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第9話:2軍での貴重な出会い

連戦の疲れから、逆転スリーランホームランを打たれたりで2軍行きとなり、落ち込んではいるものの、この経験を活かせるかどうかに今後の野球人生がかかっていることは分かっていた。

剛腕の左のアンダースローでオールドルーキー橘周は、翌朝2軍の球場に向かった。そこでは特に桑村コーチが温かく迎えてくれた。シーズン開幕の前後にも2軍にいたので、沢山話はしてきた。しかし5日間のノースローを言われていることもあり、今回桑村コーチに色んなことを教えてもらおうと考えていた。


「おーい、橘、いや周!気持ちよく逆転スリーラン当たれたなあ。ショックだったか?」

「いやー膝から崩れました(笑)。チームに迷惑かけました」

「まあ仕方ない。身体はきつい?」

「はい、ちょっとダルイです」

「何故そうなったと思っている。何が疲れた。たしかスタミナに自信あったよな?」

「はい、陸上で1500mとか中距離も得意でしたし、トライアスロンもまあまあだったので、自信あったのですが、ちょっとショックなぐらいですね」

「なるほど。何が疲労になったか理解できてる?」

「恐らくですが、一番はブルペンでいつくるか分からない出番を待つ日が続いたことですかね?こんなに緊張するんだとか、こんなにいつ試合にでるか分からないんだと驚きの毎日でした。後、2回肩作って(投球練習して)結局試合に出ない日が何度もあって、プロの大変さを思い知られました」

「そうかあ(笑)。ルーキーなのに。いきなりいい経験できたな。他には?」

「何万人もの観衆の目線を浴びる経験が無かったので、よそ行きな感覚でした」

「お前高校野球経験無かったもんなあ。それならそうだな。では今回2軍では疲れを取る時間が必要だが、その間に現状分析と調子が落ちた時の改善ポイントをはっきりさせるぞ」

「分かりました。一から勉強しますのでよろしくお願いします!」

「分析は動画の準備があるから明日からな。それより、今晩から3日間一緒に晩飯食うぞ。飯食いながら色々教える。トレーニングや食事のことなんかね」

「はい、そこでまでしていただいて申し訳ありません。是非お願いします。」


桑村コーチは、日米通算145勝を上げた名投手である。しかも25セーブ、33ホールドとリリーフ経験も抱負であり、投球術はもちろん、トレーニング方法、食事・栄養面まで非常に詳しい知識がある。


その晩は非常に有意義な夕飯となった。居酒屋での個室で、まずリリーフ投手の1日のすごし方について、準備の仕方、登板後の身体のケア、しっかり睡眠を取るためのコツまで押し付けることなく教えてくれた。


次の日ストレッチとマッサージの後、ミーティングルームで動画を見ながら打合せだ。調子がいい時の動画が3つと悪い時の動画が2つの5種類を比較しながら、不調の原因とチェックポイント、それに試合中の応急措置等桑村コーチは

自身の解説に橘周の意見を加えて答えを導きだしていく。橘周にとっては、このプロ中のプロの分析やアドバイスに感心するとともに、すーっと心が軽くなるのを感じた。


「この人本物だ、すげー。未来が開けてきた」


そして6月初め、再び1軍に戻って来た橘周の表情は、落ち着いていた。


貴重な体験を経て、まさに一皮むけて1軍に戻る橘周は、これから大活躍できるのか?

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