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正史編⑤ 孤独の病床
――これは、本来の歴史の物語。
◇
アリアは寮の自室で、ひとりベッドに横たわっていた。
諸事情で無理をしすぎて、こんなことになってしまった。
熱が出ていて、ひどく頭が痛く、身体中がだるかった。
お見舞いになど、誰ひとり来てくれない。
着替えも、栄養補給も、自分の面倒は全部自分で見なければならない。
どんなにつらくても、ひとりなのだから。
ひどく寂しかった。心細かった。
目を瞑れば、悪夢ばかり見る。
父が、母が、弟のカインが殺されたあの日を。
目の前で次々に子供達が殺されていったあの日を。
化物と呼ばれて追い立てられた日を。
独りで生きてきた日々を。
そして目を覚ましても、また独り。
不安で不安で、涙がとめどなく流れていく。
アリアを安心させてくれる者は、いない。




