5 交渉決裂
誘拐なんて冗談だろと思い聞いたのに、押し気味に勧誘までしてくるとは。お断りだと蹴り飛ばして、誰の娘に手を出したのか分からせてやりたいが、さっきこいつは『俺たちと』と言った。衛兵に突き出せば、他にも居るらしい仲間は見つからずじまい。最悪、街から逃げ出してしまう可能性すらあり得る――
「じいさんも孫になった覚えもありませんが――目的はお金ですか!? 私の可愛さに見惚れて犯行に及んだと思ってたのにがっかりです! こんな勘違い野郎は可愛さ余って憎さ百倍ぱんちで黙らせるしかないですね――お父さんが!!」
「……交渉決裂か、返り討ちにしてやる!!」
「待て待て!?」
――時間を、作戦を練る時間をくれ!
愛娘の喧嘩っ早さが元凶ではあるのだが!?
「子供の挑発になんか乗るな、落ち着けって。騒ぎを起こして困るのはあんただろ? クルリも――仲直り出来るな?」
「憎さ百倍ぱんち!!」
「――おうっ!!」
「脛を的確に狙うのはやめろ!」
「……何、騒いでるんですか? 外にお客様がお見えです。物凄い剣幕でボスを出せと中々の大所帯で。新人共がえらく怯えてるので、夫婦喧嘩に巻き込むのはやめてくださいね」
痛みにうずくまる部下に目もくれず、またかと言いたげな溜め息だけを残し、とても優秀な俺の秘書は報告だけして去っていった。
「…………すまない、言い訳でしかないが――どうしてこうなったのか、俺の方が聞きたい」
今回と前回の話は舞台裏になります




