3 誘拐事件
「誰か!? 誰かおるか!?」
衛兵が待機している詰所へ押し入る。
「――ッ!? 何か用か、おっさん!? 話なら外で聞くぞ!」
息を切らした部外者など即座に締め出される場所だ。当然の如く衛兵の一人が立ち上がり、威圧的な態度で詰め寄った。
「ちょっと、何の騒ぎ……?」
置かれた状況を強引に吐き出そうとしたところ、一番会いたくなかった見覚えがある女性と目が合ってしまう。
「――ッ!? ぬお!?」
「……あれ? あなた、クルリの友達の……?」
「クルリの母君殿!? どうしてここに!? いや、そんな場合では!? ……いや、いや、……………何でも……ござらん、邪魔をした」
「そうは見えませんけど? 何かあったんですか?」
「………う、あ。…………これを、読んでもらいたい」
強く握りしめ、くしゃくしゃになっている一枚の紙を手渡そうとする。
「いやいや、後は俺に任せてくださいよ。こんなおっさん、ばっちり締め出しとくんで……おい、こっち来い!」
それを先ほどの衛兵が遮ろうとするのを跳ね除け、クルリの母親は奪い取るように受け取り、満面の笑みで尋ねる。
「…………これを、どこで?」
「吾輩の前を歩いていた男が落とした物だ。すぐに拾い届けようとしたが見失ってしまった。ちなみに吾輩には妻子も子もおらん。物騒だと笑い飛ぶすことも出来ようが――いや、クルリが……攫われてしまった」
「……お金の受け渡し場所、日時――これ、誰にも話さず必ず一人で来いって書いてますけど?」
「つい先ほどの出来事なのだ。受け渡し場所をすぐに包囲すれば助け出せるかもしれん。吾輩一人ではどうすることも……我が街の衛兵は優秀であろう? ……手伝ってほしい。この通りだ」
「最近、子供が行方不明になる事件が増えてますが、身代金を要求されたって話は聞かないですね。子供を遠方に売り飛ばすよりも、この金持ってそうなおっさんを脅した方が儲かるとでも思ったか? 欲が出たな」
横から紙を盗み見た別の衛兵が事件のあらましを語る――そして、続けた。
「どうします、団長? とびっきりの手がかりですよ? ……ちょっと、聞いてます? あー、駄目だこりゃ。おーい、みんな集まってくれ。外で見回りしてる奴も全員集めろ――戦争だとさ!」




