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「おじさん、もしかして迷子ですか?」


 声を掛けられても無視するようにと教えられる見本のような人だったけど、さっきも何処かですれ違ったような気がして、つい声を掛けてしまった。


「――ッ!? 困っている人を放っておけないとは、なんと優しいお嬢さんなのだ!? ならば吾輩はその優しさに応えるためにも、散歩してるだけだったのだが、喜んで迷子の汚名を被ろうじゃないか!」


「見た目以上にやべー奴でした。今すぐ走って逃げないと、明日の朝日も拝めないかもしれません」


 ……これが好奇心に身を任せた結果か。

 心なしか、道行く人の笑い声が遠のいた気がする。


「お嬢さんの言う通り、道に迷っていてな――ちょうど誰かに道を尋ねようとしたところに天の助け! だが――何処に向かおうとしてるか良い案が思いつかなんだ。誰かと会話など久しぶりすぎて、思うように言葉も出てこん! うむ! ――どうせなら道の端に座り込んで、お互いの夢を語り合わないか!?」


「申し訳ありません手短にお願いします。急いでおりますので――」


「いきなり他人行儀な喋り方ぁ!? 吾輩と君との仲ではないか!?」


「知らない人が親しげに話し掛けてきたら何か良からぬことを企んでいると、両親に教わりましたので」


「話し掛けてきたのは君からのはずだが――何も問題あるまい! 何故なら――吾輩と君は『大・親・友!』であるからな!」


 ……いちいち声がでかい。騒音の主は視界に入っているはずなのに、通行人からの一瞥はなし。私たちと関わり合いになりたくないのかと被害妄想ばかりが膨らむ。

 衛兵さんが運良く通り掛かって、しょっぴいてくれるのを待つしかなさそうだ。


「吾輩も君のように『良い人』と思われたいのだが、うまくいかなくてな。普段の心構えというものを是非伝授してもらいたい。……やはり笑顔か? だがな、家の者には気持ち悪いと大絶賛不評中なのだ」


「……はぁ」


「知っておるか? 大型の馬車も通れず不便だったこの街に、新しい橋が出来たのだ。通りに活気が満ち溢れておるだろう? 街の人口が増える――おかしな輩もな……待てども衛兵の姿は見えん。親御さんに心配される前に帰りなさい」


 ……悪い人では、ないのだろう。


「おじさんは一人で帰れますか?」


「無論である。幼子を不安にさせる訳にはいかないゆえ、この街のことは熟知しておると宣言しよう。安心して帰るがよい」


「私はクルリっていいます。おじさんの名前は?」


「名乗るほどの者ではない。吾輩などおじさんで充分だ。それではまたな、クーたん」


「二度とその名で呼ばないで」


「何故であるか!?」



 これが私とおじさんの出会い。

 小さな街で起こった悲しい物語――

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