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第29話 後悔させてやる

「D-1教室のミスティだな? ちょっと来てもらうぞ」


「えっ、ちょっ、むぐぅっ!?」


 その日の放課後、俺はさっそく行動を開始した。


 女子寮に帰ろうとするミスティなる生徒を背後から取り押さえ、口を塞ぎ、人気(ひとけ)のない学舎裏に拉致したのである。


 学舎裏に連れてきたところで解放してやる。


「あの、えっ、なに? なんなの?」


 すでに待機していたアリア、レナ、グレンの前で、ミスティは混乱している。


「ごめん、ミスティちゃん! うちのカインが手荒な真似しちゃったみたいで! ただちょっと手伝って欲しいだけなの!」


「えええ、アリアちゃん? というか、みんなSとかAのエリートな子ばっかりじゃない。どういうことなの? ねえ、どういうことなの?」


 俺たちは手短に、俺やアリアが退学の危機であることと、それを庇ったエミリー教師がクビを言い渡されたことを説明した。


「そこで逆に教頭のほうをぶっ潰し、それらの処分を撤回してやりたいんだ」


「それで、なんであたしに?」


「アリアからは学園随一の情報通と聞いていてな。教頭をやり込めるような情報はないか?」


「って、言われても……」


「入学からほんのわずかな間に、学園中の生徒の大まかな情報を把握してたそうじゃないか。どんな手品か知らないが、それだけのことができるんなら、当然、教師陣のことも調べているんだろう?」


「いやその、あたし、興味あることしか調べないし。そんなスキャンダルなんて……」


「なんでもいい。手がかりさえあれば、あとは俺たちが掘り起こす。なにかないか?」


「えーっと……あるかないかでいったら……ある、かも?」


「ほう、どんな情報だ?」


 しかしそこでミスティは、一旦口を閉じて、俺たちを見渡した。


「これ話したら、失敗したときあたしも道連れにならない?」


「リスクが怖いか。ならリスク以上のリターンを約束してやる。望むものを言ってみろ」


「無事に卒業すること」


「手伝いたくないという意味か」


「いやだって、こんな拉致されて危ないことに協力しろって言われても……。あたし、これでもノーって言える女だし……!」


「お願いミスティちゃん! 例の、あのリードくんと上手くいくように手伝うから!」


 アリアからの懇願に、ミスティの耳がぴくりと動いた。


「あの、私も手伝います! リードさんが誰だか教えてくれれば、さり気なくミスティさんをアピールしておきますから!」


 レナも続く。ミスティの耳が、ぴくぴくとさらに動く。


「なあ、リードって……もしかしてD-2教室のリード・ケフレンか?」


「そうそう。ミスティちゃんが気になってる男の子」


「へえ、そうなのか。あいつも隅に置けねえな。リード・ケフレンなら、俺の昔からの友達だよ。ミスティ、あんたが手伝ってくれるなら直接紹介してやってもいい。なんなら、ふたりきりのお茶会でもセッティングしてやるが」


 ミスティはいよいよ目を輝かせた。が、すぐ目を逸らす。


「の……の……」


 やはりノーか?


 そうなると最後の手段で、魔法で口を割らせることになるが……。


「の……乗ったぁあ! 絶対だよ、絶対ですからね、グレンさん! リードくんとのセッティング、マジのマジのマジでお願いしますよっ!」


「お、おお。任せろ」


「いつですか? いつ頃お願いできますか!?」


 目をきらきらさせながらグレンに迫るミスティである。


 俺はその首根っこを引っ掴んで、グレンから引き離す。


「わわわ、カインくん、なにすんのっ」


「報酬は働いてからと相場が決まってる。まずは情報をよこせ」


「あっ、そうだったっけ」


 ミスティは上機嫌に口を開いた。


「教頭先生、どうやら不倫してるらしいんだよねぇ~……」


「不倫か。相手はわかるか?」


「あんまり学園には来ないから特定はできてないんだけど、王都の貴族の御婦人だってことは間違いないと思う。教頭先生、その人にたくさん貢いでるって噂だよ」


「なるほど。それは面白いな。そのセンを追ってみるか」


「あと追加情報。ここ毎年、学園の設備補修費の減りが早いんだって。定期的にメンテナンスが必要だからって話だけど、そう簡単に壊れないって触れ込みとは矛盾してる気がしない? しかも減りが早くなったのが、教頭先生の不倫疑惑が出た頃と一致してるんだよねぇ」


 俺は素直に感心した。


「やるな、ミスティ。その情報収集能力が、試験に活かされてないのがもったいないな」


「ここを測ってくれる試験がないからね~。ま、逆に目立たないから調べやすいのもあるんだけど」


「貴重な情報提供感謝する。あとは俺たちの仕事だ」


 俺は学舎を見上げ、教頭の執務室を睨みつける。


 俺は言ったことはやるぞ、ベスタ教頭。


「ふふふ、後悔させてやる」

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