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第40話 楽しみ方なんて、人それぞれ

シリアスなんてなんぼのもんじゃーいっ! ですよ。


前回はシリアス回でしたが、今回は大丈夫ですよ!


ただ、予想外な事に次回か次々回にまたまたシリアスが挟まりそう……。


い、いや、そのつもりじゃなかったんですよ??


ただ、2日目の学園祭にはフランが行かない(予定)なんですけど、そのせいで丸1日空白が出来るんですよ。なので前にばら撒いて回収できるか不安だったフラグを回収した結果、シリアスになっちゃったんです!ww


ま、緩急バランスよく(?)行きますよwww


では、どうぞ。

「お、戻ってきたか」


教室の前まで戻ってくると、廊下でメリスたちがフランの帰りを待っていた。


「すいません、お待たせしました」


「それじゃフラン、少し皆と待ってて。今着替えてくるから」


午前中がシフトだったレティアはエプロンを取りつつ教室の中に消えていく。


フランはメリスたちの隣に並んでレティアが戻ってくるのを待つ事にする。


「何があったかは聞かん。いつかお前から話してくれる日をお嬢様共々待つさ」


「……聞いてたんですか?」


「さて、何のことやら」


さらっとしらを切るグラントの隣のエルザに視線を移すと、こちらも顔を背ける。隣のメリスを見ると、笑みだけが返ってくる。唯一クレアだけが、「悪いね」と目だけで謝っている。廊下でも相変わらず手にペット用の首輪が縛り付けられていると、どうしてもそちらに視線が向いてしまうが。


どうやら、屋上での一連のやり取りはグラントたちに筒抜けだったようだ。


人の話を盗み聞きするような真似は執事、またはメイドとして如何なものかという気持ちにもなってしまうが、今はそんな事すらどうでも良く感じてしまう。


しばらく待っているといつもの学生服姿になったレティアが教室から出てきた。


そして即座にフランの腕に自分の腕を巻きつけると引っ張り始める。


「ちょ、お嬢様?」


「時間は有限よ! 今のうちに回れるところを片っ端から網羅するわよ。どうせ武闘祭で後半は遊べないんだから」


「あらあら、若いっていいわねぇ」


「エルザさん、その息子とその彼女を見ている母親みたいな台詞、止めてもらえませんか!?」


なんというか、エルザという女性は「あらあらうふふ」という台詞が物凄く似合いそうだ。


包容力のある人間性、穏やかな性格もあってどんな反論も意見も押し包まれてしまう気がしてならない。


現に今のフランの反論も笑顔という鉄面皮にことごとく弾き飛ばされてしまう。相手の心を読み取る繊細な精神と共に図太い精神も併存しているのだろうか。


「ふむ、なら若い者同士を邪魔しないように私たちは他の所を回ろうかな」


「グラントさん!?」


顎を撫でながらニヤニヤしているグラントもまた、この学園祭を自分なりに楽しんでいるようだ。


主にフランとレティアの掛け合いを見て楽しんでいるようだが。


「な、ならあたしはフランたちと行、ふげっ!?」


フランとレティアがグラントたちと別行動するというのを聞いて、フランのもとに走って来ようとしたクレアをメリスが片手で止める。


「あなた、どこへ行こうというのかしら……?」


「ひいっ!?」


ミシミシとメリスに掴まれたクレアの頭が悲鳴を上げる。


クレアのメリスからの脱出は失敗に終わり、頭を押さえて泣きながらクレアがメリスの横に戻っていく。その背中は同情を禁じ得ない。もはや燃え尽きたように生気のない背中にフランとレティアもメリスの強硬手段に疑問符を浮かべてしまうが、それを口に出せるほどの勇気はない。


「ね、ねえフラン、あっちの棟に今年一番凝ってるお化け屋敷があるのよ、一緒に行かない?」


「え、ええもちろん、さっそく行きましょう」


「ちょ、フラン、お嬢様、あたしを助けてぇぇぇぇ、ぴぎぃっ!!」


最後に人のものとは思えない悲鳴が聞こえたが、その場から足早に立ち去る2人は耳を塞いで聞かなかったことにした。もちろん、振り返るなんてもってのほかだ。
















「いやー、なかなかに楽しめましたね」


クレアは尊き犠牲となったのだ。


心の中で一度黙祷してすぐに頭を切り替えたフランとレティアは演劇部が中心に作り上げたお化け屋敷を楽しむことにした。


「あのね、フラン……」


「はい、なんでしょう?」


額を手で押さえながら俯いているレティアにフランが振り返ると、いきなり胸ぐらをつかまれ、目の前にレティアの顔が近づいてくる。


「なんでお化けを片っ端から退治しようとするのかしら!?」


「なぜって、そういう趣旨でしょう? 襲い掛かる敵を撃退するっていう……」


「違うわよ! 怖がって終わり! 悲鳴あげて終わり! なんでお化けが泣いて謝るような事態になるのよ!!」


「そ、そうだったんですか」


思えば、前を歩くカップルはただ悲鳴を上げて女子生徒が男子生徒に抱き付いているだけだったように思える。あんなことをしている暇があったら撃退するべき、などと内心考えていたのだが、どうもそちらが正しいお化け屋敷の楽しみ方だったのかもしれない。


「挙句の果てにはお化けが『お代はいりませんので、是非ともリタイアしてください、お願いします』だなんて……、最後まで行きたかったなぁ」


そんな事を繰り返していた、というよりかは最初からそのスタンスで進んでいたせいもあってか、丁度半ばに差し掛かった辺りでお化け役の生徒が順路に飛び出してきて土下座でそう言ってきたのだ。


小さな子供が怖がってどうしようもなくなった時などを考慮して順路には怖さのランクが上がる場所に脱出口が設けられていて、そこから教室の隅を通って廊下に出る事が出来るようになっていた。


その時点でフランはなぜそのような事を言われるのかまったく分からなかったが、今思えばこれ以上お化け役が逃げ出すような事を演劇部の学生たちは防ぎたかったのだろう。


少なくともフランが覚えている範囲では、のっぺらぼうが無いはずの目から涙を流し、ゾンビが墓の中に逃げ込み、ドラキュラが棺桶の中に引きこもり、幽霊が井戸の中に飛び込んでいたはずだ。


あのまま続けていたら犠牲者・・・はもっと増えていたかもしれない。


事実、フランとレティアが出ていってすぐに入り口には準備中の看板が置かれ、教室の中から泣き声が響いてきた。


「しかし、死者は大人しく墓にいるべきです」


「だからって物理的にそれをしないで」


ゾンビの話をすれば、フランは教室の中に運び込まれた土の中から出てきたゾンビ役の学生を盛り土に蹴り戻してやった。そして二度と現世に戻ってこないよう上からしっかりと土をかぶせて横にあった墓石を上から乗せた。やはりあれくらいやらないとゾンビは復活するだろう。


「夜な夜な人を驚かせるなんて、変質者と誤解されてしまいます」


「のっぺらぼうの顔にを書いて楽しかった?」


「ええ、恐怖じゃなくて笑い声が出そうでした。あれがお化けの正しい退治法ですね、恐怖を笑いに換えるという」


持っていたペンでのっぺらぼうの顔に目、鼻、口を書いてやった時は腹を抱えて笑いそうになってしまった。あれほど可笑しなお化けに恐怖しろという方が酷である。


「……フランって怖いもの知らずね……」


「そうでなくてはお嬢様を守れませんよ」


「にゅお!?」


フランの台詞にレティアが奇声を上げる。


「お嬢様?」


「あ、あんたね、そういう事をさらっと言うなんて……」


「??」


メイドとして至極当たり前の事を言ったつもりであったが、レティアはどうも何かを誤解しているようで顔を真っ赤にして身体をくねくねさせている。





ポーン♪




ふとその時、校内放送を告げる音が鳴った。


『こんにちは、こちらは学園祭実行委員会です。ただいま、各教室棟各階の掲示板に3日目、最終日に行われますグローリア武闘祭の行程表、及び対戦表を張り出しました。出場者の方はお早めにご確認ください。変更の際は逐次放送でお知らせいたします』


廊下にいた学生たちが放送終了と同時に廊下の壁にある掲示板に集まり始める。


掲示板は魔法技術を利用しており、必要に応じて連絡事項を浮かび上がらせるようになっている。これによりいちいち張り出す手間が省けると同時に、紙の節約にもなる。


群がる学生をかき分けながらレティアと共に掲示板の前までやってくると、掲示板には「武闘祭行程表・対戦表」と題された欄が作られていた。


「随分とたくさんいますね……」


「個人戦とタッグマッチ、両方のようね」


対戦表を見ればトーナメントの表は2つあり、1つは個人戦、1つはタッグマッチのものになっている。個人戦のトーナメント表を上から見ていくと、第1試合第3回戦にウルの名があった。対戦相手はどうやら1年生のようだが、戦う前から同情してしまう。


「あたしたちは……」


タッグマッチの表に視線を移し、フランは自分とレティアの名を探し始める。二人一組のため名前が小さく2つの名前が並んでいるため、そこから自分たちの名前を探すのは地味にたいへんだ。


「えーっと、あ、フラン、あったわ」


「どこです?」


フランより先にレティアが見つけたようでレティアの指差す方を見ると第1試合第3回戦のところにフランとレティアの名前があった。対戦相手は上級生のようで、始めて見る名前だ。


「ヴェスト・ハイサックとゾーヤ・ジャジュチェンコ……、面倒な2人に当たったわねぇ」


「ご存じなので?」


複雑な表情を浮かべて唸り声を上げたレティアの方に振り向くと、レティアが小さく頷く。


「まあ、一目見れば分かるわよ。その時あなたもあたしの言った『面倒』の意味が理解できるわ」


「はあ……、おや?」


何故か「説明するのは面倒」オーラを漂わせているレティアから表に視線を戻すと、見知った名前があることに気が付く。


レイナとミコトの名前が表の一番下の方に載っている。


「これは、決勝まで行かないと当たらないわね、何となく安心」


「レイナさんは悔しがってるでしょうね」


「絶対地団駄踏んでるわよ」


クスクスと笑いを零すレティアと共にフランをつい笑みを浮かべてしまう。


「あとは……、あれ?」


「ん、どうかした?」


出場人数は全部で40人、つまりは20組が戦うという事になっている。トーナメント表は2回戦が終わった後、シードと勝ち上がってきたコンビが戦うようになっているのだが、そのシードに書かれた名前を見て運営側の意図が透けて見えてしまった。


シードは全部で4組、その全てが教員のタッグになっている。


生徒と違って教員は名前の後に書かれるはずの学年がなく、代わりに教員と書かれているのですぐに分かった。そしてその中にもまた見知った名前があったので勝ち上がってきた生徒を餌に教員の実力を知らしめるという目的が容易に想像できてしまう。


フランとレティアが勝ち上がった場合対戦するシードの教員はあの子供としか思えなかった新任教師クランと、コンビを組むヘレン・ヴィルヘルムという教員の名前が書かれている。


「ああ、クラン先生とヘレン先生ね。この間クラン先生に授業であなたの事を聞かれたんだけど、どこで知り合ったの?」


「新学期始まってすぐに学食でお会いしまして、学園祭のお話とかして頂きましたね」


「飛び級で卒業とかすごいわよねぇ、頼りなさはあるけど」


「はは、確かに」


困って泣き顔になっているクランの表情が容易に想像できてしまう。


年上なので心の中で一度謝罪をしておく。


「だけど、まさかヘレン先生が出るなんてなぁ」


「ご存じなので?」


「魔法薬学の先生よ、男子には大人気なの。……この意味分かるわね?」


「女子には不人気、と」


「ご名答。女のあたしから見てもすっごい美人なの。おかげで男子どもは鼻の下伸ばしてデレデレしちゃって、彼女持ちとかの男子だと即破局もありうるわ」


「女子生徒からすれば、恋路を邪魔する小悪魔といったところでしょうか?」


まさしくその通り、とレティアが鼻で笑う。


「まあ、ヘレン先生自身はすごく良い人だから男子に人気があるのはしょうがないのよ。ただ自分が男子にそういう影響を与えている事だけは認識してほしいなぁ」















武闘祭の対戦表も確認したため、やらなければならない事は完璧になくなった。


メリスたちとの合流時間までは完全な自由時間だ。


そういう訳で、学園内を散策しつつ時折出し物を覗いてみるという事を繰り返していると、校庭の出店にテトが興味津々になっているのを見つけた。


「テト、何をしているんですか?」


「おお、フラン、良いところへ来てくれた。是非ともあれを買って欲しいのじゃ」


「確かメイド長からお金貰ってたと記憶しているんですが?」


別れる前にメリスから小銭を貰っていたのを確かに見ているフランはそう聞き返す。


するとテトは「にゃはー」と情けなく笑いながらポケットに手を突っ込み、有り金を手の平に出してみせた。


「情けないが、後先考えず買い物をしていたらもう残りがこれだけなのじゃ」


手の平に乗っているのは小銭が数枚だけ、数時間という短時間で相当の数の店を回ったようだ。


「まったく、もう少し計画的にお金は使ってください」


「ううむ、今回は反論できんのう、善処するぞぃ」


ポケットから財布を取り出し、中から数枚の小銭を出してテトに渡してやると、テトは目を輝かせて飛び上がりそうになった。いや、事実少し飛び上がりそうだったので慌てて脛に蹴りをいれた。


「~っ!! あ、ありがとうなのじゃ、フラン」


「フランって、テトには容赦ないわよね……」


「仕方ありません。あたしにそうさせるテトが悪いんです」


「にょ!? 全責任は我にあるというのかの!?」


「当たり前です!」


とっとと買ってこい、と目で言ってやるとテトがビシッと敬礼して走り出した。


どうやら買いたかったのはたこ焼きのようだ。ご機嫌な様子で代金を払ってたこ焼きを片手に戻ってくると早速爪楊枝でたこ焼きの1つを突き刺し、口の中に放り込む。


「ん~、ホクホクで美味い♪」


「そういえば、テトって熱い物でも平気で食べるわよね」


「猫舌なんて、普通の猫だけじゃ」


作りたてで熱々のたこ焼きを涼しい表情で頬張るテトは上機嫌にそう答える。


「ほれ、フランも」


「あ、どうも……?」


2本あった爪楊枝のもう片方でたこ焼きを刺し、フランに差し出してくるのを受け取ろうとしたらテトが頬を膨らませながらその手を引っ込めてしまう。


「フラン、我は学園を回っている時に聞いたぞ? こういうのは『あーん』してもらうものだと」


「どこでそんな話を聞いたのか知りませんが、自分で食べられますから」


「嫌じゃ。そうじゃないと我がつまらん」


意地悪そうな笑みを浮かべながらそう言うテトにフランの隣のレティアがドぎつい視線を送っている。


それがどういう意味を持っているのかフランには理解できなかったが、レティアが今にも噴火しそうな火山に見えて仕方がない。


「ふむ? なんじゃレティア、お主もして欲しいのか?」


「んな訳ないじゃない。むしろあたしがしたいっていうか、ゴニョゴニョ……」


「ううん? 何を言っているのか聞こえんぞー」


「うっさい! お黙れ! さっさと次行くわよ!」















「おや、噂をすればですねー」


フランがレティアとテトと共に校庭の出店を回っていると前から聞いたことのある声が聞こえてきた。


人ごみの中に視線を向けると、周りの人々よりも頭一つ低い・・人影が金髪の女性と共に姿を現した。


「あ、クラン先生、ヘレン先生、こんにちは」


その姿にレティアが少し姿勢を正してお辞儀をする。


「はい、レティアさん、こんにちは、それとフランさんでしたね、今日はレティアさんとご一緒に回っているんですね」


「あら、その子がフラン? なるほど、確かに見どころがありそうじゃない」


「ヘレン先生、あなたがそういう事を言うと妙な語弊を招きかねないんですが」


「あら、一応私、人を見る目はあるのよ?」


クランの隣にいた女性、ヘレンの言葉にレティアが苦笑いしている。


金髪の美しい髪を長く伸ばし、少し吊り上った切れ長の瞳、そして出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる身体、そしてそれをさりげなく強調する服を着たヘレンは悪びれた様子もなくフランと握手をする。それから隣にいたテトとも握手をしてお互いに軽く自己紹介をする。


すると握手をしたテトが感心したように目を見開いた。


「ほお、お主、ヘジョナウの使い手か」


「あら意外、手で分かるの?」


テトの言葉に今度はヘレンが驚いている。


「うむ、久しく使い手に会ったとはなかったが、よもやこのような場所で会えるとは思わなんだ。コントラ・メストレか?」


「いいえ、プロフェッソールよ。私もヘジョナウを知っている人がこの町にいるとは思ってなかったわ」


聞き慣れない言葉の応酬にフランとレティアは首を傾げてしまう。


それに気が付いたのかクランが歩み寄ってくる。


「ヘジョナウというのは古武術の一種です。蹴りを中心とした独特のスタイルのために修得者が少なく、そのせいか知っている人も少ないんです」


「コントラ・メストレとか、プロフェッソールというのは?」


「階級です。一番上が師範メストレ、次いで準師範コントラ・メストレ、そして教師プロフェッソールと続きます」


「という事は、ヘレン先生ってその古武術の上から3番目の地位にいるんですか?」


レティアが感心した様子でテトとヘジョナウなる武術の話で盛り上がっているヘレンに視線を向けている。


ヘレンはまるで旧知の友と話しているかのように嬉しそうにテトと話をしている。それに対するテトも似たような表情だ。


「あの方、ファルケン家の関係者のようですけど、あの人もヘジョナウを?」


「いや、どうでしょう。少なくともヘジョナウという言葉をあたしは今日初めて聞きましたね」


「そういえば、先生さっき『噂をすれば』って言ってましたけど、あたしたちの話をしていたんですか?」


フランがテトとヘレンを眺めながらクランの話を聞いているとレティアがその間に割って入りながらクランに質問をする。


「あ、そうなんです。先ほど武闘祭の対戦表が張り出されましたよね、そこでお2人が勝ち上がれば僕たちと戦うそうじゃないですか。楽しみにしていますよ♪」


「え、ええと、つかぬ事をお聞きしますが、戦えるんですか?」


レティアの質問にフランも失礼とは思いながら頷いてしまう。


クランは外見が子供同然であるため、どう見ても激しい戦闘が出来るとは思えなかった。教えている科目も文系科目、インドアを体現したような教師に思える。


するとクランはレティアの質問にふて腐れたかのように頬を膨らませると腕を捲ってみせる。そこには複雑に入り組んだ文様のようなものが描かれている。


「刺青……? 先生、教師が刺青は良くないかと……」


「違いますよ、お嬢様。これ、魔法術式です」


「その通りです、レティアさん、ちょっとお勉強不足ですよ?」


描かれていたのは魔法を発動するために必要な魔法陣を簡略化、変形させたものだった。腕にまとわりつく蛇のように見えるそれは捲られた部分だけではなくどうも腕全体に描かれているようだ。


「簡単な魔法は魔法陣、魔法術式無しでも発動します。ですが大魔法、こと精霊魔法に関しますと、より複雑な手順が必要なため頭をパンクさせないように魔法術式を作るんです。僕の場合、使える魔法が限定されますがこうして腕に刻み込む事でタイムロスを少なくできるようにしているんです」


自慢げに説明をするクランであったが、レティアは半分ほど頭に入っていないようだ。頭の上に「?」マークが見えるような気がする。


「つまりですね、お嬢様。クラン先生は大魔法を簡単に使えるんです」


「ええ!? あたしまだ中級魔法も魔法陣無しじゃ使えないのに!?」


「教師と生徒の差ですね。飛び級出来たのは魔法術式をこうして身体に刻み付ける事の有用性を論文にして提出したこともあるんですよ?」


「お~い、クラン、こちらの手の内をあまり曝け出さないように」


話が終わったのかヘレンとテトが戻ってきた。


「あ、すいません」


「それじゃ、私たちはまだ見回りがあるから、これくらいで。レティアとフランさん、対戦出来る事を楽しみにしてるわ」


ヒラヒラと手を振りながらクランとヘレンは再び人ごみの中へと消えていく。


それを待ってテトが2人に間に入って耳元で話し始める。


「あのヘレンとやら、見た感じでは生半可な実力ではなさそうじゃ。おまけにあのクランという青年、後衛としては十分すぎる実力を持っている。見た目に似合わぬ強さじゃぞ」


「さすがはシードですね。戦うとなれば、心してかかることにしましょう、お嬢様」


「当たり前よ。けれどまずは初戦突破よ」


フランとレティアはお互いに拳をぶつけ合って気合を入れ直した。



はーい、皆さん、GWをどうお過ごしでしょうか?


何やら豪雨に襲われたりして結構大変なGW後半なんですが、ハモニカはそれなりに楽しんでおります。具体的に言うと、やりたい事が出来るという素晴らしさを噛みしめながらゲームしたり読書したり野球見たり|(これ最重要)小説書いたりしております。


ああ、それと今後の予定なんですが、GW明けの2週間は週末ハモニカが小説を書いてる暇がないかもしれないのです。週末にガッと書いてるんですが、一応2週間お休みするのは嫌なので平日に書いておきたいところですが、どうなるか分からないので一応お知らせしておきます。


理由?


祖父が能の舞台に立つので見に行きます。あとハモニカが病院に。


能って観るの初めてなんですよね、どんなのか楽しみです♪


ではでは、また次回。


誤字脱字報告、ご感想などお待ちしております。





△▽△▽△▽△▽△▽△


追伸


先ほど見たら「とととモノ」のお気に入り登録数が100になっていました。上下するのでもちろん読者様が見た時99になっていたりもするかもしれないんですが、ハモニカが見た時は100でした。


ありがたい限りです。


本当に、ありがとうございます。

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