第00話 始まりの夢
皆さん、メイドと聞いてまず初めに誰を思い浮かべますか?
作者はロベルタでした。だから銃なのかも……。
これ、ある意味駄目な例ですかね?w
まあ、
始めましょうか!
暗い。
目を閉じている訳ではない。
瞬きをしてみるが、閉じた時と開いた時の暗さはほとんど変わらない。
ただ、声が聞こえる。
女性の声だ。
酷くノイズがかかっていて、ほとんど聞き取る事も出来ないのだが、自分に向かって何かを言っているように思える。
声の主に心当たりはない。
いや、思い出せないだけなのだろうか。
物忘れが激しい自分の短所が改めて嫌になる。
記憶が曖昧になるおかげで、大切な事も、何もかも、時が経てば零れだしてしまう。
大切な人との思い出も。
楽しかった記憶も、悲しかった記憶も、今の自分を形作ったであろう全てを。
闇の中でふとそんな事を考えてしまう。
この自問自答もおそらくこれが初めてではないだろうし、最後になる気もしない。そのうち、こんなことを考えていた事すら忘れてしまうのだから。
悲しい、とは思わない。
いくら大切な思い出も、忘れてしまえば結局有象無象の記憶の中の1つであることに変わりはないのだから。
だが、記憶を共有した者が悲しむ顔は見たくない。
それくらいの感情はある。
声がまた響いてくる。
先ほどより幾分か鮮明になったようだが、それでもその言葉を判別するにはいささかノイズが酷い。
自らの意志は必死に言葉を理解しようとしている。
にも関わらず脳がそれを拒否しているかのようにノイズをかけてしまう。まるで思い出させないようにしているかのようにだ。
――――――あなたは誰?
声に向かってそんな事を尋ねてみるが、返事はない。
広い部屋で声が反響しているようにも聞こえ、同じ言葉を何度も言っている。
酷く切迫しているように聞こえる
それが何を意味するのか全く理解できずに、ただぼんやりとそれを右の耳から入れて左の耳へと流していく。
――――――あたしは、誰?
先ほどの問いを思い出して、そんな事を考える。
いや、名前はある。
大切な人から貰った、大切な名前。
埋もれていく記憶の中で、決して失いたくないと心の底から思えるものだ。そしてもちろん、それを与えてくれた人も忘れたくない。
だが、それが仮初めの名に過ぎないのは自分でも分かっている。
生まれて十数年、名無しの権兵衛であったつもりはない。
つまりは、本名という事だ。
最愛の両親から貰ったであろう自分の本当の名前。
思い出そうにも、そもそも親の顔すら覚えていないのだ、それについて考える事すら滅多にない。
――――――あたしは……
不意に、声が鮮明になってくる。
――――――起きて――――――
「ん……」
少女は目を覚ました。
それほど豪奢ではないが、決して貧しくはないベッドの布団の中でもぞもぞと足を引っ張る眠気を振り払ってベッドから脱出すると、窓のカーテンを横に引く。
朝の眩しい日差しが部屋に差し込み、少女は眩しそうに目を細める。
「……妙な夢を見ていたような気が……」
何か、心に引っかかる、そんな夢を見ていたような気がするが、夢の内容は不思議と頭の中に浮かんでこない。
首を傾げながら少女は窓を開け、部屋に朝の涼しい風を招き入れる。
壁掛けの時計に視線をやると、時計の針は丁度5時30分を指していた。
早起きがこの身体に馴染んだのも随分と昔のように思われる。
とはいえ、この時刻に起きなければ仕事が出来ない。
少女は部屋の隅にチョコンと置かれた机に向かうと、机の上に置かれていた黒い物を手に取る。布のようだが、形が独特だ。中央の幅が広くなっており、隅が著しく細くなっている。
少女はそれを顔の前に持ってくると丁度顔の左半分が隠れるようにそれを押し付け、細くなった部分を頭の後ろに回して慣れた手つきで結んでいく。
鏡を見る必要すらなく、その黒い布、俗に眼帯と呼ばれるものを装着した少女はベッドの布団を畳んでシーツに出来たしわを出来る限り手で伸ばしておく。
それを終えて少女はようやく着替えを始めた。
少女の身体には不釣り合いな大きさのクローゼットの扉を開くと、そこには数着同じ色、形状の服がかかっていた。少女はあまり考える事もなくそのうちの一着をハンガーごとクローゼットから取り出すとベッドの上に置いてブカブカの寝間着を脱ぎだす。
とてもじゃないが少女の小柄な身体には合っていないところを見るに誰かのお下がりなのかもしれない。
寝間着を脱いで先ほど取り出した服を手早く着ると、そこでようやく少女は鏡の前に行き、全体に不自然なところがないか確認する。
白と黒を基調とした服、フリルが特徴的な白いエプロンと黒い服を組み合わせたような服を鏡越しにしげしげと見つめ、本来とは反対側に折れてしまった部分を指で直していく。
長い茶色のウィッグを少女は自分の本来の髪の色である黒が見えないようにしながら装着、その上から机の引き出しに入っていた白いカチューシャをつける。鏡の前におかれた小さな瓶の中に浮かぶ茶色いコンタクトをぶれずに目に入れ、鏡の前に立つ。
これが少女の仕事服だ。
少女は鏡で最終チェックを済ませると満足げに頷いて少女は部屋の扉へと歩き出す。
ドアノブには革製のベルトが引っかかっている。そしてそのベルトにはホルスターが付いており、黒光りする鉄製の物体がホルスターに収まっている。
少女は扉を開く前にその俗にガンベルトと呼ばれる革製のベルトを服の上から腰に巻きつけるとホルスターから少女の顔ほどもあろうかという巨大な銃を抜く。
黒光りするその銃はところどころ塗装が剥げているが、手入れ自体は隅々まで行き届いているようだ。回転式の弾倉を開いて中に何も入っていない事を確認し、一度撃鉄を上げて軽く引き金を引く。
金属が金属を叩く甲高い音が響き、撃鉄が正常に動作することを確認する。
少女は30センチはあろうかというその銃をホルスターに戻すとホルスターの横についたポーチを開ける。
中には丁度先ほどの弾倉に収まりそうな大きさの丸い球が無数に入ったケースが収納されていた。中身が空ではない事を確認するとポーチを閉じる。
少女はガンベルトを掴んで思い切り回転させ、ホルスターを丁度背中に回って前からは見えない位置まで移動させる。
「さて、お仕事お仕事」
少女は1人小さくそう呟くと部屋の扉を開いて廊下へと出ていった。
はい、どうも、おはこんばんちは、作者のハモニカです。
この度はこの作品、『銃と魔法と眼帯とメイドモノ!』を左クリックして頂きありがとうございます。
ゆっくりと、まったりと、急がず焦らず、二日に一回更新なんて自殺行為はしないよう行きますので、完結までお付き合いして頂ければ幸いです。
『銃と魔法と眼帯とメイドモノ!』、略して『とととモノ!』
始まります!
パクリじゃないです!
読めば分かるです、きっと!!(キリッ
それと、誤字脱字含め、感想を頂けるとハライソに昇ってしまうくらいハモニカは喜びますので是非、ご感想を下さい!
ただ、ハモニカはチッキンなので批判的なご感想はかなーりソフトな言い方でお願いします。かな~り効きます、それこそ想定外に。
では!