第13話 メイドも恐れるは……
タイトルは~、まあ、ネタが尽きたわけじゃないんですが良い名前が浮かばないのです。
このままやれるのかはお先真っ暗ですがww
そして、本編に行く前に一言言いたいです。
どうしてこうなったしwwww
詳しくは後書きで。
では、どうぞ。
いろいろとあったが庭の改修工事も終わり、ちらほらと屋敷の前の通りの街路樹が蕾をつけ始めているのが目立ってきた。
緑も増え、特に学園周辺ではにわかに慌ただしい日々が増えてきたように思われる。
当事者であるレティアも進級に向けての準備が始まっている。
とはいえ、グローリア魔法学園では基本的に持ち上がりのため、クラス編成が変わったり担任が変わると言った事はない。レティアのクラス、4年C組のジョブは今年からの担当なのだが、これは前年度までの教師が入院した事が原因だそうだ。
教室が変わるため、それに備えて学校に置いていた教材などを続々と屋敷に持って帰ってきているのだが、時折資料などの間から古いテスト用紙が出てきたりするなど、一悶着もあった。
フランも何度かレティアと共に学園に行き、荷物を持つ手伝いをしているのだが、テスト用紙が視界に入っても何事もなかったかのようにスルーする事にしている。時折赤点ギリギリの点数のテストを持って帰る事も出来ず放置し、今になって発見という事もクラス内ではあるそうだが、幸いレティアはそこまで酷い点数を取ってはいないため、精々「やらかした」といっても6割程度の点数である。
「ほら、フラン、しっかり持ってよ」
「は、はい……」
教室までつき合わされ、4年C組の学生たちに囲まれ、「また教えて!」と懇願されるというハプニングはあったが、何とか教室の扉付近に作られた包囲網を突破し帰宅の途につく事が出来た。
持って帰らなければならない物の大半はフランが持っている。大きな物で言えば、魔法実験に際して作ったオブジェや、厳重に包まれている水晶玉といったところだろうか。前者は壊れても良いそうなのだが、後者は来年度も使うので落としても壊れないように中に柔らかいクッションを入れた箱に入れられている。
因みにオブジェはどうやら誰か人を題材にして作ったらしく、全長30センチほどの人形に仕上がっている。細部までは作られていないので誰が題材なのかは分からないが、レティアとしては未完成品だそうで、そのうち完成品を作ってやると息巻いている。
「しっかし、フランさんは力持ちよね」
「まったくもって尊敬しちゃうなぁ」
「脳に栄養行ってるんでしょうね、誰かさんと違って」
今日はレティアは友人を連れ添って帰る事にしていたらしく、荷物を持たされているフランは横を歩く少年少女にいろいろ言われている。
「なっ、テル、それはあたしの事かしら!?」
一番最後に黒い笑みを浮かべながら随分な事を言われたレイナが茶髪の少女に噛みつく。
だが少女はまったく気にせずうっすらと笑みを浮かべたままレイナに視線を向ける。
「ま、まあまあ、姉さん、落ち着いて? テレージアさんだって悪気があって言ってるわけじゃ……」
今にも胸ぐら掴みそうな勢いのレイナを止めたのは弟のホムラ・ミコトだ。レティアたちの1つ下の学年、3年生ではあるが成長著しく、レイナを10センチ近く身長で抜いているため、レイナは簡単に動きを封じられてしまう。
姉であるレイナと違って穏やかな性格で、成績も優秀、女子からは人気があり、男子からは羨望と嫉妬の対象にされている、そうだ。フランが直接その現場に居合わせたわけではないから確証はないが、人柄もよく、人気があるのには納得がいく。
「ミコト君、あたしは悪気があってやってるのよ」
どこかやる気の無さそうな表情をしながらミコト越しにレイナに思いっきりニヒルな笑みを浮かべながらそう言うのはレティアのクラスメイト、テレージア・テーアだ。同世代とは思えないほど身長が低く、それとは逆に同世代より圧倒的な存在感を持つ胸により、レティア曰く「ロリ巨乳」の代名詞とされているそうだ。
読書が趣味だそうで、鞄の中には常に数冊の分厚い本が入れられている。
愛称はテル、略し方が難しかったらしくこの愛称を決めるのにも数時間を要したとのレティア談がある。
「な、なんですってぇ!?」
「あ~ほら、レイナ、いい加減突っかかるのやめなさいって。他の人の迷惑になるでしょうが」
「お黙り、レティ! 今までも散々馬鹿にされてきたのよ。今日と言う今日は許さない!」
「あたしに勝ってるのが身長だけの人が言うじゃない」
「喧嘩するほど何とやら、って奴ね……」
仲裁に入っているミコトに同情の眼差しを送りつつも、レティアは止める気が無いのか間に入ろうとはしない。
「あの、止めなくていいんですか?」
「良いのよ、そのうち弟君が止めるから」
「ミコトさん、が?」
初対面の人には基本的に年上だろうが年下だろうが敬語を使うフランはレイナの両手首を持って姉を宥めているミコトに視線を向ける。
「姉さん! いい加減にしないと、嫌いになるよ?」
掴みかかられそうになっているテルからレイナを引きはがし、その耳元でミコトがそう言うと、その瞬間レイナの動きがピタリと止まる。
そして首がさび付いた金属のような音を立てながら回ってレイナはミコトの顔を見た。
「ミ、ミコト……?」
「人に迷惑かける姉さんなんか、嫌いだよ?」
「ミコトォォォォォッ! お姉ちゃんを嫌いにならないでぇぇぇぇっ!!」
即座に身体を反転させ、ミコトに泣きながら懇願し始めるレイナ。
「…………」
唖然とした表情でその光景を見つめていたフランの隣でレティアが小さくため息をついたのが僅かに聞こえた。
「あんのブラコン……」
「ミコト君もレティの扱いが分かってるのよ」
泣きながら周りを気にもせずミコトに許しを請うレイナを置いて、事の発端であるテルがフランとレティアの隣にやってくる。
「テル、相変わらず自分で種を蒔いておいて回収しないのね……」
レティアが呆れながらそう言うが、テルは全く気にしていないようだ。不敵な笑みを浮かべながら公衆の面前で姉に泣きながら抱き付かれているミコトを見ている。
「禁断の兄弟愛、新聞部に良いネタを提供できそうね」
「それが本来の目的なのね……」
いつの間にかテルの手の中には一眼レフのカメラが握られており、カシャッという撮影音が響いている。
「お願い、ミコトォォォォッ! ……ん? って何撮ってんのよ、あんたって奴はァァァァッ!!」
「ふふふ、遅い、全然遅いよ」
ようやくレイナが撮影されている事に気が付いた時にはテルはカメラを片手に脱兎の如く走り出していた。鬼の形相でそれを追うために走り出したレイナが猛烈なスピードでフランの横を駆け抜けていくと、あまりの勢いに手に持っていた荷物が落ちそうになる。
「おっと」
バランスを取って荷物の落下を防ぎ、2人が走り去った方に視線を向けると、既に2人の姿はなく、路地の方にテルが逃げ込んだのだろうと見当をつける。
「もう、姉さんたら……」
ため息混じりにミコトが腰に手を当てながら2人が走り去った方角を見つめている。
「い、いつもあんな感じなんですか?」
「姉さんとテレージアさん? そうだね、仲は良いんだけどね」
「あの2人が笑いながら話し始めたら天地がひっくり返るわよ」
「あら、それは随分な言い方ね」
「うひゃあっ!?」
普通に話していたら当の本人であるテルがいつの間にか隣にいるのでフランは今度こそ驚いて荷物を手から落としてしまう。だが地面スレスレの所でレティアがダイビングキャッチし、水晶玉の入った箱が落ちるのを阻止した。
「テレージアさん、姉さんは?」
「相変わらず気配が無いわねぇ」
フランと違いテルの奇行のようなものには慣れているレティアとミコトは前触れもなく現れたテルに驚く事もない。
「撒いたわよ。あたしはこれを取りに来ただけ」
テルはそう言うと両手が塞がっているフランの胸にいきなり手を突っ込んだ。
「へ――――――ッ!?」
「なっ!?」
さすがに、これにはレティアも驚き口をあんぐりと開けるが、当のフランは何故自分がこんなことをされなければならないのかさっぱり分からず硬直してしまう。
「なななな、なにを……?」
「……あら? こっちじゃなかったかしら、もう少しこっちだったかしら」
「ひゃわっ!?」
服に手を突っ込まれ中をまさぐられるが、両手が塞がっているフランはどうすることも出来ない。ただ、なされるがままにされる。
「ああ、あった」
顔を真っ赤にして固まっているフランとレティア、そして顔を背けつつも若干頬の赤いミコトをよそに、テルはお目当ての物を探し当てたのかフランの胸元から手を抜いた。その手には黒い円柱状の物が握られている。
「カメラは予備があるからどうでも良いんだけど、こっちはね」
「い、いつの間に……」
明るい所で取り出したら撮影したものもおじゃんになるような気がするのだが、テルの事だ、対策はしてあるのだろう。円柱状のそれを慣れた手つきで専用のケースに入れるとテルはそれを自分のポケットに滑り込ませる。
「という事は、姉さんは……」
「今頃川に投げ込まれたカメラを探して躍起でしょうね」
何とも形容しがたい、悪魔のような笑みを浮かべるテルにフランは唖然としてしまう。
「……ってテル! あなた、うちのフランに何てことしてくれたのよ!? 公衆の面前で胸まさぐられるなんて、セクハラで訴えるわよ!?」
「大丈夫、フランさんが持ってる荷物で前からも後ろからもあたしがした事は見えてないわ」
「そういう問題じゃなくてね……」
「お、お嬢様、テレージアさんもそういう意図でやったわけじゃないんですから、抑えて……」
「案外、揉み応えがあったわね」
このままでは泥沼だ。
フランは直感でテルがレイナに引き続きレティアをネタにして遊んでいる事を察知し何とかレティアの暴走を食い止めようとする。
「ミコト! あんたも姉の仇取りなさいよ!」
レティアは自分の前に立つフランに邪魔されてテルに近づけないので後ろにいるミコトに支援を要請した。だがさすがに姉以外の女子に手を上げる事には些か以上の抵抗があるのか困惑した表情を浮かべている。
「ああ、それとフランさん?」
「な、なんでしょうか?」
レティアを抑え込むフランにテルが顔を近づけ、笑みを崩さず手を差し伸べてくる。
「テル、で良いわよ。あたしの本名、毎回言うの面倒でしょう?」
「……わ、わかりました。でしたらあたしもフランと呼び捨てで構いません」
フランは差し伸べられた手に反射的に反応して握手をする。
だが、その瞬間、両手で丁度バランスを取っていた荷物が傾き、レティアの方に倒れ掛かる。
「ちょっ、フラン!」
「あ……っ!?」
慌てて荷物を抑えようとするが、なんとテルがフランの手を掴んだまま放さない。驚いてその顔を見上げると、先ほどまでの友好的な笑みは不敵な笑みに姿を変えており、反対側の手には先ほどのカメラと同タイプのカメラが密かに握られている。
「ああっ――――――!!」
荷物がレティアの上に落着する。
量はともかくとして至近で荷物の襲来を受けたレティアは踏ん張ろうとするがその甲斐もむなしく地面に倒れ込み、荷物の下敷きになってしまう。
「お、お嬢様っ!」
「ふっ、レティのドジっ子画像、幾らで売れるかしら」
荷物を退かしてレティアを起き上がらせようとしているフランを尻目に、テルはくすくすと笑っている。
(この人は、いろいろと要注意人物だ……)
レティアを引っ張り起こしながら、フランはテルにだけは油断しないよう心に決めた。
「はぁ、家に帰るだけなのになんでこんなに疲れたんだろう……」
隣を歩くレティアが頭を抱え、ため息をついている。
フランも同じ心境だ。
フランが懇願してレティアの画像は出回らないよう頼み込んだのだが、不敵な笑みを崩さなかったテルからその返事を得る事は出来なかった。出回らない事を切に願うしかない。
「お嬢様のお友達は、独特な方が多いですね……」
「無理しなくて良いわよ。あなただって突然胸に手を突っ込まれたんだから」
「はあ……」
あの後、カメラを川から回収したは良いが中身がない事に気づき鬼から阿修羅へとその形相を変えたレイナが戻ってくると、再び鬼ごっこが再開されることになった。今度はテルも本気を出して逃げ出したようで、戻ってくることはなく、しばらくしてミコトは消えた2人の行方を捜しに行くためにフランたちと別れた。
そして、フランとレティアはようやく平穏を取り戻して屋敷へ向かって歩いていた。
「他にもいるのよ、うちのクラスには。猪突猛進軽挙妄動な奴とか、馬鹿一直線とか……」
「す、すごいですね……」
レティアのクラスの事だ、一言で言い表せるほど言葉通りという訳ではないのだろう。それは今のレティアの表情から窺い知る事が出来る。
「まあ、うちのクラスに限った事じゃないけどね」
「大変ですね……」
「見てる分には楽しいんだけど、巻き込まれるとたまったもんじゃないのよ」
「さっきのなんて、まさにその典型的な奴よ」と言いながら、レティアは項垂れる。
フランとしてもレティアの感想には全面的に賛成であるが、あんなに騒がしい場所に立ち会ったのも初めてなフランはどこかあの状況を楽しんでいたのかもしれない。レティアほど文句を言う気にはなれない。
以前レティアのクラスの自習に付き合った時も、進んでやったわけではないが嫌ではなかった。レティアと肩を並べて何かが出来る喜びもあり、同時に自分の知らない事を知る良いきっかけにもなったのだ。
「あ~、テルの奴、明日会ったらとっちめてやらないとな」
「ふふ、お手柔らかにしてあげてくださいね?」
「フラン、あなた被害者なのよ?」
呆れた表情でレティアが視線をフランに向けてくる。
「まあ、驚きはしましたけど、嫌ではありませんでしたから」
「へぇ~」
「な、なんですかその目は……」
レティアの今の目は良からぬ事を企んでいる目だ。
レティアは腕組みをしてフランに近寄り、その眼前でニンマリと笑みを浮かべる。
「なら、あたしもやってやろうか?」
「何を、とは聞きません。断固拒否します」
「ちぇ~、フランのケチ」
面白くなさそうな表情をしてそう言うが、すぐにその表情に笑みが戻る。
フランもそれに釣られて笑みを零してしまう。
「傍目から見ても分かってたよ。フランがあの騒がしい状況を楽しんでるのは」
「ばれていましたか。すいません、本来であれば全力でフィルムを奪還すべきだったんでしょうが」
「良いのよ、フランが楽しそうにしてるんだったら、それでいい。別に命取られるわけじゃないしね」
「撮られましたけどね」
レティアは上手い事を言った、という表情をしながら両手の親指と人差し指で長方形を作ると、片目をつぶって手をフランの方に向ける。
「ふふ、被写体としてのフランは、きっと最高級の素材でしょうね」
口でシャッター音を呟きながらレティアがカメラマンの真似事をする。
フランは苦笑しつつその様子を見つめながら、また広がった自分の世界に喜びを感じていた。
「はあ、はあ、ようやく追い詰めたわよ……」
狭い路地、行き止まりになった壁の前で2人の少女が対峙している。
1人は茶髪の少女、壁を背中に逃げ道を失ったにも関わらず、不敵な笑みを崩さない。
もう1人は赤髪の少女、荒い息を吐きながら険しい形相で対峙する少女との距離を徐々に縮めていく。
「ふふ、これで追い詰めたと思ってるのかしら、レイナ?」
「テル、さあ早くフィルムを渡しなさい。今なら死なない程度の火力にしてあげるわ」
「姉さん、ここ狭いからあんまり無茶すると自滅するよ?」
そんな2人にようやく1人の少年が追いつく。肩で息をしているがその表情に疲れの色は見当たらない。今まさに手の平に火球を作り出そうとしていた自らの姉に対して自分たちが置かれている状況をもう一度認識させるために辺りを見渡す。
「大丈夫、爆風を利用して退避するわ」
「いや、そういう問題じゃなくて」
「ミコト君に従っておいた方が良いわよ、レイナ。このままじゃご近所迷惑も甚だしいわよ?」
路地、という事は左右を住居に囲まれている。いくら加減したところでこんな所で魔法を使えば迷惑にならない方が難しい。
「ふふ、八方塞がりねぇ、レイナ」
より笑みを深め、テルは眼前で自らを今まさに狩ろうとしているレイナを見つめ、テルは口を開く。
「くっ……」
「隙あり!」
そして、レイナが攻撃を躊躇したその一瞬を見逃さず、テルは自らの魔法で土を操り地面へと姿を消す。
去り際にレイナを見据え、Vサインを作ってみせる。
「次の『グローリア・レポート』裏版をお楽しみに、レイナ♪」
「ま、待てえええぇぇぇぇぇっ!!」
土の中へ消えていくテルに手を伸ばすが、レイナの手は空を切る。
その瞬間、レイナの敗北は決定的なものとなってしまった。
「くっ、逃げられたか……」
「それじゃ、僕らも帰ろうよ、姉さん」
「ミコト、あなたもう少し姉のために動いてよ」
「あの人相手じゃ僕でも無理だよ」
ミコトがレイナの言葉に肩をすくめる。
「不幸よ……この鬱憤、どうすりゃいいのよ……」
レイナは路地から見える狭い空を見上げ、天を仰いでそう呟くしかなかった。
はい、新キャラ登場です!
応募キャラ1人目、テレージア・テーアさんです。
ジュラルミンダンボール様、ありがとーございました!
そして前書きの「どうしてこうなったし」と行きましょう。
え? ミコト君? 彼は元からいました。主にレイナと出すためにです。
さてさて、どうしてこうなったし、というのはテルの性格です。
ジュラルミンダンボール様から応募して頂いた際には
無気力半目の巨乳先輩型構ってちゃん系女子
という事でしたのでそれを念頭に設定を作っていたのですが、
・
・・
・・・
・・・・・・・無気力……?
全然無気力じゃない!
むしろ物凄くアクティブです!
ど、どうしてこうなったし……w
最初は描写にもあったように無気力を押していこうとしたんですが、いつの間にかパパラッチになっていましたww
なんか、もう、すいません。
さてさて、まあ、そんな紆余曲折もありましたけど、応募キャラはまだまだ受け付けております。正直どこで出すかとか未定なのはありますけどかなり設定には載ってます。
では、誤字脱字報告、ご感想お待ちしております。