表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/216

第3話:バズリ始めたニュースター

2回の橘投手のピッチング

4番右打者。初球ストレート。4番打者は見送る。

2球目。緩い球。これはタイミングが合わず見送りしか無かった。

「115。チェンジアップですかね。シンカーでは無いですよね」

「分かりにくいけど、チェンジアップだろうな」

3球目。高めストレート。空振り三振。

「142。アマチュアで初見で当てるのは不可能ですね」


5番右打者。初球ツーシーム。ここで初めてのことが起こる。バットの先端の方に当たりボテボテのゴロ。橘は素早くマウンドから前方左に駆け寄り取ると、反転してアンダースローで一塁に送球し、アウト。

「初めて当たったな。しかし橘のフィールディング見事!」

「守備も聞いてた通りセンスありますね。足も速いし、

身体の使い方が、うまいショートやセカンドみたいでしたね」

「しかしさっき言った通り、ストレートの軌道を見せていないとツーシームは当てられるということだな」


6番右打者。

初球。外側のボールゾーンからストライクゾーンに曲がって入るスライダーでストライク。

「125。初めてバックドア見せましたね」

「左のアンダースローで右打者を抑え続けるのは、ストレートの威力、落ちるボール、バックドアの3つが必要と思ったが、全部できるな」

「しかもいとも簡単にストライク」

2球目。打者の近くで鋭く落ちた。空振り。

「130。今のがシンカーですね。えげつない!」

「ようやく出してきたな。完璧じゃないか!」

3球目。外角低めストレート。打者はシンカーの余韻を引きずってか

棒立ちで見送り、三振。

「シンカーのレベルが予想以上だから、ドラフト4位でもいいかもな」

「6人目の打者でようやく決め球シンカーを出してくる余裕もなんか憎いっすね」


その後の3回は、シンカー祭り。2球ボールをコールされたものの、11球でまたも三者三振。そして4回は、初めてパワーカーブを使った。打者は驚くか苦笑いばかりで、もはや橘のショータイム。11球で三者三振。

「カッターとスライダーとスローカーブがある上に真横にギュッと曲がるパワーカーブ。めちゃくちゃ引き出しが多いですね」

「右打者のインコースにも決まっていたし、完成度が高い」

「アンダースローにする前にピッチャー歴10年あって、ありとあらゆる球種を投げていたらしいです。スプリットやナックル、パームボールまで。身体能力、野球センス、手先の器用さ、メンタル、ここまで揃ってて、今まで何を遠回りしてたんだか」


5回。この回が今日の橘の最後になる。

初球。高めストレート。空振り。

「おっと147。最後の回ギア上げてきましたね」

この回は、ストレート中心にシンカー2球、ツーシームとパワーカーブを1球ずつ。少し力がはいったものの、12球で三者三振。

「最後は148キロだから自己最速ですかね?」

「無名の化け物。もう俺としてはドラフト2位でいいな」

「光る原石見つけたんではなく、完成品をいきなり見つけた感じですね。しかしこれ今日を境に有名になりますよ」

「SNSなんかでな。とにかく挨拶は1番目しとかんとな」


5回まで投げて打者15人をパーフェクト。三振14に、当たり損ねのピッチャーゴロが1つ。投球数49球でストライク率88%。バットに当たったのはわずか3球。相手チームが強く無い草野球チームとはいえ、完璧な投球でデビュー戦を終えた。高めのストレートと真下に沈むシンカーはいずれもスイングしたバットとボールが大きく離れていて、当たる気配すら無かった。


試合は7回8対1でコールド勝ち。明日の準決勝に進める。


その日、写真や動画がネットに上がった。夜までには野球好きの間で話題になり始めていた。そして夜中の12時過ぎた頃には、その写真と動画がバズリ始めていた。

何といっての希少価値の左のアンダースローで、とてつもなく早いストレートを投げ、変化球もえぐい。さらにイケメンでおしゃれな感じえある。


しかし、バズッた最大の理由は、明らかに浮き上がっている高めのストレート。引力に逆らい、逆に空気抵抗によって浮き上がるストレート。この歴史上初めてかもしれない衝撃的な動画が世界に向けて広がりつつあった。

ついにニュースターが、世間というより世界に知られることに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ