第7話:剛腕の左のアンダースローが1軍デビュー!!
入団して、キャンプで不調だったが、なんとか取り戻した左のアンダースロー橘周!
ジャイアンツにドラフト1位で入団した左のアンダースロー橘周は、調子を取り戻したけれども、開幕は2軍で迎えた。
理由は実力や実績よりも、高度な野球への慣れの問題だった。高校大学でほぼ草野球しか経験していない(大学は練習生で半年程度のみ)ために、サインプレーや内野連携等がプロのレベルから程遠かった。これはやむを得ないことだが、その状態で1軍の試合に出てしまうと、大チョンボを幾度となくやらかしかねない。
それと守備の際の打球速度。プロ野球の場合は160キロ以上のピッチャー返しの打球がいつでも飛んでくる。つまり慣れてないと命の危険があるのだ。
そこで首脳陣の判断で、当面プロの試合運びやスピードに慣れることを優先して当面2軍調整となったわけだ。
しかし並外れた身体能力と野球センスを備えた橘周なので、最低2ヶ月と思われた調整が、2週間でやすやすとクリアしたのだ。
当然ピッチングでは三振の山を築いていった。試合の後半のセットアッパーとして3試合6イニングス打者20人に登板した。ヒット:1、フォアボール:1、三振13と圧倒的に支配した。プロ野球ではダウンスイングがほぼ無くなり、むしろアッパースイング気味の打者が多いためか、高めに浮きあがる速球は空振り率が高く・・・いや空振りばかりだ(笑)。それと反対に沈む系のシンカー、ツーシーム、チェンジアップも有効だった。
そのため、早くも4月半ばで1軍への昇格を果たした。
2日後デビュー登板がやってきた。3点差で負けている試合の6回にマウンドに上がる。この日は偶然にもテレビ放送があり、早めの登板なので放送に間に合った。橘周の投球フォームと投球をまだちゃんと見てはいない人も多い中で、鮮烈デビューとなるのか?
そう鮮烈デビューだった。
最初の右バッターに対しては高めストレート、シンカー、高めストレートで空振り三振。地面スレスレから放たれたボールが上昇カーブを描いてキャッチャーミットに収まると、球場内にどよめきが溢れた。「剛腕の左のアンダースロー」が今正式にスタートしたのだ。
2人目の右バッターは、初球の外角寄りの低めストレートに合わせて平凡なセカンドゴロ。三振しないために初球から当てにいった感じだ。
3人目は左打者。初球シンカー、2球目高めストレート、3球目は外角へのスライダーで手も足も出ず!であった。ジャイアンツとしては負け試合の中で、橘周が使えるピッチャーであると確認ができたことが収穫となった。
翌日のスポーツ紙の半分は1面に掲載したが、あらためて左のアンダースローの投球フォームがデカデカと載るとインパクトがある。
しかし、プロ野球のシーズンは長いし土日が休みってことはシーズン終了まで無い。また中継ぎ投手は毎日いつ出番があるか分からない、身体もメンタルも非常にタフでないとやっていけない役割だ。
今後は各チーム全力で研究してくるし、このまま順調に進むのか??
1軍鮮烈デビューを果たした橘周が長いペナントレースをどう乗り切っていくか?