするしかなかった。
あのフランが、何もできずに一方的に吹き飛ばされたのだ。普段からフランの頑強さ、強さを知っている彼女からすれば、信じられない光景だ。
『お、おお―――っ!? フラン、ヴェストの強烈な一撃に吹き飛ばされた―――っ!! これは立ち上がるのは不可能でしょうか!? そうなれば2対1、レティア圧倒的に不利になるが――――――!?』
5月20日修正箇所:ゾーヤの一本釣りの後からヴェストとゾーヤが合流する辺りまでに少しばかり描写を追加。
フランの運命はいかに!?
的な終わり方ですね。
さてさて、久々のバトル回ですよー。
これからは当分バトルがメインの回が続きます。
マンネリ化しないよういろいろアイデアを巡らせております。
まあ、似たような戦い方をするキャラが出てこないのが唯一の救いですね。
あえて言わせてもらいますと、次の戦いでは二次元の戦いから三次元の戦いになります。
あ、誤解が無いように補足しておきますと、
決して
決っっっして
漫画やアニメの世界から現実世界に飛び出してくるわけじゃありませんからね?
ね!?
では、また次回お会いしましょう。
誤字脱字報告、ご感想などお待ちしております。